序章 砕かれた光輪(前編)
こんにちは。
第1回で壊れてしまったMMO世界【モミャル・ガハム】、いったいどんな場所だったのでしょう。
どうやら刀剣を持つ少女たちが乱舞するゼロ年代テイストの伝奇SFをテーマにした学園ラブコメMMOの世界だったようです!
高野山や古都をイメージした日本文化風異世界と学園都市を脅かす、数々の秘儀・邪教集団、禁断エリアに点在する太古の魔骸仏や呪物の怨念と戦うための【霊刀と神性】の修行生たち!師匠くんはその世界の創造者さんたちにとっても憧れていたようです!というところから第2回始まります!
行ってみたかった世界とそこに生きる少女たちのイメージがひとつひとつ消えていく…
オレはうとうとしていた。
先程まで、【モミャル・ガハム】と呼ばれるRPG世界の外殻が削られ断片化していく光景に何度もうなされていた。
それは奇妙な論理で埋め尽くされた排除の意志だ。
その凶暴な情念が情報の海に次々と連鎖し、
【モミャル・ガハム】の創造者たちの元に届いた時あっけなくひとつの新世界が静止した。
数列の彼方に世界のタグが拡散し次々と消失していく、
その世界の少女たちの本質とも呼ぶべき
【神性】が次々と砕ける様を
遠くから見つめるオレは、
見つめていただけのオレは…
光の明滅と細かい振動がずっと体を揺さぶっているのにようやく気づいた。
ガタタタン…ガタタタン…
オレは列車の中にいるのか?
いつ乗ったんだ?……
記憶がない。
どこへいくのか?
……それも思い出せないぞ?
座席から立ち上がろうとして、なぜか膝が動かせないことに気づいた。
なぜかヒトの頭ほどの重さが膝の上に…ある?
…待って!膝の上のこの子はいったい誰!?
ガタタン…ガタタン…
目を凝らすと自分のすぐ脇に、
疲れ果てているのかぐったり横になった少女の身体がある!
そして彼女は白銀色の髪をボブカールで整えた頭をオレの太ももに乗せている!
オレの膝枕?普通は逆だよね!?と一瞬思考をかすめたが、
薄明かりのなか目を凝らすと冗談じゃない状況のようだ。
土埃でボロボロのセーラー服に擦り傷だらけの褐色の手足はどうやら異国の出身のようだ、
しかも胸には使用感バリバリの日本刀らしき危険物をギュッとだき抱えている。
この状況からして模造刀などではないだろ?どういう展開!?
キミは誰!?
慌てて少女の頬に手を触れると、しっとりとした柔肌にわずかに体温がある。
ガタタタン…ゴゴゴゴゴッ!ゴッゴッ!!!
暗闇の中列車の加減速の音と別の異音が紛れ込む。
混乱するなかオレは車窓に目を向ける。
漆黒の地平に何十条もの光の柱が立ち上がり、その明るさで状況が飲み込めた。
先程の点群でできた世界の崩壊ではなく、
今オレはその【モミャル・ガハム】の崩壊を地上から目撃しているのだ。
その紅葉に彩られた美しい場所が天空より降り注ぐ光弾で削られ生命の色を失い、
列車の後方へと遠のいてゆく…
オレは思わず少女をかかえ寄せ抱きしめた。
「この子はあの場所から逃れたのか!」
そう瞬間的に理解した。
他に周囲の気配はなかった。少なくともこの車両には。
しかし、オレのそばにこの子を誰かが置いたのか?
謎めいた少女は白銀の髪を目元まで下ろして浅い呼吸だ。
意識を取り戻す気配はない。
「メカクレさん…」
ふと口をついて言葉が漏れる。
オレに、消えゆくセカイの誰かが、キミを託したのか?
空席の車両内に記憶も不確かなボーイが世界崩壊を生き延びたガールとミーツする確率を
いったい誰が操作したんだ?
その時、車両後方のドアの向こうでドタバタゴンッ!ゴゴンッ!!!と派手な音がしてデッキから誰かがこの客室に入ってきた。
〇〇「…まだ、してなかったんですか?」
暗くてよく見えないが、ものすごくかわいい声が響いた。
〇〇「モミャル・ガハム世界の【神性】である光輪を砕かれてしまったその子、
トキザカイの駅までに神性を書き換えないと消えちゃう!
せっかく生き延びたのに!」
暗がりの中、すこし怒ってるかわいい声が後ろから近づいてくる。
たぶんちょっと小柄で頭にうさぎの耳がついてる?
「バニーさん?」
また思わず口をついて言葉に出してしまった。
〇〇「ウチはうさこ!USS1759号!…まだ記憶が混濁してるんですか?
あなたはモミャルの世界にログインできずにここに飛ばされたんですよ師匠くん?
てゆうか師匠候補のヒト?
ウチの世界にバニーさんは別にいるので
ウチのことはメイドうさぎの【うさこ】と認識してくださいね?」
少女を抱き抱えるオレのすぐ傍にかわいい声の本体が現れた。
頭に長い耳とたんこぶが生えている、
なんか涙目のメガネ美少女がオレとメカクレさんを交互に見つめている。
うさこ「最後尾の1号車に現れたヤツはなんとか食い止めましたよ!でも次の駅までに次々来る。」
うさこはそういうと自分のたんこぶにちょんと触ってバッテン目玉の悲痛な表情をした。
なにがあった。
うさこ「このたんこぶを気にしてくださるのなら、覚悟を決めてしてください。もう時間がないのでウチは横で見ています。さあ!」
怒涛の勢いでうさこちゃんの真剣な言葉が車内に響いた。
『してください』という言葉はこの異様な状況で、最速で解決しなくちゃいけないタスクのようだ。
オレは鈍くはないからそう判断する。この状況で隠語としての引掛けではないんだ。
「わかった。この子にキスをすれば目覚める、そういうラブロマンスな理解でOKだよね?…『してください』という言葉の確認だけど」
ズゴッとオレの脛に痛みが走った。痛い !待ってよこのメイドうさぎがオレの脚を蹴ったよ!?
しかもマンガみたいな呆れた顔している。
かわいいのにそんな顎が外れた表情なんでできるの?
うさこ「ここはウブなキャラぶっていい場面じゃないですよ師匠…メモに書いてある通りですよ?」
うさこ「ここはウブなキャラぶっていい場面じゃないですよ師匠…メモに書いてある通りですよ?」
「メモって…あ、これ?」
ふわりと目の前の空間にウィンドウが降りてきた。
うさこ「最近の来訪者はチュートリアル飛ばすのやめたほうがいいですよね!?」
いや、まってくれ空間に表示されてるウィンドウにはイミフな文字列があるだけで、チュートリアルというかバグみたいだけど???あ、でも警告ぽいインフォグラフィックはわかる…そうオレがメイドうさぎに告げたとたん、
うさこ「さっきウチが後尾車両に行った間に情報世界の管区が切り替わったんだ!師匠くんの記憶がおかしいのはこれのせいだね!?」
メイドうさぎが突然真っ赤になってオレの言葉に反応した。
うさこ「ごめん師匠くん!くわしいことはあとで説明するからこの子の第1チャクラを開いて!」
そう言うとメイドうさぎはオレの手を取り少女の下腹部へと誘導する。
オレも真っ赤になる。そして上ずった声で再度確認する。
「ちょっ!やっぱり避けた意味の方…この子と○○○すると魔力回路が開いて目覚める的なコト言ってるんだ!?」
うさこ「きゅっ!そういう神性を持つ聖者さまの教えを見かけたことはあります。ですがウチの世界の神性開放はMucosal contactではありません。」
と言いつつ『行為』を真顔で否定したメイドうさぎはオレの手をやさしくメカクレの子の下腹部に密着させた。
すると一瞬なにか神聖な気配を周囲に感じた。
〇〇「んッ」
冷え切った少女から小さな声が漏れる。そしてわずかな体温が少女の下腹部に残っているのがオレの手に伝わってくる。
うさこ「それは、体温というよりこのコに宿る生命の根源ですね。第1チャクラは足の付根にあるんです」
そうなんだ。でも気を失ってる女の子の大事な部分を、白布の上からとはいえ見知らぬオレが突然触っていいんだろうか。もうすでにアウトなんだけど。
◯◯「ん…んッんッ」
少女は無意識に反応したようだ。刀を抱きしめ身体を固くして堪えている。ご、ごめんなさい!
うさこ「師匠くんあわてないで。彼女はアップデートの準備に入ったようですよ?けして嫌がっていません。きゅっ」
◯◯「……んッ…んッ」
うさこ「きゅっきゅっ。気持ちいいんだ、そうですよね…よかった、師匠くんじゃあ続きを急ぎましょう。きゅっきゅっ」
ちょっとまって!んっんって堪えているだけなのに、うさこさんきゅっきゅってリアクションして会話できてるの?まだ起きてないよねこの子?
うさこ「解説が必要ですか?うさぎ族はもともと声帯がないのでノンバーバルのコミュニケーション能力が発達してるんですよ。」
そ、そうなんだ。
大変な状況でなければ知りたいことがどんどん増えていくよ!
しかもどんどん神聖な気配が上昇していく!
…オレの困惑を読み取ったらしく、メイドうさぎがドヤ顔しはじめたのでたまらず目をそらす。
◯◯「んッ…んッ…」
うさこ「あっこれはヤバい…ウチが見てるからセーフだけど。師匠くんちょっと耳かしてください!超急ぎです!」
メイドうさぎが真っ赤になってオレの耳元に顔を寄せてきた。いままでと態度が違うぞ。
すると突然画面が真っ暗になったぞ?これ車内灯消えたわけじゃないよね?
暗転?
これ、まさか上位世界から観測できない状況にオレとメカクレさんとうさこさんがいる状態だよね?
うさこ「そうですよ。これはウチも予期してなかったんですが、この子、モブ子さん専用の特殊演出のようです!きゅっ!」
「モブ子?このメカクレさんの名前?」
オレがメイドうさぎに問いかけた瞬間、周囲の神性な気配が光の粒子として現れ、
少女の下腹部に集まりだした。オレまで不思議な感覚に包まれていく!?
無論、賢者手前な気分ではなく透明で清らかな昂りだ(そう信じてください…上位世界)。
モブ子「…んッ…んッ…お師匠……」
メカクレさん、いやモブ子さんがようやく喋った!目が覚めたのか!?
彼女は刀をそっと傍らに置いてオレの胸に身体を預け、すこし躊躇いがちにに顔を寄せてきた。
いつの間にかメカクレの前髪に隙間ができて、彼女の魅力的な大きな目が覗いていた。
モブ子「よかった…お師匠はわたしと近い年齢だ…ラクガキみたいな概念の存在じゃない…。」
そうつぶやいた彼女の声はクールでダウナー系だがかわいい声音だった。
オレの目をしばし見つめて安堵した彼女は静かに落涙している。
つづく
つづく
次回 【第3回 砕かれた光輪(後編)につづく
いかがでしたか?
実際のヒロインさんはメカクレさんなんですが、白銀髪ボブカールで肌が明るめのライトブラウンという、生成AIをいくつかまたいで作らないとできないキャラだと発覚してそれは乗り越えたんですが、こんどはどのAIも旅行用の長距離列車の車内学習してない。このあたりはヤトヤの勉強不足でいずれ差し替えるつもりです。
いい訳でなく生成AIでストーリーを見せるイラストを創るというミッションがヤトヤの個性になると判断したので、たまに苦しいけど楽しんでます!
どうか読み手である師匠のみなさん、
一番弟子さんとうさこさん連れて
ムニ・アラニャムの壮大な冒険に出かけてください!
(ここから先は読者のみなさんは上位世界とムニ世界と同時に存在している師匠くんモードですよ?
このわたしヤトヤも同時存在してる物語系VTuberぽい存在!)
よろしくお願いします!
ふと考えるとTRPGリプレイのMMORPG版とか
ソシャゲRPG版みたいな作品なのかな。(自問自答)
ただゲームマスターのヤトヤは世界の中にもいるし、
師匠くんにチュートリアルガイドしてくれる【うさこ】ちゃんとか、
ヒロインの【一番弟子】ちゃんとか少し変わったポジですね。
次回は暗転します!全力のメタ描写にご期待ください!