【35】恋とタコヤキと婚約宣言 ◇◇リリー•ハーゲンダール公爵令嬢視点
――今日はいよいよ待ちに待った学園祭です。
(うーん、いい匂いですぅー!!)
朝から美味しそうな屋台の匂いに気分が上がってしまいます。
(クレープと骨付きソーセージのお店は絶対行きたいですっ!
あと、サイラス様とアイリーンが出しているという『タコヤキ』という食べたことのない食べものの屋台も行きたいですっ。
あとはドーナツ屋さんと、鉄板焼きパスタのお店と…。)
「リリー。涎が垂れていますよ。」
私が学園祭マップに丸を付けながら涎を垂らしていると、カーティス様が後ろから涎を拭ってくれました。
「はわわっ!すみませんっ!」
カーティス様はいつも呆れたような顔をしながらも私の大食い欲を満たす為にせっせと食べ物を調達して下さいます。
私は今日も、そんな優しいカーティス様が大好きなのでした。
◇◇
思えば私はセレスタに入学してからいつもカーティス様に助けて頂いていました。
水鏡の遺跡でもブツブツ言いながらもジャイアントサーモン釣りを手伝って下さいましたし。
国際交流舞踏会の時はなんと素敵な深緑色のドレスまで贈ってくださいました。
「…これが、私の気持ちです。」
「はわわ、わかりましたっ!今度一緒に森林浴に行きましょう。」
私が元気よく答えると、『そういう意味じゃありません。』と言われてしまいました。
夏休みはカーティス様の実家のクロイツェル家で勉強を教えて頂きながらも毎日メロンが食べ放題でした。
そして、なぜか客室ではなく『私の部屋』を与えられ、カーティス様のお父様とお母様にも大歓迎されてしまいました。
「りりたんは可愛いなぁ。ほら、私のアイスをあげよう。」
宰相であるカーティス様のお父様は私の事を『りりたん』と呼びます。
そして、侯爵夫人であるお母様は
「りりたん、ずっとうちにいてもいいのよ?」
と言ってくださいました。
「あ、でも、申し訳ないのでメロンの季節が終わったら一回実家に帰りますっ!!お土産買ってきますっ。」
私が元気よく言うと、
「あら、梨と葡萄ももう少しで食べ放題なのだけど。ぶどうゼリーも洋梨のタルトも絶品よ?」
と言われてしまいました。
「はわわっ。良いんですか?!じゃ、じゃあ実家には顔だけ見せに帰ったらすぐまた戻ってきますっ。」
私の言葉に3人が満足気に頷いて下さいました。
(ここはフルーツパラダイスですぅー!!)
はぐはぐといっぱい食べる私を『仕方ないですねぇ。』と目を綻ばせて見るカーティス様。
そんなカーティス様と一緒にいると、何故かだんだん胸がきゅうんと締め付けられるようになっていったのでした。
――そんなある日、一緒に隣り合ってケーキを食べていたら、カーティス様が一瞬目が合った時、真顔になりました。
そして突然こんな事仰ったのです。
「…キスしてくれたら私の苺もあげますよ?
…なんて、冗…」
「わーい!いいんですか?!」
私は喜び勇んでカーティス様の唇にちゅっとキスをしました。
「――っ!!なっ…。」
カーティス様は自分で言い出したくせに真っ赤になって固まっていました。
「ほらー、カーティス様っ!!約束ですよ?苺、下さいね?」
「あ、はい…。」
それからカーティス様は何故か目が合いそうになると逸らすようになってしまいました。
(なんでですか?…寂しいですぅー…。)
そう思っていたのですが、クロノスでみんなでバーベキューをした日、カーティス様が私にこんなことを言いました。
「…この前キスした時なんですが。
君が苺がただ欲しくてキスをしたのか、私の事を少しは好きでいてくれたのか…わからなくて。
――私の事、どう思ってるんですか?」
そう言われて私は笑顔でこう答えました、
「苺も大好きですけど、カーティス様の事も大好きですっ!!」
その言葉に、カーティス様は真っ赤になりました。
「っな。…じゃ、じゃあリリーも私の事を好きだと思って下さってるという認識でいいんですか?」
彼の言葉に私は首を傾げます。
「…そうですけど。当たり前じゃないですかー。」
「――っ、わかりました。じゃあ嘘じゃなかったらもう一度キスして頂いてもいいですか?」
そう言って何かを期待するような目でジッとカーティス様が見てきたので私は背伸びしてカーティス様にキスをしました。
「ふふっ、これで伝わりましたか?」
私が笑顔で言うと、カーティス様が赤い顔でブンブンと頷きました。
「良かったー。じゃあ皆の所に戻りましょうか!!」
こうして私達は無事仲直りする事が出来たのでした。
――それからというもの、何故かカーティス様は2人きりになると、必ずキスをしたがるようになりました。
「うふふっ。カーティス様、キスが大好きなんですねっ。」
私がそう言うと、カーティス様はいつも顔を赤くしてプイッと顔を背けます。
「…嫌ですか?」
「え?みんなの前だと恥ずかしいですけど、2人の時なら嫌じゃないですよぉ〜。」
私がそう言うと、目を見開いあと何故か抱きしめられました。
「――っああ、リリー!!」
「はーいっ!!なんですか?」
私が元気に返事をすると、カーティス様が吹き出しました。
「…っぷ。あの、別に用事があって呼んだわけじゃないです…。」
「あ、そうなんですね。」
こんな感じでなんとなくいつも一緒に過ごしておりました。
◇◇
「今日は実は伝えたいことがありまして。」
私がハグハグと『タコヤキ』を食べているとカーティス様にそんな事を言われました。
(はわわっ!これ、めちゃくちゃ美味しいですぅ…。カーティス様にも食べさせてあげましょうっ。)
ところがタコヤキに夢中だった私はそんな事を考えていて、爪楊枝に刺したタコヤキをカーティス様の口元に持っていきました。
「あーん。」
するとカーティス様は顔を赤らめたあと、タコヤキを食べてくださってからこう言いました。
「あの、私の話、聞いてました?…あーもう、ちょっとこっち来てくださいっ!」
そう言われて手を引っ張られて人気のない教室に連れて行かれました。
「…??何ですか?」
「いいからっ!」
彼は鍵をかけると、切羽詰まったようにキスをして来ました。
「んっ。」
唇が離れると、カーティス様は真剣な顔でこう言いました。
「――リリー。好きです。僕と婚約して下さいませんか?その、ハーゲンダール公爵には既にご了承頂いておりまして。」
その言葉に私は目を見開きました、そして、ジワジワと喜びが胸を満たしていきます。
「はいっ!私で良かったら!!」
私がそう言った瞬間、カーティス様が私を抱きしめてなんと教室でグルグルと回りました。
「きゃー!!!」
思わずテンションが上がって笑うと、カーティス様も笑っていました。
「――っああ!嬉しい嬉しいっ!私、貴女と結婚出来るんですねっ。」
「うふふっ!そうですねっ!!」
「あはははは…!」「うふふふふ!!」
そんな事を言いながら2人で調子に乗って回っていたら。
…ちょっと気持ち悪くなってしまった私達でした。
窓の外にはすっかり夕陽が出ていました。
「わあっ!カーティス様!見てください!外っ!めちゃくちゃ綺麗ですよっ!」
私がそう言うと、カーティス様が笑顔で頷いたあと、そっと唇を重ねてきました。
「ふふっ。」
「…?なんですか?」
私が笑うと彼が訝しげな顔をしました。
「…いつもキスをしたがるのはカーティス様のくせに、カーティス様からキスして下さったのは今日が初めてですねっ。」
その言葉にカーティス様はみるみるうちに赤くなった。
「…っ、あーもうっ!すみませんっ!意気地なしでっ!」
そんな彼に私は笑顔で答える。
「うふふっ、いいですよ。
そう言えばもう少しでカミル様達の劇ですね!午前中は展示で行けなかったので一緒に観に行きましょうかっ。」
私がそう言うとカーティス様が笑顔で頷ずきました、
「…そうですね。では、手を繋いでいきましょうか。」
私達はそっと指先を絡ませ合うと、カミル様達が出演しているという劇を観に講堂へと向かいます。
――こうして私達は無事、婚約者になる事が出来たのでした。




