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『え、私が姫ですか?!』失恋後の帰り道、白ネコ宅配車を触ったら異世界のヤンデレ王子様が降臨して、溺愛してくるんですが?!  作者: 間宮芽衣
第一章 異世界転移編

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【6】初恋と、後悔と。◇◇サイラス・アステリア視点


◇◇サイラス・アステリア視点


 ――初めてアイリーンに出会ったのは『一度目』の8歳の時だった。


 両親がクロノスへ会談に行く際、避暑もかねて僕も一緒に行くことになったのだ。


 大人達が真面目な話をしている間、僕が庭園を散歩していると後ろから誰かに呼ばれた。


「――ねえっ!あなた、アステリアから来たの?」


振り向くと、黒髪の美しい少女が僕の目の中に飛び込んできた。


 ざあっと風が吹いて花びらが舞い散り、心臓がドクンと大きく跳ねた。


(…なんて綺麗な子なんだ。)


紫色の美しい瞳が僕のことを見つめている。


「ねえ、良かったらお話ししましょうよ!私、アイリーンって言うの。貴方は?!」


ニッコリと笑った彼女から目を離せない。


「…サイラス。」


なんとか答えた僕の手を彼女がそっと握る。


「サイラスね!行こう!!」


手を繋いで、庭園を走り回って一緒にお菓子を食べた。くるくると変わる表情が可愛くて、愛おしくて。


 何度も二人でバカな事を話しながら笑い合った。


「…こんなに笑ったのは初めてかも。」

僕がそう言うと、彼女が目を綻ばせる。


「ふふっ。私も!!」

その言葉に心臓がドキドキと痛くなってくる。


 気付いたら僕は緊張しながら彼女に言っていた。


「――ねえ。将来、僕のお嫁さんになってくれる?」


すると、彼女は美しい紫色の目を溢れ落ちそうなくらい見開いてから真っ赤になった。


(…可愛い。)


――けれど。


「…す、すっごく嬉しいんだけど、実は私二年前に婚約者が決まってしまったの…。」


その言葉を聞いて僕はショックで固まる。


(…っ、なんで!!くそっ、僕がもっと早く出会っていれば!!)


泣きそうになるのを堪えながら僕は彼女に告げる。


「じゃあ…ずっと仲良く、せめて友達で、いてくれる?」


僕がそう言うと彼女は驚いたように顔を上げた後、花が綻ぶように笑った。


「…うんっ!!!」


本当は『友達』ではなくて彼女の『特別』になりたかったけれど。


 ――僕はアイリーンに友人として文通だけでもさせて貰えるようなんとか頼み込んだ。


 そして、自分の気持ちに蓋をしようとした。


 …それなのに。


 手紙の返事が来るたびにどうしようもないくらい気持ちが沸き立ってしまう。


 手紙には彼女が最近読んで面白かった本や、食べ物の話が沢山書いてあった。


(ああ、可愛いな。彼女は冒険小説が好きなのか。僕も読んでみようかな。)


 たまに行事で会える時はどうしようもなく胸が高鳴った。


「…アイリーンっ!会いたかった!!」


すぐにハグしようとする僕に成長するにつれてアイリーンは眉を下げるようになった。


「…っもう!『友人』の距離感を超えています。」


そう言いながらも耳が赤くなっているのを僕は知っていた。それを見て、僕は仄かな喜びを感じるのだった。


「…大丈夫。友人としてのハグだよ?」

「もうっ。」


怒る彼女の顔も可愛くて、初めて会った時よりも更に想いは募っていく。


「…ねえ。サイラス、早く婚約者を決めないと。」


両親にそう言われても、僕はアイリーン以外の女の子を好きになれる気がしなくてずっと突っぱねていた。


 

◇◇

 

 それから数年が経ち、13歳になったある日。


 あるパーティーでアイリーンが婚約者のカミル王子にエスコートされるのを見かけてしまった。


 彼女がヒールで一生懸命歩いているのに、合わせもしないでスタスタと歩いているカミル王子。


 …せっかく彼の色の緑のドレスを身につけてくれていると言うのに。


 ――胸の中にドス黒い感情が溢れてくる。


(僕だったら、彼女の事をもっと大事にするのに。


 僕の瞳の色の青いドレスを着た彼女はどんなに美しいだろう。)


僕は前に歩み出て、二人に話しかける。


「初めまして、カミル王子。


 僕はアステリアの王太子、サイラスです。セレスタの魔石にはいつもお世話になっています。


 …アイリーン王女も久しぶりだね。そのドレス、とってもよく似合っている。」


僕がニッコリと笑うと、カミル王子が目を見開く。


「あ、ああ。初めまして。アステリアは魔術が発展しているそうで。アイリーンとは知り合いだったんですか?」


そう言われて僕は頷く。


「はい。幼い時、クロノスの会談でお会いしたことがあって。」


「そうなんですか。…アイリーン、飲み物でもとってきて。気が利かないな。」


カミル王子がそう言うと、彼女がドリンクを取りに行こうとした。


(…さっきから彼女は足を痛そうにしてたのに!もっとよく見てやれよ!)


僕は慌ててそこにあった椅子にアイリーンを座らせる。


「…飲み物くらい僕が取ってきます。

 アイリーン、足痛くない?座ってて。」


そう言うと、彼女は小さな声で『…ありがとう。』と言った。


 その時カミル王子の目が鋭くなったのを僕は見逃さなかった。


 飲み物を持って戻ると、カミル王子がアイリーンにこんな事を言っていた。


「…君みたいな真面目でつまらない子に、友人なんていないかと思ってたからびっくりしたよ。」


「…私にだって友人くらい、います。」

彼女は愛想笑いで短く答えている。


 …どうやらカミル王子は好きな女の子に意地悪してしまうタイプらしい。


 こんな事を言いながらもアイリーンを見る目にはどこか執着のようなものを感じ取れた。


(僕だったらもっと彼女を楽しそうに笑わせてあげるのに…。)


彼の色を纏った彼女にどうしようもなく苛立つ。


 彼女が僕の婚約者なら、青いドレスに銀のアクセサリーをこれでもかとプレゼントするのに。


 彼女が幸せになるのなら、どんな事だってするのに。


「お待たせしました。飲み物です。


 はい。アイリーンはリンゴジュースが好きだったよね。」


僕が二人に飲み物を渡す。


 その時、僕は『無理しないでね。』と彼女にしか聞こえない小さな声で伝えると、彼女は少しだけ口角を上げた。


「…では、僕はそろそろ行きますね。まだ挨拶したい方もいらっしゃるので。」


これ以上二人が一緒にいるのを見るのがつらかった。


『友人だ』と、彼女に表面上は言ったけれど。


 …どうにか付け入る隙がないか僕はどうしても考えてしまうのだった。


◇◇


 魔法が得意だった僕はアステリアで二年飛び級した。


 そして、セレスタでの『星の祝福』も同級生より二年早く、14歳で受けることになった。


(…アイリーンはこの国に嫁ぐのか。)


セレスタに留学していた1年間は凄く複雑な気持ちだった。


 けれど、食べ物も美味しいし観光地も多く、景色も美しい。


 魔法もアステリア程ではないが発展していて正直悪くない国だと思えた。


(…この国ならアイリーンも幸せに暮らせるかもしれない。)


そんな事を思いながらも、僕以外の男と彼女が結婚すると考えるだけで胸が張り裂けそうだった。



 ――転機が訪れたのはその二年後だった。


 セレスタに『星の祝福』を受けるために留学していた友人から『学校でアイリーンが虐げられている』という噂を聞いたのだ。


 しかも、カミル王子は庇うどころか同調しているらしい。


(彼女が幸せになるのを祈って、ずっと見守ってきたのに!!)


 僕は居てもたってもいられなくなり、パーティーでアイリーンに会った時に髪飾りを渡した。


 …実はこの髪飾りは魔道具で、持ち主の周りの音声を拾ってくれるのだ。


 ちゃっかり銀色に蒼い宝石という執着たっぷりの色合いでデザインした。


 …その時の彼女は元気がなくて、ますます心配になった。


「…っ、無理よ。貴方の髪と瞳の色じゃない!身に付けたらなんて言われるか…。」


断ろうとしてきた彼女だったが、『持ち歩くだけでいい』と言ったら、渋々貰ってくれた。


(…『なんて言われるか』とは言ったけれど、身に付けるのが嫌なわけではないんだな。)


そう思うと、口元が綻んでしまう。

 

 ――アステリアに戻り、ドキドキしながら髪飾りから流れてくる音声を自分の部屋で再生する。


『私ー!!アイリーン様に教科書を破られたんですっ。』

『…そんなこと私はしていません。』

『おい、アイリーン。素直に謝ったらどうなんだ。』


(――許さない。)


彼女はセレスタのセリナという男爵令嬢に何度も濡れ衣を着せられていた。


 そして、カミル王子やその側近達は庇いもせず、一緒になって酷い言葉を浴びせていた。


(こんな奴に絶対に、アイリーンを渡さない。)


僕は彼女を守る為に、証拠を集めるための魔道具を取り寄せ、入念に準備を始めていた。


 …ところが、運悪く会談で髪飾りの音声を聞けない日に断罪が起きてしまったらしい。


 ――何の因果かセレスタの王族がアステリアに来ていた日だ。


 会談が終わった後なんとなく胸騒ぎがした。


 すぐに部屋に戻って髪飾りからの音声を聞くと、なんとアイリーンが牢屋に入れられていた。


(…くそっ、どこの牢屋だ?!場所が割り出せない!)


アステリアの王族は転移魔法が得意だ。


 座標さえ割り出すことが出来れば、どの場所でも、どんな世界でも繋ぐことが出来る。


 ただし、かなりの魔力を必要とするために頻繁に使うことは出来ない。


(…緊急事態だ!転移して助けなければ。)


いてもたってもいられなくなり、慌てて準備をしていた時だった。


 ――例の男爵令嬢が『男達にアイリーンを襲わせる』と言ってるのを聞いてしまったのだ。


(…そんなこと絶対にさせるものか!!)


怒り狂いながら転移した僕だったが、正確な位置を割り出す事ができず、微妙に座標がズレてしまった。


 なんとか牢屋を割り出して、男達を魔法で跳ね飛ばした時には。


 ――アイリーンはもう自分の胸に短剣を突き刺していた。


(…そんなっ!!あと数秒早ければ!!)


指先が震えて、彼女の体温を掴み損ねる。時間だけが容赦なく零れ落ちた。


 僕は絶望しながら、自分が血まみれになるのも構わず彼女の事を抱きしめた。


「アイリーン!!アイリーン!!


 好きだっ、アイリーン!死ぬなっ!」


僕は涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、彼女の冷たくなっていく身体を抱きしめる。


 僕の服が彼女の血で真っ赤に染まっていく。


 パアアアッ!!


 すると、金色の神秘的な光が渦巻き、僕らを包み込んだ。


(…なんだ?!)


目を凝らした瞬間、僕の意識が薄れていく。


 薄れゆく意識の中で、僕は絶対に離すものかと、彼女の身体をきつく抱きしめた。



 ――目を開けた時、世界はまだ“間に合う”場所に戻っていた。



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