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相対する二つの奏者

サリエリ「利休。あなたの紅茶美味しいですね?」


利休「ありがとうございます。


抹茶とどちらがよかったですか?」


サリエリ「紅茶かな?」



サリエリ「これで試してみて。」


サリエリは笑顔で新しい楽譜を渡した。


凌牙「これで俺たちもオリジナルを演奏できるな!」


翔子「ありがとうございます!」


ちなみに、サリエリ先生と利休は食事と風呂、ベッド、少しのお金で雇うことになった。



凌牙「行くぜ!」


ここは車庫の中...


俺たちの音楽が音洩れせずに反響していった...。




*********



サリエリ「はいっ!はいっ!」


ここはバーチャル空間。


俺と翔子のタッグは義元とサリエリ先生のタッグと戦っていた。



義元は『希望光帝』でなんとか倒すことができたが...。



サリエリ先生は俺の攻撃も翔子のフルバーストも全部軽やかな身のこなしでかわすと手にしたタクトを大振りな刀に変形させて襲い掛かってきた。


翔子「強い...!!!」


サリエリ先生は頭で小さくテンポを刻んでいるようにも見えた。


今度は刀から二対のこん棒に変形させて俺の巨剣をへし折ってきた!!!


凌牙「な!?」


サリエリ「えいっ♪」


サリエリ先生の蹴りで俺は地面にたたき付けられた。



サリエリ「そろそろフィナーレと行きましょう!」


サリエリ先生はタクトをガントレットに変形させると拳を引き、光の塊を精製した。


翔子「『暴鮫闇龍』のフルバースト!!!!!!!!!!」


ありったけのエネルギーを装填して放った。



対するサリエリ先生は拳に溜めた光を光線にして放った。


サリエリ「『破滅光子疾風弾』!!!」


光線は弾丸を木っ端みじんにし、翔子を吹き飛ばした。





バーチャルスレイヤーは完全にサリエリ先生のワンサイドに終わってしまった...。



*********


サリエリ「戦いとメロディーって同じなの。」


凌牙「...同じ?」


サリエリ「人間って何かするにもテンポが必要なのよ。


だから、そのテンポを先読みすればたとえ光の一撃だってかわせるわよ?」



サリエリ先生...俺たちの思っている以上にすごいですよ?





しかし、ある夜.....



サリエリ先生が突然うなされた。


俺たちがみんなで取り押さえたが...。



サリエリ「許して...モーツァルト。


私はあなたを...」


こんな事を言ってやっと寝付いた...。


翔子「やっぱり...サリエリ先生は......」





*********


次の日...


サリエリ先生は何事も無かったかのように利休と紅茶を嗜んでいた。


義元「おはようございます。」


義元は弓のトレーニングに精進していた。


義元「サリエリ先生。」


サリエリ「?」


義元「教えてくださらないかしら?


あなたとモーツァルトの間のトラブル...」


サリエリ先生から笑顔が消えた。


サリエリ「そっか...仕方ないね...。


みんなを呼んで。


私から真実を話すわ。」




*********


俺たちはサリエリ先生の座るソファーの反対側の席に座った。


サリエリ先生は小さなピアノでモーツァルト交響曲25を引いていた。



それが何か彼女に暗い影を落としていた...。



*********



これは昔...ドイツの話...




サリエリ「なぜです!?」


私は当時のドイツ皇帝に怒りをぶつけた。


サリエリ「私の渾身の一作より...モーツァルトの思いつきで書いた音楽を採用するなんて...」



私は当時のドイツ皇帝に仕える専属音楽家でした。


音楽の道に進むために家族を捨ててドイツに来て才能を開花させた私は神への試練を守り、音楽に没頭しました。





でも全てが狂いました。


天才美男子モーツァルトのせいで...。



皇帝「だが彼の実力は君が一番知っているはずだが、サリエリ嬢。」


サリエリ「う...」


私は怒りを収めました。


皇帝「私はいい音楽ならその辺の床に転がっているものでも喜んで拾う。」


サリエリ「...」



私は頭を下げると廊下に出て行き、ベンチで考え事をしました。



そして...ある素敵な思いつきをしたのです。


サリエリ「そうだ!私がモーツァルトの弟子になればいいのよ!」




*********


善は急げ。


私は早速モーツァルトに土下座しました。


サリエリ「どうか私に手ほどきしてくれませんか?」


するとモーツァルトは笑顔で手を差し延べました。


モーツァルト「いいよ。


土下座なんて止めてよ。


実は僕も君に弟子入りしようと思っていた所だったんだ。」



こうして私とモーツァルトの不思議な関係が始まりました...。


毎日モーツァルトと音楽についての論議を交わし、切磋琢磨していきました。



そんなある日のこと...。


私とモーツァルトはドイツ皇帝に新しい楽譜を持っていきました。



モーツァルト「今日も勝つのは僕なのは明白だ。」


サリエリ「期待していますよ。フフフ。」




ところが...


皇帝「パーフェクトだ。


モーツァルト君。」


モーツァルト「は...?


今なんと!?」


皇帝「君はパーフェクトだ。


素晴らしい。」


その時の私はその言葉の意味に気がつきませんでした。


皇帝「サリエリ嬢。


モーツァルトに比べればまだまだレベルは低い。


出直し―」


モーツァルト「うわああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


突然モーツァルトは泣きながら走って行きました。


サリエリ「待って!モーツァルト!」


私は急いでモーツァルトを追いかけました。






宮殿の噴水広場で私はモーツァルトを捕まえました。


サリエリ「どうしたの?モーツァルト?」


モーツァルト「うるせぇ!!!!!」


サリエリ「きゃっ!」


手を払われ、私は尻餅をつきました。


サリエリ「モーツァルト...」


モーツァルト「ここにはもう用はない。


じゃあな!せいぜい頑張りな!


サリエリ!!!」



*********


サリエリ先生は最後の音符を押して曲を終わらせた。


サリエリ「それから間もなくモーツァルトが毒で自殺したと連絡が来ました。


批難の目は私に当てられました。」


翔子「なんで...」


サリエリ「私はモーツァルトとの親交が一番深かったのよ?


人々は言った。


『サリエリがモーツァルトから音楽を盗んだ』って。」


義元「酷い。」



サリエリ「私は鬱を患い精神病院に入院しました。


しかし、待っていたのは私を妬む音楽家たちでした。


私を何度も尋問し、私がモーツァルトを殺したと言わせようとしました。



生きる希望を失った私はある日、孤児院に行き小さなピアノを弾きました。


子供達に音楽を奏でるのが私の心を辛うじてつなぎ止める鎖となっていました。





でもある日耐え切れず崖から飛び降りました...。」



利休「そして師匠はこの世界に飛ばされ、同じく飛ばされた私と出会ったという訳です。」



部屋がしんと静まり返った。


翔子「あの時のは...」


凌牙「記憶の断片だったのか...」



サリエリ「少し、散歩に行ってきますね。


ちょっと疲れちゃって。」



*********


俺はサリエリ先生と二人きりで散歩に行った。


凌牙「大変だったんですね。」


サリエリ「今やっと気づいたんです。」


サリエリはタクトを抱きしめた。


サリエリ「完全とは裏を返せば終わりということ。


完全な人間は...もう先へは行けないんです...。」







??????「正解だな。


気づくのが随分遅かったなぁ!」



その声に振り返ると...髪の毛を気持ち悪く伸ばした青年がいた。


サリエリ「その声...モーツァルトなの!?」


モーツァルト「その通り」


青年は嫌らしく笑った。


凌牙「馬鹿な!?」


モーツァルト「俺は確かに毒を飲んだ。


だが俺は死ななかった。


俺は通常とは全く違う毒を飲んだからな。



おかげで...」



モーツァルトは左肩に手を添えると左肩を押した。



左肩は腹まで裂け、その間には無数のピアノ線が並んでいた。


サリエリ先生は口を押さえた。


モーツァルト「俺の体はほとんど機械になっちまった。


まだあるぜ?」

腹を裂くとそこには鉛筆削りのようなローラーがついた穴があった。


モーツァルト「仕方ないから影武者に死んでもらい俺はあの世界から逃げた。


そしてこの世界に来た。



まさかあんたとまた会えるとはな!!」


凌牙「勝負だ!モーツァルト!」


俺はバーチャル空間を展開した。



*********


サリエリ「よかった...」


モーツァルト「ああ?」


サリエリ「あなたが...生きていて...」



モーツァルト「それだからお前はいつまでも甘いんだよ!!!」


穴から大量の糸が放たれ、サリエリ先生と俺の手足に巻き付いた。


サリエリ「!!!」


モーツァルト「ローラーでミンチにしてやるよ!!!」


ローラーが爆音をあげながら回る。



糸がたぐりよせられ...。



とその時!


ローラーの間に矢が刺さり、回転が止まる。


さらに糸が全て矢による狙撃で切れ、俺たちは解放された。


モーツァルト「今の攻撃は!?」


苦痛に呻きながらモーツァルトは辺りを見回すが誰もいない。


凌牙「(義元か...バーチャル空間に直接矢を打ち込んで狙撃するとは...)


覚悟はいいだろうな!!!」


俺は三本の剣を構え、突撃した。


モーツァルトは...笑っていた。


凌牙「!!!!」


突如体のいくつかが切り裂かれ俺は倒れた。


凌牙「く...」


モーツァルト「甘いね...そんな古典的な攻撃は通用しない。」


サリエリ「凌牙!」


モーツァルト「もう気づいているんだろ?


逃げ場はないってな。」


サリエリ「(確かに...今のこのフィールドには無数のピアノ線が敷かれていて下手な動きをすれば...)」


切り裂かれた凌牙の姿を思い出し、身震いする。


モーツァルト「覚悟しな。」


モーツァルトはピアノ線にナイフを取り付けると手を放した。


ナイフはあちこちを飛び回り、サリエリ先生の頬を掠めた。



モーツァルトはさらにナイフを大量に取り付けた。


モーツァルト「冥土にいい土産話をくれてやるよ。」


モーツァルトは不気味に笑った。


モーツァルト「俺は最初からお前を嵌めるために手伝ったのさ。


お前が消えるまで...永遠に苦しむためにな!ハハハハハハ!!!!」






サリエリ「そう...ですか。」


サリエリ先生は手の力を抜いた。


凌牙「(チ...だが傷口はもう埋まった。


俺の体は蜥蜴の尾のように素早く再生するからな...。)」


俺はそっと剣を構えた。


凌牙「頼む...気づくな.....」









モーツァルト「お前の音楽なんてその辺のガキと変わんないんだよ!


普通すぎて笑える!


音楽はな...特別でなければならないんだよ。」


モーツァルトは短剣を取り出すと肩のピアノ線で音を奏でてみせた。


モーツァルト「さぁて...レクイエムと―」


サリエリ「―悔の........」


モーツァルト「?」


サリエリ先生の目に憎悪と激昂の炎が点った。



サリエリ「懺悔の用意は出来ているか!!!!!!!!!」


サリエリ先生の背中から光子の翼が生える。


光子は空間全体に飛んで行く。



モーツァルト「な...なんだ...!?」



直後、サリエリ先生は耳をつんざくほどの叫び声をあげた。


凌牙「!!!」


俺はとっさに防御ユニットを展開して伏せ、事を眺めた。




光子が震え、巨大なソニックブームと化す!!!


ピアノ線やナイフが溶けて無くなる。


モーツァルト「うがああああああああああああああああああ!!!!


僕の耳がああああああああああああ!!!!!!!!!」


モーツァルトの耳から血が噴き出る。


音楽家の命である耳がたった今吹き飛んだ。



サリエリ先生はハウリングを止める。


モーツァルトは痛みにのたうちまわっていた。



サリエリ「私を騙して...そんなに楽しかったの?


私が苦しむのを見てそんなに嬉しかったの?


理解できない...。」


モーツァルトは口をパクパクさせるだけだった。


あれだけの衝撃波だ。


確実に脳も電子レンジにかけられた生卵になっている。


サリエリ「この翼はキリスト教では禁断なんです。


なぜなら天使はこの世界にいちゃだめだから...」


タクトを取り出すとガントレットに変えた。


サリエリ「さようなら。


モーツァルト。


もう二度と私の目の前に出て来ないで...........私の永遠の悪夢!!!!!」



破滅光子弾がモーツァルトを灰にした.....。



*********




サリエリ「今日は皆さんが引いてほしい音楽を募集するからみんな言ってね?


時間の許す限り引いくよ。」



幼稚園児「わーい!!!!」


その後、サリエリ先生はいつも以上にスッキリした顔で子供達に音楽を引いていた。


凌牙「『特別じゃない。


音楽に必要なのはただ...人を幸せにできる力があるかという事...』か。」



さっきサリエリ先生が言った言葉を復唱して俺は義元と一緒に帰宅した...。

サリエリ「普通にやる...私にできることはそれだけだから...」












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