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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

熱いアイス

作者: はるはる
掲載日:2026/05/28

 食べるということは、生きるということだと思っている。生きたいなら、食べるという行動はとても大切になる。でも知らないほうがいい。本来食べてはいけないものを食べる感覚は。 それを食べれば、俺は俺でいられなくなる。

 「おはようございます、みなさん」

先生がはっきりとした声であいさつを響かせながら、教室に入ってきた。今日は遠足の日で、みんなも今まで楽しみにしながら、日々を過ごしてきた。今日行くのはここから遠く離れた山だ。結構遠くにあるので飛行機を使うらしい。遠足なのに飛行機を使うのはなにかおかしい気がしなくもないが、そんなことを気にする暇は俺たちにはない。先生が言うには3時間ほどのフライトらしい。荷物検査を終え、飛行機に乗り込んで早1時間が過ぎようとしたとき、機体が大きく傾き、直後に酸素ボンベが上から出てきた。

「この飛行機は、突然の乱気流に巻き込まれ、間もなく水上に落下します。衝撃に備えてください。」

周りから悲鳴や叫び声、泣く声まで聞こえてきた。でも、そんなことをしても現実は変わらない。受け入れるしかないのだ。

 やがて、全身を殴られたかのような衝撃と共に海の上に着水した。皆外に出ようと必死にもがき、半数ほどが出るころには機体が沈みかけ、8割ほど出ると底まで沈んでいった。残りの2割は間違いなく溺死するだろう。ここがどこかもわからず、泳ぐのはエネルギー効率が悪い。だから浮いていることにした。周りのみんなは各々スマホを取り出したり、おぼれて行ったりと様々だった。そんな中でも冷静にいることが大切だと俺は知っていた。だから動かず、海に浮かぶことに決めた。真上にいる太陽が俺の体温を温めるが、それ以上に海に体温が吸われていく。このままでは低体温症になってしまうだろう。でもそれはそれで俺に定められた運命なのだろう。受け入れる他ない。冷えていく体と共に、俺はゆっくり目を閉じた。

 気が付いた時にはどこかの島に打ち上げられていた。俺以外は打ち上げられていない。立って状況を確認しようとした時だった。不意に左腕がかゆくなり、触ろうとした。でもなかった。心臓の音が耳に響く。ない、ない、ない。焦りから心拍数が上がっていく。左腕が7割ほど食われたような形跡があり、断面が壊死していた。死ぬのも時間の問題だろう。それなら、最後の食事を探そう。俺はそう考えると、島のなかを探すことにした。一周は約3.5キロだろうか、生き物は見かけることはなかった。でも打ち上げられているものがあった。下半身を失った男と見られる遺体だ。顔や体つきから、多分俺のクラスメイトの兄であろう岱玖(だいく)だと思われる。胴体の断面は壊死していて、魚や蟹、ハエが寄っていた。顔は水により大きく膨れ上がっていた。この遺体を引き上げ、服の切れ端で顔や胴体をよく拭いた。俺は生き残れる可能性はほぼ0に近い。だから、死ぬ前に岱玖の遺体だけでも弔ってやりたかった。でも奇跡的に、彼の右腕は壊死していなく、水分によってふくらんでもいなかった。多少の傷は仕方がないだろう。

 俺は火を起こした。そして海でとれた---を焼いて食べた。筋肉が固く、嚙み切ることができないと分かったので、島でとれた石をナイフ代わりに使い、葉の上に細かく切った---を乗せた。味はとても淡白だったが、ついていた海水によって少しの塩味を感じた。そうこうしている間に左腕の壊死が進み、もうすぐ首まで壊死してしまうだろう。何をやっているんだろう。沈みゆく太陽と共に、海の上を何か光るものが流れていた。僕は海に飛び込んだが、左腕がないのでバランスを崩した。だがギリギリ足が着くところだったので急いでそれをつかむ。海が冷たい。体が低体温症になりかけているかもしれないが、もうわからない。下半身と右腕のない岱玖を横に座らせる。俺がつかんだものはアイスだった。海水に浸かっていたので菌が入っているかもしれない。俺はその可能性を恐れ、アイスを加熱した。しっかり沸騰させ、それを掴む。でも熱さは感じない。確かめ終えると一度熱を逃がすために焚火から溶けたアイスを離す。沸騰している最中に鼻に入ってきたバニラの甘い香りが、まだ僕がこの世にいられていることを証明していた。俺はまだ温かいであろうアイスを手に持ち、口に流し込む。右手でも感じることのない温かさを、口の中でも感じることができなかった。俺は目を閉じ、味を感じようとした。でも口の中には水が入ったかのようだった。なんだ、もう終わりか。

 岱玖を土に埋め、俺はまだ消えることのない焚火のそばにあおむけに寝転んだ。空は宝石箱のように輝き、汚い吐瀉物のような俺を照らした。潮の香り、焚火と波の打つ音、次第に意識が遠のく。理解を拒むことはしてはならない。だんだんと体の充電が切れ、目の前に映る光景がすりガラスごしに見ているようだ。

          -------ああ、体が痛む。いや、もうわからん。-------

 飛行機の墜落事故によって多くのクラスメイトが、いや全員が命を落としただろう。俺もそちらに行くとするか。あっちに行ったら真っ先に岱玖に謝らないとな。

まぶしい光が見え、天国が一度見えた気がした、だが俺はもう何もわからなかった。

この作品に込めた思いは、非日常の狂気です。死ぬ間際なのに安全を心配してアイスを温めたりする主人公の精神面と身体面で狂い始めている様子を描けたらいいと思い、描きました。

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