風迅の青鮫
明智翔子についてのお話
ここは、凌牙の管理下にある射撃訓練場。
翔子は的を狙って弾丸を撃ち込んでいた。
使っている銃はマグナム銃『コルトパイソン』。
未来でも活躍中の代物だ。
ちなみにその銃にはいくつもの改造を施してある。
銃弾が分裂するクラスターショット機能。
無限発あれば一秒に1582発(本能寺の変の年代と同じ。)撃てる連射機能。
そして何より他のパイソンよりも何十倍も強固に作られており、マグマに落としても溶けずに同じ温度を保てる能力もある。
これが翔子のホルダー付き武器『パイソン・パワーマキシマ』である。
元々ただのマグナム銃だったのだがついさっき俺が改造した。
翔子「やっぱり、反動はそれなりにくるね。」
凌牙「それは仕方ない。」
翔子の射撃の腕は針の穴すら通す。
しかもワンハンドショットでそれをやってのけるので本当にびっくりする。
翔子「あとちょっとで...」
翔子はパワーマキシマをホルスターにセットすると深呼吸した。
マグナム銃で早撃ちする気らしい。
翔子「.................................................!!!!!!!」
腰からパワーマキシマを抜くと的の真ん中にリボルバーに装填可能な数六発分を撃ち込んでみせた。
翔子「バッチリね。」
翔子は笑顔を見せた。
*********
次に翔子がやったのはカラーボールを大量に詰めたガトリング十台の中の突破。
これには俺も参加する。
くそ!翔子の奴!戦いをしばらく経験してないはずなのにやすやす突破する!
*********
結果...翔子が三発、俺が五発当たった。
翔子「まだまだね。
そもそも凌牙、凌牙は剣士なんでしょ?
近接戦に縺れ込まなきゃ負けるでしょ。」
凌牙「...タンマ!
もう疲れた...休憩しようぜ!」
なんせ三時間もこのトレーニングをしたんだ。
無理に決まってるし!
*********
自宅に戻ると義元がドラムの練習をしていた。義元「お帰りなさい。
今、ドラムの訓練をしていまして。」
翔子「...」
ヤバい。これは地雷踏んだか!?
義元「私もバンドとやらをやってみたいのですわ!
どうか私もバンドとやらに混ぜて欲しいのです!」
翔子「...本気で言ってるの?」
翔子の目が険しくなる。
が...展開は思わぬ方向へと進むのだった。
*********
メトロノームが鳴り響く中、義元は泣きながらドラムを叩いていた。
横では死んだ目をした翔子が睨みつけている。
義元はカズヤが自殺未遂をはかったほどの奈落の特訓『紅蓮』を受けているのだ。
義元「いやぁ...」
鼻水と涙がぐちゃぐちゃになった顔で必死にドラムを叩いている。
翔子「ズレた」
義元「ひいっ!?」
『ズレた』とはすなわちやり直しを意味している。
※ちなみにこの特訓は俺が大会でプロに勝つために考案した特殊トレーニング。良い子は真似しないでね!
*********
翔子「よく根をあげなかったわね。
お疲れ様。」
翔子がくたばっている義元にココアを渡した。
義元「雪斎様の特訓より極悪ですわ...。」
義元はココアを一気飲みして...。
義元「熱ッ!?」
舌を火傷したらしい。
凌牙「ココアはちょっとずつ飲むものなんだよ。」
俺はココアをもらうと息を少し吹きかけて冷やすと上の部分を啜ってみせた。
翔子「猫舌なら尚更ね。」
翔子は念入りに息を吹きかけると少し啜った。
ちなみに翔子は猫舌である。
*********
義元がすっかり寝入った時...。
俺と翔子はベランダを出た。
凌牙「なぁ翔子?」
翔子「?」
凌牙「俺はてっきり義元を殴るかと思っていた。」
翔子「殴るなんて下種なことはしないわよ。
ただ...私は覚悟を試してみたの。」
凌牙「覚悟...な。」
翔子「ちょうどいいわ...」
翔子はニヤッと笑った。
翔子「私に白兵戦を教えてちょうだい。」
*********
ここはバーチャル空間。
翔子はパワーマキシマに剣を取り付けてナイフのように扱っていた。
対する俺は『希望光帝』の三刀流で応戦する。
翔子「強いッ!!!」
俺の猛攻に防御が間に合わず吹き飛ばされた。
ロングドレスがユニットで助かったな。
翔子「ならこれはどう!!!」
ドレスの腰にあるホルダーにカードをセットするとドレスが狂暴な刃で装甲された鎧に変わる。
さらに銃にカードをセットすると銃も日本刀に変形する。
凌牙「なるほど...全身が武器...か。
上等だ!!!」
こちらも『希望光帝』を解除して双剣を構える。
凌牙「速攻あるのみ!!!」
剣が拮抗し、火花が咲き乱れる。
決着はすぐについた。
一瞬の隙をつき、峰打ちを横っ腹にキメた...。
*********
翔子「やっぱり白兵戦は向いてないのかしら?」
凌牙「大丈夫。翔子は銃でやっていける。
白兵戦は万が一だ。」
翔子「よね~?」
あ...翔子がにやけているってことは...嵌められた!!!
俺の体には三発のカラーボールが当たっていた。
首筋と右手と左足。
凌牙「クソッ!やられてたのは俺か!!!」
翔子「まあ、反則負けね。」
凌牙「いや...戦いは常に実戦。
負けは負けだ。」
後で聞いたのだが翔子は元欧州チャンピオンだったらしい。
強い訳だ。
翔子「ところでさ。」
翔子は尋ねた。
翔子「溜まってるのなら...私が出してあげようか?」
俺はキリッとした顔で答えた。
凌牙「だが断る。」