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第2話 爪切り勇者とおっぱいエルフの洗濯してない衣服云々

前回の投稿からはや2週間が建ちました。建立してないですね、経ちました。もうバックスペース押すのもめんどうです。


遅筆ですが、読んで下さる皆々様に感謝!

ゆっくり投下していきますので、忘れた頃にのぞきに来てやってください! めざせ完結!

 朝の心地よい陽光が窓から漏れて俺を夢の世界から切り離す。

 夢の中の俺は、ファンタジー世界の住人で、ケルベロスやら化け猫やらそんなのに類似した魔物を爪切りで撃退するというシュールを経験し、現実にまで疲労を引きずっていた。

「…くぁ」

 目覚めはしたものの俺は布団から出る気もなく、俺は羽毛布団に頭までくるまって二度寝を決め込むことにした。

 するとそのうち弟か妹が俺を起こしにくるのだ。

 そして間もなく廊下を歩く音が……なんかギシッ、ギシッ、と立て付けの悪そうな音が聞こえるのに違和感があるけど。

 キィ……とこれまた錆び付いた蝶番が擦れるような音が続き、またギシッ、ギシッ、と人が近づいてくるのが聞こえる。


 ……。


 はて、何も音がしなくなった。

 普段なら布団を引っぺがす朝テロをかます弟妹の姦しい声が聞こえるはずなのだが、今日はそれがない。

「ポチ太さん」

 風鈴のように清涼としていてハープのように癒やし成分を過分に含んだ声。

「……ポチ太さん、朝ですよ?」

 声フェチという才能があるとすれば、俺の才能は今開花したのだと思う。

 さて、残念ながら俺はこの声に聞き覚えがあって、それはつい最近聴いたものだと記憶してる。

 ただ、もし声の主が俺の想像通りなのだとすれば、俺は一つ考えを改めなければならなくなる。

「ポチ太さん?」

 揺り籠を揺らすように、「彼女」は俺の肩を揺するのだ。今までの人生でこんなにお淑やかな起こされ方をしたことがないから、少しむず痒い。

「ふわぁあ・・・・・・」

 俺は、誰がどうみても三文にもならない芝居をうって今目覚めたかのように振る舞う。そして眩しい日差しを隠す彼女の耳を見た。

 耳が長い。ついでにおっぱいが大きい。可愛らしい失禁エルフがそこにいた。

「ふふ、寝癖がひどいですよ。おはようございます、ポチ太さん」

 目覚めたにもかかわらず、俺はまだ夢を見ているようだった。



「ごちそうさまでした」

「はい、おそまつさまでした」

 俺はエルフっ娘が用意してくれたパンと薬草のスープを残さず平らげた。昨日は何も食べずに寝てしまったから3杯もおかわりさせてもらった。

 ここはどうやらまだ夢の世界。想像しやすいように説明するなら、要はドラクエだ。ファイファンだ。モンハンだ。そんなカンジの世界の、森が近くにある辺鄙な村のログハウスのリビングに俺はいる。エルフっ娘の家だ。

「お味はどうでしたか?」

「美味しかったっすよ。薄味だったっすけどいくらでも飲めちゃうっすよ!」

「よかった! お世辞でも嬉しいですよ」

 いやいや、お世辞じゃない。我が家は万年旅行中の両親に代わって俺と弟が持ち回りでご飯を作っているが、それらと比べると段違いで美味かった。というか比べるまでもない。比べることさえ失礼に思えてくる。

 二日連続で同じ夢を見ている、というわけではない。夢の中で一度寝て、起きたらまた同じ世界だったというだけだ。きっと現実の俺は今もぐっすりと寝ていることだろう。

「ポチ太さん、どうしました?」

「いや、ちょっと家族のこと思い出してただけっす」

「そう、ですか。ポチ太さんのご家族も素敵な方なんでしょうね」

「どちらかといえば、自分が家族の最後の良心だと自負しています」

 言わずもがな、俺の名前はポチ太なんていうDQNネームではない。両親が自分の子供にアーサーとかティアラとか名付けるような香ばしい新人類でなかったことが唯一の誇れることか、でもリネームできるならもっと男っぽい名前が良かったけど、それでもワンコロと同じような名前を授かったわけではない。彼女の聞き間違いでそうなっただけだ。

「そういえばエルフさんの家族の方は?」

「1年前に、ケルベロスに殺されてしまいました」

「ご、ごめん」

 はい、やっちまいましたよ。俺のKYスキル発動~……感のいい人だったらさっきのやりとりの中で彼女の言動から「あ、ここは触れない方がいいな」とか気付くだろうに俺のバカ!

「いえ、もう随分前に受け入れられましたから」

 そして相手に気を遣わせる無能っぷり。キングオブKY。コミュ障だから、なんて言い訳ドブ川に捨てて流れていってしまえ!妹やなずなから女心がわかってないだのKYだの言われないよう紳士につとめているのにこの失態!底辺の行動を取った挙げ句の二重底。このまま何もしなかったら底なし沼だ。落ちるとこまで落ちていく。だからって取るべき行動もよく分からないのだけれど。

 少し重い沈黙が続く。楽しかった朝ご飯の時間に似合わないそれは俺がもたらしたものだ。テメーのケツはテメーで拭け、とは弟の台詞だったか。

 ええい、出たとこ勝負だ。内容なんて脊髄に喋らせろ。この沈黙を彼女に背負わせるのはノーだ。

「あの」

「でもね」

 はい、遮られた。テメーのケツをエルフのおっぱい娘に拭いてもらうとかどんなプレイだよ。

 しかし彼女の瞳は翳りのない凜とした瞳だ。

「私が森の中で父の敵のケルベロスに出会って、もうダメだって思いました。そんなときにポチ太さんが私を助けてくれた。本当に救われたんですよ。私がいつか殺そうと思っていた魔物を、簡単に消し去ったポチ太さんが格好良かった。羨ましかった」

「俺は……何にもしてないっすよ」

 ホントに何もしていない。必死で逃げ回っていただけでした。あれから一度も爪切りソードに変えられません。

 そういえば奴らを斬った後に奴らの血肉は霧散して残ったのは宝石の原石のような塊だった。たしかポケットに入れていたような気がする。

「そういえば、俺の着ていた服ってどこにあるっすか?」

 今俺が着ているのはエルフっ娘と同じようなローブ一枚だ。スカート?の裾をぺろっとめくるとガラパン一丁になってまう。

「あの不思議な法衣は庭に干してあります。本当は後でこっそり川に洗いに行こうと思っていたのですけど」

 そういうと彼女は少し顔を赤らめた。かわいい。じゃねえだろバカ。そういえば、彼女が着ていたローブの代わりに貸していたんだった。はて、ズボンはどうしただろうか? 流石にズボンまで貸した覚えはない。

「ちなみに下のズボンは?」

 彼女はさらに顔を赤らめる。めっちゃかわいい。そうじゃねえだろボケ。

「ズボンは……所々破れていたので、縫っておきました」

「あ、あぁありがとう」

 ……じゃねえよ! 脱いだ記憶がないっていうことは……寝た後に脱がされたってことじゃないですか!

「ごめんなさい、勝手なことをして」

「いや、こちらこそごめんっす」

 粗末なモノをお見せしたかもしれなくて。って誰のモノが粗末だバカ。

 まぁ、どうであれそれが本題ではない。

「ちょっと上着取ってきます」

「え!? で、でも私が直に腰に巻いてましたし……! き、汚いですよ……」

 さらに顔を赤らめる。もう結婚したいくらい可愛い。可愛い。

 全然汚くないです。むしろご褒美です、とまで言うと変態の烙印を押されてしまうから「ちょっとポケットのモノを取ってくるだけです」と告げておく。



 庭に出る。外一面が森。まだ一度も行ったことがないけれど樹海と形容すればいいレベル。

 鼻にツンとつくほどの深い草木の匂いと濃い酸素が身体に走る。

 どうやら勝手な先入観で俺は村にいると思っていたが、隣家はなく、彼女の家だけが森に囲まれた平地にぽつんと建っているようだった。

 庭は俺の部屋の近くにあった。植樹された2本の間に、これまた2本の洗濯物干しが架けられていて、俺の上着と彼女のローブがかかっていた。

 このローブは昨日彼女が履いていたローブ(洗濯しておらず)なんだよな……。自然と手が伸びる。


「いけません! このローブに触れること、即ち彼女の信頼を裏切る行為です! さっさと用件を済ませて彼女の元に戻りなさい」

 そうだよな、彼女はどこの誰ともしれない俺に一晩と一食を提供してくれた。裏切るわけにはいかないよな・・・。

「何ちょっとくらいバレやしないって! ちょっと触って、嗅いで、着てみるくらい問題ないって!」

 そうだよな、俺にそこまで変態的な才能があったとは思ってもみなかったけど、ちょっと温もりを感じるくらいいいよな・・・。


 心の中で天使と悪魔が葛藤しているが、とりあえず嗅ぐかどうかは後回し。上着のポケットに手を入れてまさぐる。

「お、あった」

 取り出す。爪切りだった。違えし。爪切りを左手に持ち替え、再度ポケットをまさぐる。

「おぉ、今度こそあった」

 赤と緑の水晶だ。元々はデカい犬とデカい猫だったそれらは、よくよく見るとルビーとエメラルドの原石に見えなくもない。

 しかし、こういうところだけはファンタジー補正全開だな。恐怖で失禁だの未だに筋肉痛だの補正が効いてほしいところは他にもあるのに。

 何気なく空に掲げ、太陽光に照らしてみる。それらは光を乱反射するでもなく、鈍い色彩を浮かべて不気味に輝いている。呪いのアイテムかよ。


 すっ。


 誰かの呼吸音。ボーカルの歌い出しにでも収録されていそうなコンマ1秒の呼吸が聞こえたかと思うと、森がざわめき、大気が踊る。

 いや、誰のポエムだよと思うが、本当にそう称さざるを得ない不思議体験だった。

 俺と世界を繋ぐ糸がふと切れて真っ暗になり、目の前にあった学ランやら失禁ローブやらが視界からフェードアウトしていく。

 そして、ブラックホールに吸い込まれるような抗えない力で以て俺は意識を奪われた。






 チュンチュン、と。

 チュンチュンと小鳥はさえずり、カーテンのかかった窓辺から日光が漏れている。

 俺は横になった体勢で、しかも右手を頭上にめいっぱい伸ばした状態で目を覚ました。


 そこは、携帯がある、パソコンがある、バスケットボールがある現実世界。俺の生きている世界だ。

「夢……」

 ゆめ、と呟いた。そりゃそうなんだが、なんとなく呟いた。あれまで覚醒した状態で長く続く明晰夢など生まれて初めてだったから。

 俺は時計を見る。朝の6時。いつもより少し早い時間に起きたようだ。

 くぁ、と一伸び。カランカランと手のひらから何かが落ちた。

 一つは爪切り。俺は昨日寝る前に爪切りをしていたから、それを後生大事に握っていたわけだ。左手で。

 そして落ちた赤色と緑色の原石。右手からこぼれ落ちたそれらは、俺が夢の世界だと決めつけた世界で手にした犬と猫の残滓だった。




 読了お疲れ様でした!

 いつの間にかポチ太って命名されていますね! 一応1話と2話の間のやりとりで自己紹介を挟むつもりだったんですが、掲載すると余計に冗長になるので省きました。

 次回は現実世界に戻ってきたポチ太のお話です。続きはどうなるのかは私もわかりませんので、ぬくい目で見守っていてください。

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