祓い屋本舗2
お客様の家はここか。
あのCMの直後だったので、昨日の深夜2時くらいに電話。急ぎの用件だと思ったのだが、どうやら違ったらしい。
ご自宅訪問は翌日14時ということだったから、13時50分に到着したが…。
家の中には庭があるみたいだ。門には綺麗な真っ白の天使の飾り、玄関のドアの横には陶器でできた犬の置物まである。
裕福そうな家だ。
マイホームを持って、普通の家庭を持つ事に憧れる。平穏こそが、何よりの幸せだと今の生活をしていて本当にそれは思う。
陶器の犬は冷たい眼差しで、こちらを見ている。
貧乏人は帰れ!!と、吠えられそうだ。ちょっと、卑屈になりすぎかもしれない。マイホーム建設のためにも、一つ一つ仕事を片付けていこう。
スマートフォンで、時間を確認しているフランケン。腕時計をしてこいと、いつも言ってあるが、なかなかいう事を聞かない。お客様の前で、スマートフォンの確認など、失礼の無いようにしてくれたらいいのだが。
「フランケン、先輩にメールしたか?今日の入りは16時でお願いしますってな。」
「前にも言ったが、今送る…送信した。」
言ってねぇし。メール打つのだけはやたらと早い。身体は日本人とは思えないほどデカいのに、メール打つとか、料理とか、細々した事が得意なんだよな、コイツ。
「じゃあ、インターホン鳴らすぞ。」
ピンポーーーン。
カメラ付きのインターホンに顔を近づけ営業スマイル。何においても、第一印象は大事だと思っている。最初で全てが決まると言っても過言ではない。
「祓い屋本舗です。昨日、お電話頂いたので、確認に参りました。」
「あ、はい。今、カギ開けますね。」
女性の声だ。この家の奥様だろうか。
「あー、あー、」
インターホンの向こう側で、赤ちゃんが泣いている声が聞こえる。
おもわず、フランケンと顔を向き合わせた。当たりかもしれない。
赤ちゃんの声ーーー。
今まで、赤ちゃんが関わった仕事でいい思い出なんて、一つも無い。