生徒会日誌その三、俺と可愛い後輩とはなんたるか?
文化祭でバンド演奏…だいたいの青春系の痛いラノベではお決まりである。だが、実際問題これには大きな問題があるだろう…
まず、楽器調達。1個数万円もするものを人数分買ったらどうなるか?どんな馬鹿でも一瞬で想像がつくだろう…仮にお年玉を10年間貯めていたとしても、その10年間が一秒で消し飛ぶ危険性がある。
次に個々の能力。楽譜を読めない俺たちが一体どうやって演奏しろっていうんだ?コードってなんですか?なんかのユニットですか?状態である。
「先輩大丈夫ですか?」
絢川の優しい声が蝉の不快な鳴き声を消し去ってくれる。
マジ絢川天使!僕と結婚してくださいきゅっぷい☆とか言える気がする。まあ言ったら言ったで俺のキャラ崩壊でしかないだろう。
「先輩きちんと聞いてます?まったくもぉ」
ほっぺたをぷくーっと膨らませて、やや上目遣いでそう言って来る。
あ、あざとすぎる…
「聞いてるよ。楽器買うのは高いから音楽室にあるギター使おうって言うんだろ?」
気だるそうに絢川を見ながらそう口早に述べる。
「なんでいきなりそんな説明口調なんですか…先輩暑さにやられたんですか?」
絢川がやや目を細めてこちらを見てくる。
「やられてねえよ!なんでそんなひどいこと言っちゃうんだよ!」
暑さと言うよりキミの愛らしさにry
「ご、ごめんなさい!いやあのその、あ、そうだ!先輩音楽室勝手に入って来ちゃったわけですけど、これ大丈夫なんですか?」
絢川があたふたとしながらそうやって聞いて来る。
お前も十分説明口調だ!
「大丈夫かどうかは知らないけど、いいんじゃねえの?俺生徒会長だけど、なんか特権とかあったことないからね!本当なんもないからね!」
これがリアルと現実の差である。日本語で言えば、現実と現実の差。
もはやわけわからん!
「そ、そうなんですか!まあと、とりあえずギターとかってどこにあるんですかね?」
若干引き気味な絢川さん。だが、そこもいい!
「うーん…まああれじゃね?真の勇者しか行けないハイラルの森の奥に封じ込められてんじゃね?」
「それって一体どこのマスターソードですか!?先輩もきちんと探してくださいよ!」
ナイスツッコミをかました後にポコポコと俺にパンチをかましてくる。
お前はどこぞの格ゲーの緑のヒゲオヤジか!
「探す探す超探す!待っとけ!3秒で見つけてやるよ!」
そう言って音楽室全体を見渡して見る。
色々な人物の肖像画、ピアノ、壁に立て掛けてあるギター。
……おいちょっと待て……普通にあるじゃねえか!
「絢川…見つけたぞ…」
簡単に見つかって拍子抜けしつつ、絢川のほうを見直す。
「もう30秒経ってますよ!」
絢川がほっぺたを膨らませて言ってくる。
お前は鬼か!
「す、すまん…まあこれで一件落着じゃね?」
浅田を見習い能天気に切り返す。
「でも、先輩…これってフォークギターですよね?」
この時発せられた絢川の言葉は後々とても重要になってくるとはまだ誰も知らない…