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『え、私が姫ですか?!』失恋後の帰り道、白ネコ宅配車を触ったら異世界のヤンデレ王子様が降臨して、溺愛してくるんですが?!  作者: 間宮芽衣
第二章 セレスタ王立魔法学園【入学編】

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【8】セレスタ到着、赤い花と嫉妬の影。


「よし、じゃあ行くよ。アイリーン。」


異世界に来て一ヶ月。


 今日は私がサイラスと一緒にセレスタ王立魔法学園に出発する日である。


 乙女ゲーム世界だからか、春に新年度がスタートするらしい。


 サイラスが転移中離れないようにと、ギュッと抱きしめてきたので私は思わず赤面してしまう。


「いってらっしゃい、アイリーン。何かあったらサイラスを頼りなさい。」


「サイラス様。姉上をよろしくお願いします。」


「…二人とも、体調に気をつけるんだよ。」


母とディーンと父が、転移場所の王族専用の庭園に見送りに来てくれた。


(転移するとはいえ、家族の前で抱きしめられるなんて恥ずかしいっ!!)


「…行ってきまーす!!お土産買ってくるねっ!!」


その言葉を合図にサイラスが転移魔法を起動する。


 パアアアッ


 その瞬間、金色の光に包み込まれる。


(…結局セレスタ行きは避けられなかったなぁ…。どうか断罪されませんようにっ!)


――私は不安な気持ちでクロノス王国を後にするのだった。


◇◇


「サイラス、お母さん。


 私考えたんだけど、セレスタに行かなければ私の断罪って起こらないんじゃない?」


一度目の記憶が戻ってからすぐに、私は二人にこんな事を言った。


 ――そして、見事に却下されたのだ。


「…残念ながらそれは無理ね。


 この大陸の王族や高位貴族は基本的に『星の祝福』を受けることが義務付けられてるの。」


そう言って母は眉を下げた。


「えー…、ねえ、その『星の祝福』って一体何なの?」


私が尋ねると、サイラスが答えてくれる。


「…一年に一回、セレスタにある『星見の神殿』に、この世界の神である『ルキア様』が降臨されるんだ。


 ルキア様はお優しい…けれど時に恐ろしい部分もある。」


「そうそう。で、神殿の周りにある『四大遺跡』で『媒介石』を集めてルキア様に献上するのよ。


 そしたら一生に一度だけ、今後の運命や自分の立ち位置について助言をくれるってわけ。


 …まあ献上しなかったら見るだけになるんだけどね。


 だから、『古代遺跡で石を集められた』っていう事実そのものが王侯貴族としての『実績』にもなるってわけ。」


母の言葉に私は頭を抱える。


「えー…、じゃあもし行かなかったら、『実力がないから逃げたんじゃない?』って周りに思われちゃうってことかぁ…。」


確かに一般人ならともかく、『王女』という立場ならそれはまずいかもしれない。


「ああ。だから、アイリーンも必ず『星の祝福』をセレスタで受けなくてはいけない。まあ、そもそも義務だしね。


 ――大丈夫。今度は僕が君を守るから。」


最後の方だけ、サイラスが耳元で低い声で囁いてくる。


(わわ、不意打ちはやめてぇええ!!)


思わず赤面していると、母はすくっと仁王立ちした。


「そうよ!貴女にはもう来月にはセレスタに留学して貰うからね。


 ――だから、王女として恥ずかしくないように一ヶ月必死で勉強しなさい!」


(えぇえええー、そんなぁああ!!!)


…こうして私の勉強三昧、そして修行の日々が始まったのだった。


 ――ある日、王宮の図書室で勉強している時だった。


「…それは一体何だい?」


隣で本を読んでいたサイラスが興味深そうに話しかけてきた。


 ちなみに彼は転移が出来るので、アステリアにふらっと帰って仕事もしているらしい。


 だが、何故か毎日クロノスに来て、下手したら泊まっていっている。


「あー、これ!!赤字で書いてこの赤いシートを被せたら文字が消えるの!だから、暗記の時に便利なんだよ。」


私が答えるとサイラスが口元を綻ばせる。


「へぇ。面白いね。僕も今度色ガラスで栞を作ってやってみようかな?


 …ちなみにそのノートに書いてある言葉、どういう意味だい?」


『デブ、ハゲと公園行ったら、痩せた美女候ふ。』


「ああ、これ。クロノス国内の貴族の語呂合わせを作ってみたんだ。


 公爵家がデルラント家、ブローニュ家、ハーゲンダール家で、侯爵家がヤコブセン家と、ビショップ家だから。…まあ、最後の『候う』だけ字が違うけど、思い出せればいいかなって。」


私が得意げに言うと、サイラスが目を丸くした後、


「くっ、す、凄い覚え方だね。

 プライドの高い高位貴族達が聞いたらひっくり返るんじゃないかな。」


そう言って必死に笑いを堪えていた。


 理数系は日本の方がずっと進んでいたので簡単だった。だが暗記することが盛沢山だったので、こんな感じで楽しく覚える為に工夫していた。


 ちなみに、語学系はテーブルマナーと同じでなぜかサラサラ書けてわかってしまう現象が起きていた。


 なので、勉強は暗記だけすれば良かった。


 ――そして、一番私にとって未知だったのは魔法だった。

 

「アイリーン。このランプにまずは灯りを灯してみて。」


庭園に集合して2人で空いた時間に訓練をしていた時のことだった。


 サイラスが自ら家庭教師役を買って出てくれたのだ。


 おっかなびっくりランプに手を伸ばして『灯れ!!』と念じてみる。


 シーーン。


「…うーん、魔力を循環させる感覚がわからないのかな?」

サイラスがそう言って後ろから手を重ねて、彼の魔力を循環させてくる。


(…あ、なんだか『あたたかい何か』が身体中を巡ってるのがわかるかも。)


私が自分の中にもある『あたたかい何か』を意識してもう一度ランプに手をかざして念じると。


 ポッ


なんと、ランプに火がついた。


(…やった!!)


「サイラスっ!出来…」


思わず嬉しくなって私は振り向く。


 ――すると、彼の顔がすぐ目の前にあって思わず目を見開く。


「…っぁ、」


私が言いかけると同時に彼がぎゅっと抱きしめてきた。


 お互いの鼓動がドキドキと伝わってくる。


「…ほら、もっと僕と触れ合っていたらコツが掴めるかもよ?」


彼の顔がだんだん近づいてくる。


(…キスされちゃうっ、)


 ――思わずギュッと目を瞑った時だった。


「姉上ー!!どこですかー?」


(ぎゃああああ!?)


なんと弟のディーンが私を探しに庭園までやってきたのだ。


「……タイミング悪いな。」


そう言ってサイラスは低い声でサイラスが呟き、パッと身体を離した。


「あ!いたいたっ。


 …って、 何で二人ともそんなに顔赤いんですか?


 先程いらっしゃったビショップ侯爵が領地で取れたワインと、僕達にお土産を持ってきて下さって。


 せっかくなので、ご挨拶をと思ったんですが。」


「な、何でもないっ。ごめん、サイラス。ちょっと行ってくる。」


私が焦って答えるとサイラスがニッコリと笑う。


「うん。…またあとで。」


…こんな感じでサイラスが何かとペタペタと触れてきて、私の心臓はこの一ヶ月毎日破裂しそうだったのである。


◇◇


(こ、この格好、なんだかキスされそうになった時の事を思い出しちゃうっ。)


1人で勝手に赤面していた時だった。


「――着いたよ。ここがセレスタだ。


 ん?どうしたの、アイリーン。顔赤い。」


そう言ってサイラスがおでこをコツンと合わせてくる。


「っ、ひゃ、」


アワアワしていると彼が蕩けそうな顔で見つめてくる。


「熱はないみたいだね。


 …可愛い。そんな顔してたら食べちゃうよ?」


(ぎゃーーーーーーーー!!!!)


「や、やめて、心臓がもたない…。」


私がそう言うと、彼がクスッと笑って私の手を握る。


「ほら、行こう。」


ようやく顔を上げた私は美しい街並みに息を呑むのだった。


「…うわぁ!素敵なところ!!」


思わず目を輝かせる。


 転移した煉瓦造りの建物の裏路地を抜けると、広場のような場所があり、ヨーロッパのような街並みが広がっていた。


 中心にはベンチや噴水があり、屋台もたくさん出ているようだ。


「…はい。君にあげる。


 明日から学校が始まる。寮から学校に行く時も勿論待ち合わせして一緒に行こうね?」


そう言って彼は花売りから赤いカーネーションを買って私にくれた。


 確か花言葉は『深すぎる愛』だった気がする…。


 私は顔を真っ赤にしながら彼と手を繋いで並んで歩くのだった。


「――どうして…アイリーン王女がサイラス様の隣にいるのよ?!

 …彼の隣に立つのは、物語のヒロインである私のはずなのに!」


――強化アイテムの買い物帰り、偶然私達2人を見かけたセリナ・バルネスの瞳に、嫉妬の炎が燃え上がっていたことなど知らずに。


「……?」

サイラスが一瞬背後を振り返って訝しげな顔をしたあと、ギュッと私の手を握ってきた。


「どうしたの?」

私が尋ねると、彼が首を振る。


「何でもないよ?ちょっと変な虫がいるなって思っただけ。」


彼の言葉に私はキョトンとする。


「サイラス虫好きなの?私は、ダンゴムシやカブトムシは好きだけど、チョウチョの顔がどうしても無理なんだよねー。遠目に見るのはいいんだけど。


 小学校の時、友達とトンボに蟻食べさせたらめっちゃ食べてたよっ!!」


「そうなんだ。


 …今度我が国の銀色の大きなカブトムシを君のために見せてあげるよ。」



私はカブトムシをモチベーションに学校生活を頑張ろうと決意するのだった。



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