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短いお話

学校授業 江戸

作者: 夕部空波 

 バキッ


 また折れる。そこら辺の枝を拾い、もう一度始めた。


バキッ


 また折れた。自分には才能がないと分かり、はぁとため息をつく。


 ここは江戸時代だ。多くのものが着物を着て、あるものは家事を、あるものは店をそしてあるものは威張りくさって、歩いている時代だ。


 そして、俺、神木裕也こと葆博康(ほうひろやす)は(江戸っぽい名前に改名)江戸(ここ)の住人ではない。分かり安く言えば、江戸時代に住むのではなく、もっと先の未来に住んでいた、ということとなる。しかし、二十二世紀は科学が進歩し、タイムマシンそして、かの有名なあのロボットまでも作れる時代である。タイムマシンは、学校の授業の一環で使えることとなっており、学校の授業として、江戸時代に来ている。

 

 よく言うと、「歴史体験」悪く言うと、「しばらくは帰れない」。


 まぁ、不便な点はないのだが、ここに住んでいる人たちの記憶はことごとく操作され、俺はいちばん最初から、ここに存在していたもの、となっている。そのため、どこかのぼんぼんに生まれ、家を継ぐための修業中。良かったといえば、飯が豪華だ。さすがに、徳川の傘下に入っているため、(江戸時代と言っても、鎖国後ではなく鎖国百年前の時代)大名行列などがあるのだが、それを取らなければかなりいい生活を贅沢に送っている。


 ただ、「家を継ぐ」修行というのも面倒くさく、武士の家なのだから刀は使えなくてはいけない。ただ、俺はいわゆる、未来人間にあたる。そんなのが、子供のころから稽古をしているわけでもなく、影で血のにじむような修行を送っていた。かなり疲れる。


 江戸時代体験は約1カ月。裏を返せば、はやめておこう。ここでの1カ月が、未来での1日とか、そういうことにはならない。なぜなら、ここで1カ月過ごすということは、未来だろうがどこだろうが、「1カ月を過ごしている」ということになるわけだ。1カ月前に体の成長諸々全て戻るのなら、その、ここに来た日に戻ればよいのだが、残念ながら、魔法のようなそういうことはまだできてはいない。つまり、我々生徒は(といっても、誰とも会わないのだが)、1カ月、歴史で過ごし、1カ月後の未来へ、二十二世紀へ戻る。因みにバキバキ折れていたのは剣の練習の為の木刀である。それが脆いのかなんなのかはわからないが、木に向かって、―――つまりは人に向かって戦えるように―――練習しているときにバッキバキバキ折れていったのだ。うん。こんなことなら、剣道を少しやっておくんだったなと思い日が暮れ始める。


 江戸の夜は暗い。電気がなく、提灯だけの生活なので、夜は闇に近かった。未来では、それはもうギンギラで、夜か朝かは分からなくなるほどだ。そういうのもあるのか、江戸での体験は大いに役立つだろう。もし停電になったとき、とかのね。


 こんな江戸でも平和ではなく、常に死と隣り合わせだったりする。江戸時代では刀の装備をしている人は簡単に見つけられる。つまりは、人斬りが存在するのだ。もちろんここにもいる。通称「一太刀鬼」。それを倒すのが俺の役目で、使命で、課題だ。未来は、わざと課題を課す。それを一か月以内に倒して、戻ってくることで、身体が強くなり、帰ってくることが許される。つまり、未来のお偉いさんは子供の、―――しかも一応中二―――俺達を鍛えて、未来(そこ)に帰れることを許す。今の未来は、それこそ表向きでは仲の良い国同士も、実はマフィアとかよくわからないものにワイロを送り、いざとなった時のために色々な手をうつ。つまりは一触即発だ。こんなことになっている未来を背負う俺たち子供を育て、将来は屈強な戦士にでもしたいのか、まったくもって意味が分からなかったりする。


 さて、家へ帰ろう。


 ぶっちゃけ言うとここは家の裏山。徒歩、…何分は分からないが、(時計がないため)意外にすぐにつく。日暮れるといっても太陽が簡単に沈むわけではないので、割と明るい。ただ、ここからがあっという間なので、すぐに帰らなければいけない。というか帰らなければ叱られる。


 家というものは,まさしく文化資料館とかにおいていそうな家だ。ドカンと門がある、とまではいかないがそこそこ大きく、広く、畳もある。というか、畳と石みたいな床しかない。そして、最高にうれしいものは、飯だ。窯で炊いて、それはそれは美味しいもの。おこげとかもう最高にたまんねぁよ。ホント。そして寝る。いつも通り、唐突に風呂に入り寝る。ま、風呂も薪の火で温めるので、本当に気持ちよく、筋肉痛を程よくほぐしてくれる。そして寝る。家じゅうの明かりがおとされると、暗くなり、なにも見えなくなる。目が慣れれば、とか言っても一番初めのほうとか本当に何も見えない。未来でのギンギラに目が慣れて、それが当たり前だと思っていたから、この暗さは目に染みる。畳の上に布団を敷き寝る。中々無い。今の床は大理石、もしくはフローリングが当たり前。布団などの文化はすでに無くなり、ベッドだけでの生活になっている。布団とか初めてで一番初めはいろいろ痛くなったが、そこそこによく眠れる。ベッドのほうがフカフカしているとか思うが、布団もなかなかいい。ただ枕が痛い。


 そして朝起きて、飯食って、ウマッとか言って、家を出て、修行をする。その際にきちんと一太刀鬼について聞いて、昨日はどこに出た、とかそう言うの。勿論、俺が居なくなったら、一太刀鬼なんていなかったことになるし、それに憧れている人が居たらその気持ちはすべて消える。一太刀鬼(長いので以下、鬼)も未来が創った架空の人物だ。記憶を操作し、元から居たように思わせる。反対に言うと、元から居なかったことにもできる。ま、俺もそれと同じなんだけどなぁとか思うと少しさみしいような気もする。喋り方とか、どうかな。


 昨日の鬼は、南の橋に現れたと。南側って、俺たちの住む北側から考えると真反対じゃねぇか。大雑把すぎるが、死んだというより斬られただけそう。一太刀だけ与えるのだから一太刀鬼と呼ばれるんだけどな。


 さて。そんな俺でも修行に明け暮れるばかりがすべてではない。町一番の娘とか、結構興味があったりしている。村一番にかわいいのは、染物屋を営んでいる、磯峰さんとこのかえさんだ。すらりと背が高く、白く、整った顔立ちをしている。目はパッチリの二重で、皆に優しく、好かれている。親からしたら自慢の娘だが、その娘が、「可愛らしい女の子」を無意識のうちに演じている――――というよりは、本能的なものなのだろうが――――ことがすごいと思う。きっと、もう少し裕福なところへ生まれ、寺子屋とか言ったら、頭が良かったんだろうなぁと考えていたりする。ただ、彼女がいる染物屋は、町の南側。つまり、一太刀鬼が現れたところで、俺たちが済む正反対のところに住んでいる。うーん、鬼を口実に、かえさんのところへ行ってみようかな。


 一応一通り、修行をこなし、本当の剣を握って、木に向かって「タァ―――――――!!!」とかやってみた。結構すっきりするんだよな。これが。そして、飯を食い、風呂に入り、寝る。…じゃなくて!!と、勢いよく布団から飛び出し、南側へ向かって走る走る。絶対、江戸に来て俺の体力は上がった。もう、全力で100メートル以上走ってるのに、あまり息は上がっていない。今時、100メートル、まともに走れる人なんて、何かのスポーツの上級者たちだけなんだが。走って、北から、西へそして、南へと走る。南の端に来たところで止まる。さすがに息は上がっていた。額にうっすら汗をかく。


 息を潜め、あたりを見渡す。よし、誰もいない。………って、訳はない。南の南、だろうか。かすかな悲鳴が聞こえる。って、そこ!!かえさんがいるんじゃ…。やばい、助けなきゃ。俺が鬼を倒さないと鬼は消えない。それまでに、鬼が殺った人は生き返りはしない。ただ、まだ誰も死んではいない。一応、急所を外すように、プログラムされているからだ。ただ、誤って。ということもある。そういう時は、本当の人斬りなのだと錯覚させなければならなくなり、俺への課題が変わる。倒すべき相手が、別の人斬りになるのだ。そうすると手続きとか面倒くさいのだ。できれば、今日のうちに倒して、もう帰りたい。あ、でも、かえさんとは話してみたい。


 南の南側にたどり着いた。誰かが、倒れている。…かえさんか?近寄ってみると、違う。鬼だ。一太刀鬼だった。見事に右肩に、大きな傷がある。斬られている。やばい、誰かが倒してしまった…?周りを見渡した。今夜は満月で、そこそこ明るい。誰もいない。それだけを確認すると、ゆっくりと、鬼の外傷を観察した。右肩に一回、刀が刺さっただけ。これなら人などそう簡単に死にはしない。というかこれは死んでいるのか?心臓は、動いている。というか、未来の技術すごいな。架空の人物に、肉体、しかも人間と全く同じ肉体を創れる技術を持っているのだから。瞳孔は、あーよく見えねぇ。でも、心臓が動いているから死にはしていないだろう。だったら、どうして気を失っている?頭には傷がない。じゃぁ。そこそこ体格の良い大人一人を担いでる気分になるな。鬼を仰向けから俯せへと引っ繰り返した。やっぱり。首元が腫れている。ここを誰かに殴られたのか。刀傷はきっと自分の刀で逆に襲われそうになった人に刺されたのだろう。数メートル離れたところに、刀がかすかに赤くなって落ちているし。首元もやられたのはきっと、襲われそうになった人。返り討ちにあっちゃうんだもんな。けっこう、そいつは強い。


「…あなた、誰?」


後ろで声が聞こえる。何の気配もしていないのに、なぜだ。急いで振り返ると、かえさんが立っていた。


「かえさん、どうしてここに…」


 急いで口をつぐむ。顔を見られてはヤバいかもしれない。もし、こいつが襲ったのがかえさんだったら、かえさんは、ものすごく強い人なのかもしれない。


「わたしのこと知ってるのね。…ねぇ、この人大丈夫だと思う?わたし、襲われそうになって、刀が見えて、なんかわんやわんややってるうちにこの人動かなくなって。さっきからあなたのこと見てたんだけど…。大丈夫?この人」


「…はい。大丈夫です。右肩の傷の血を止めれば、何もしなくても生き延びます。」


この江戸へ来る前に入れられて知識でかえさんに説明する。…それよりもサンはかえ何て言った??さっきから、あなたのこと見ていた、だと?そんなはずあるのか?誰の気配も、姿もなかったのに…?ありえない。この人はいったい何者だ?


「そう、よかったわ。…でも、あなた、どうしてここにいるの?あなた、北に住む(ほう)家の康弘(やすひろ)さんでしょ?なんでここに?」


バレてる。何で知ってるんだ?俺はこの人と会ったこともなければ、こっちに来たこともない。ましてや、かえさんが、北側に来たことさえも。


「…そうです。……でもあなたこそ誰ですか?かえさん、だと思いますが、なぜ僕のことを知っているのですか?なぜ、僕が康弘だと?そして、いつから、僕の後ろに立っていたのですか?あなたは、何者だ?」


少し口調が崩れた。こういう癖は直らないんだなと思いつつも、首元の布を鼻のあたりまで引っ張る。顔も全てばれてるかもしれないが、条件反射的なものだ。


「何者って、わたし、そんな大層な者じゃなくってよ。」

「じゃあどうして、僕の後ろに立った時、あなたから人の気配がしなかったのですか?いつから僕を見ていたんですか?」


冷や汗が流れる。背筋がぞくっとした。そうか、この人、もしかしたら。未来に創られた人なのかもしれない。なぜかそんな気がしてきた。だったら、たくさんの説明がつく。この人は、人ではない。いわば、人造人間なんだ。鬼と同じの。


「だまれ。裕也(ゆうや)。」


キャラ変わった。目つきが鋭くなる。前言撤回。人造人間ではない。確かに人間の肉体は人造だが、中身は違う。先生だ。


「上からの命令だ。わたしはお前の観察係だ。わかるか?観察係。面倒くさいが、その生徒についたら、その生徒が卒業するまで、何から何までとは言わんが、お前を見てなくてはいけないのだからな。町一番の娘となれば、もしかしたらお前のほうから来ると思っていたが、駄目だな。お前は鬼に振り回されている。」


かえさんの顔で男の声が流れる…!!!!なんか憂鬱だ。何だこの感じ。見張られてるって。観察されてるって。うわー。ひくわー。て言うか話し方が古いんだよな、うちの先生は。あーもうやだ。ここで鬼を殺して、さっさと未来へ帰っちゃおうか。


「話は聞けよ最後まで。さっさと鬼を殺そうとなんてするな。夜は長い。たっぷり話そうな裕也。」

「ここでは、康弘です。先生。」

「ここではかえよ。なに言ってるの康弘さん。」


…なんて言ったらいいのだ、この状況。もう、やだ。かえさんと話ができるのは嬉しいが、その中身が男で、しかも先生だと知った今、もう、ここから逃げ出したい気持ちが勝ってる。ているかその気持ちしかない。どうする、俺。何気に肩組んできやがったよ、この人。


「さっきの口調になって下さい、先生。あと腕も離してください。」

「ケチだなお前。」

「話し方が古臭い人にそんなこと言われたくないですよ、竜馬(りょうま)先生。」


先生はかえさんは、にやりと笑う。あー、なんかもうどうでもよくなった。かえさんの顔を見ないようにするのが精一杯だ。


「そう呼べ、そう呼べ。さて、とりあえず、現状確認だ。お前は、葆康弘だ。わかってるな。次に、残りの期間だが、あと1週間だ。それまでの間に鬼を倒せ。じゃないと、こっちへ戻れなくなるぞ?」

「いいいですよ。こっちにいても。」

「そうか?もっとふかふかのベッドとかで寝たくはないのか?」

「いいんですー。別に江戸でも未来でも」


1メートルぐらい離れたところに鬼が倒れている。あと1週間で、俺はこいつを倒せるか?


「よいか裕也。おまえはこれから毎晩わたしのところへ来るのだ。分かっておるな?うん?」


あーもうやだ。この人のキャラ。本当もう帰りたい。というか泣きたい。きっと魂だけこの身体に入ってるんだろうな。肉体が未来で、椅子に座って、頭に変な機会をつけて、1カ月間さァ。いや、そう考えるとありがたいものだな。


「ホントの村娘は誰なんですか?」

「あ?あぁ。西側に住んでおる、漬物屋のゆりさんだ。ま、そっちに行けるわけはないのだがな」

「どうして」

「西っていうのは、侍を極力嫌う人たちの集団だ。わたしはいけるが、お前は無理だ。葆家と言えば結構名が通っているし、何より、次期頭首の身であるお前など顔も通っておるのじゃ。」

「次期頭首って…!!本当は、和義(かずよし)ですよね。本当の子だし。」

「まぁの。でも、一応はそうなっとる。お前がいるこの1カ月だけの記憶だがな。」


ウインクされた。かえさんの顔だからいいけど、もし先生の顔でウインクされたら死ぬ。四角くて、ぼさぼさの髪の毛のその人に。なんといっても、熱血教師で有名なのだから。歴史が一番好きで、自分の名前が、坂本竜馬と同じことを言いように、なぜかたまにだが、話し方が古臭い。現に今こうして話していると、おる、とか、まぁの、とか、古い言葉が出ている。軽くため息をついて、勢いよく立ち上がる。今まで座っていて、足がしびれた。


「あと1週間で倒せばいいんですよね。今やっちゃ駄目ですか?」

「駄目だ。それはルール違反。」

「そっちがルール違反でしょ。何自分の正体をばらしてるんですか。ていうか、僕は帰ります。さようなら。また明日。」

「おう!!」


男っぽく笑うな。かえさん。あ、男か。俺は、自分の家に向かって走った。


 そこからほぼ毎日、夜に、だが先生の所へ通う。ちょうど3日たった。鬼の傷も回復しただろうと話を聞いた。その次の日、4日目に、東側から悲鳴が聞こえたが、取り押さえることはできない。その次のも東側で見つけることさえもできなかった。残りは2日。結構、緊張してきた。ただ、それと同時にどこか寂しさを覚える。飯も風呂も、畳と布団と、そして、偽者だが家族とも、別れるのだ。


 6日目、西側からの悲鳴で捕まえることはできなかった。次が7日目。最後の日。いつも通りに出かける。ただ、もう帰らない。布団と飯と風呂と、家族みんなと、6日目の最後は存分に話した。布団でよく寝た。よし、と気合を入れて来る。


 7日目の朝だ。少し早めに出かけて情報収集。この1カ月間で、鬼の情報の探り方は知っている。まず、それらしき人へ聞くのだ。例えば、橋を見詰めている人、空をボーと眺める人、仕事に手がついていない人。そういう人たちから情報を聞き、集め、分析をする。この1カ月の情報収集で、分かったことが1つある。鬼の行動パターンだ。鬼は不規則に出ているのではなく、きちんとした規則を持って動いている。1日目は、東で、2日目も東、そして3日目が西で、4日目が北。5日目は西で、6日目が南、7日目も南だった。1日が東だが、ローテーションが始まっているのは、6日目の南。8日目は東で、その次が東、西。つまり鬼は、南、南、東、東、西、北、西、と、動いている。北が一番少ないのは、きっと、ここに俺が住んでいるからだと思う。そして、今日、鬼が現れるとされるのは、北だ。


 夜が来る。十分に準備をした。念入りにストレッチ、刀の稽古をつけ、そして、精神統一。目を開ける。かすかにかけた月が目に入る。足音がした。姿が見える。あのときと同じだ。全身黒の男。鬼だ。草むらの陰から息をひそめる。もう少し進め。そうすると、縄が足に絡まる仕掛けになっている。よし、進んだ。草むらに隠れていた縄が鬼の足に絡まる。ぴんと張った縄に驚いているような鬼に、後ろからではなく、前から、刀を振りかざす。


「˝あぁ――――――!!」


カキーン 


 かすかな火花が散る。片足が不自由でも、鬼は懐から短刀を出し、そのまま手裏剣みたいに投げてきた。左に避けてかわし、木に刺さったそれを抜き、鬼に投げつけた。それを目くらましに、けがをしていた右肩へ攻撃をする。短刀をかわし、鬼は再び、短刀をとりだす。左利きなのか、左手で出したそれで、俺の刀を受け止め、はじいた。


 後ろへ少し吹っ飛ぶと、急いで体勢を立て直す。刀を構えた。息が上がっているが、どこも痛くない。鬼は、肩に微かな傷を負っている。


「はぁっ!!」


なんか叫びながら、刀を振る。今度は避けられないように、上から下ではなく、右から左へ。それを避けられた。が、そのまま着地をし、砂を蹴り上げ、刀で刺す。確かな感触があった。そのまま引っこ抜いて、相手の足を払い、倒した。首元へ刀をつける。ポケットから、任務完了シールを取り出し、貼った。言っていなかったが、このシールを貼ると、任務完了と見なされるのだ。勿論、相手に傷を負わせてからじゃなきゃ、帰りさせてはくれないが。上がった息を整える。鬼の身体が光り出した。


 よし、よし、よし!!


 終わった。任務完了。鬼が光ったその数分後で、俺も帰れる。先生も近くにいる。俺のこと、ずっと見てたんだろうな。呼ぶ必要はない。時間になれば、あっちから出てくる。


 数分後。鬼の体は消えた。周りの人々の記憶の整理中だろう。よし、よし!!木々が動き、先生が出てきた。


「よくやったな、裕也」

「はい。もう帰れますよ、センセ」


短く会話を交わす。かえさんの身体も光りはじめる。俺の身体も同じだ。未来への光だ。


*****


 まず一言。眩しい。何よりも眩しく、未来の景色だった。


『神木裕也 任務完了 お疲れ様』


と、前のモニターに書いてある。服も、髪型も戻っていた。ゆっくりとカプセルから出ると、かえさんではない先生が、母さん父さんが、そこにいた。


「お帰り、裕也」

「ただいま」


 歴史の授業、1か月体験は、これにて終了だ。


*****


 後日、あの時の戦いは、俺の体に大いに役立つことになった。体育の成績が、格段にアップしたのだ。歴史体験のレポートを提出、タイムマシンによる移動が負荷になっていないかの検査、身体調査、その他たくさんのことをこなしたのちに、俺は遅めの休暇を取る。つまり、夏休みすべて返上で歴史体験に行かなければならなった。いなかった分の授業を受けない代わりに、休み返上。しかし、休みは帰ってくるのだ。きちんと丸々1か月。さて、何して楽しもうか。


最後があれなのは、スルーしてください。


こんなことがあったらいいなと思って描いた作品です。誤字、感想、その他なんでも受け付けます。あったら、言ってくださいませ。


ここまで読んで頂き有難う御座いました。

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