壊れゆくせかいのかけら (プロローグの前奏)
第1回はプロローグの前の状況説明です。
次の回から主人公くんとヒロインさん2名のラブコメが始まります。
少し前に初投稿して反省点ふまえていろいろビジュアル追加しました。楽しんでくれるとうれしいです!
(先行版読んでくれたひとおまたせしてごめんなさい。少しずつなろうのシステムや読み手のリズム把握して面白くなるようがんばります。)
上位世界と呼ばれる世界がある。
おそらく超基脳技術時代の以前にはメタヴァースやヴァーチャル世界などと呼ばれていたらしいが、この上位世界からはハブのひとつである現実世界と同じ強度を持つ別の情報世界が無数に見える。
例えば、現実世界のどこかでトラックに撥ねられた陰キャの誰かが、別の情報世界のナゾの薄着の美女にスカウトされて強力なスキル付与を受け、新たな人生を始めたのが見える。
同じ様に日本の幕末の治安組織が丸ごと異世界に転生して全員美少女剣士として百合百合している様子も丸見えだ。
わたしはたぶんあの美女と同類の上位存在ではあるが、目的が異なることに愉悦を見出す者である。
そしてあの美女たちよりはわたしたちの数も多い。
見たまえ、ここに、ある概念の世界がある。
我々は、さまざまな世界を訪れ、思い思いの意思や哲学で干渉してきた者の一部である。
我々は、その領域に新たな概念が育つ様を観察する。
そして、その世界に起こり得る特別な事象に干渉してみるのだ。
いまも我々の同好の士が数列の彼方から、
この新たな概念【モミャル・ガハム】周辺に集いつつある。
1人が呟く。「以前の方舟、プラナ・ガハム世界から分岐したようですネ」
私もまた呟く。「そうなのか?私には異なる属性に見える」
我々が唱和する。「「「「だが、何者だ!いままさに我々が観測し始めたこの新しい概念を打ち消し滅そうという、怯えと怒りの情念を生じさせた暗躍者は!前世界の創造者に疑いの目を向けさせ、新たな創造を否定するよう画策した暗愚なる者たちよ!」」」」
我々は、世界が崩れ行く様を目撃する。
夏空に無限の紅葉が散りゆく情景に、
そしてこの世界の神性が砕かれ、すべての少女たちの時が止まる瞬間に、
何度も目撃してきた世界の終焉が、まさか降り立つ前に、整う以前に、
脈絡もなく、起きてしまった!
気づくと、周囲の気配が少ない。
気の早い同好の士たちがやれやれと、そそくさと、観測を諦め撤収の準備を開始したようだ。
いや、まて?
慌ただしい異形の紳士たちをかき分けて小さな手があがるのが見える。
私は、彼女の挙手とその目的に気づく。
そのちいさな1人は、ささやかに、しかし確信を持って告げる。
「みなさん、お待ち下さい?すぐ近くに残された領域を見つけましたよ?」
一瞬で紳士たちの目線がその数列の塊に向かう。
無論、この私もマッハだ。
我々は驚き、顔を見合わせる。
また1人が呟く。「これは、おそらく異なる神性を育む世界だ。しかし、壊れゆく世界の一部を繋ぎ止められる程度には、性質が近いネ」
私もまた呟く。「ならばこの地に降り立つ意味はある」
私はすぐさま目の前の空間に手を伸ばし、この上位世界の一部であるエージェントを呼び出すUIを操作する。
「私だ。いつものスーツケースに荷物をまとめて欲しい。急ぎ出かける準備だ」
私はしばらくぶりに高揚している。
なぜなら研究の再開が出来るのだ。
新しい神性への干渉、それを秘めた少女たちとの出会いに官能を夢見るのだ。
先程の小さな御婦人に感謝しよう。
おそらくは彼女もあの世界になんらかの目的がある。
そうでなければ我々【異形の干渉者】、あの女神たちより危険な上位存在に声をかけたりはしないのである。
続く
次回から主人公くんたちが活躍します!
ずっと2024年9月から作り続けているビジュアルノベルの一部を一次創作の小説として構成しました。
元作品はゼロ年代やテン年代のセカイ系や伝奇SFビジュアルノベル、MMOなどのオマージュベースですが、ノスタルジーではなく2030年代のコンテンツをコンセプトにがんばります!
(生成AIイラストに特定作品の画像やプロンプトは含まれていません)