『人語を解する黒猫と朗読開始の声』
上州の新田という村の外れに、古い寺がありました。寺の裏には竹林があって、昼でも暗くて怖いようなところでした。夕暮れ時になると、もう真っ暗で、何も見えないようなところでした。
村に住む久兵衛という男が、竹林にタケノコをとりに行って、二本だけとって帰る途中、小さな明かりを見つけました。遠いのか近いのかもわからない、弱い明かりでしたが、しばらくその場に立ち止まって目をこらしてみると、それは、何匹もの猫の目でした。
猫たちは、人間の言葉で、何やらしゃべっています。耳をすましてみますと、一番大きな三毛猫が、黒がいないがどうした、中くらいの白い猫が、熱いお粥を食べて舌をやけどして寝込んでいる、一番大きな猫より少し小さいけれども割と大きい猫が、猫が寝込んでいるだってさ、などと言っていました。
久兵衛は、うちにも黒猫がいるが、あれもしゃべるんだろうか、と思いながら、じゃまをしないように、そのまま家に帰りました。帰って、女房に、黒はどうした、と尋ねると、ああお前さんお帰り。黒だって。だらしないことだよ。お前さんが出かけてから、やけに泣くから、お粥の残りをやったら、熱かったみたいで、一口なめて、飛び上がってどこかに行ってしまったよ、などと言いますので、久兵衛は、あれはやっぱりうちの黒のことだったんだと思って、猫はただごろごろしているように見えても、人間の言葉を理解するのだから、猫の前でめったな話をするものではないと思いました。
久兵衛が、酒を飲んでいたとき、ふざけて黒に、はい読みます、と話しかけたところ、黒猫は、びくっとして、一瞬だけ正座したかと思うと、しまったという表情で、もう一度猫っぽく寝直した、ということがありましたが、酒を飲んでいるときの話なので、誰に話しても、笑われるだけでした。
教訓:三毛猫柄のプレスマン、爆発的に売れる。間違いない。黒猫柄のプレスマンは、普通に売れる。普通だし。




