デレ……??
「ふぅ……」
私は思わず溜息を漏らした。
ーー先程、素も出かけたし、いつまでも『です・ます』ではやりにくいので、普通の言葉でごめんあそばせッ!
それはさておき、収穫祭と言えばもう数ヶ月しか期間がない。
お母様が厳しいダンスのレッスンを始めると宣言したため憂鬱だ。まあ、毎年秋には大きい舞踏会やお茶会シーズンとなるので、各家準備に余念はない。
うちも今更することはないので、新調しているドレスに合わせる貴金属を高価なものに変更するくらいだ。
ただ、いつになくお母様の気合が入ってる……。
自室に戻り、一息ついているが気が休まらない。
カラカラカラ……
小気味の良い回し車の音が耳に入ってくる。
「ふふっ……」
思わず笑顔が漏れた。
回し車で遊ぶのは最近できた友達だ。屋敷に迷い込んできたリスをカゴに入れて飼育し始めたのだ。逃げる気配もなく、よく懐いてくれた。
名前は、ハムハム。我ながら可愛らしい名前でピッタリ。
「……」
「……?」
なんだか、ハムハムがジッーとこっちを見てるような……。
あ、オヤツだな。
よしよし、食堂でなにか探そう。
夕食前で、忙しいだろうからこっそり……。
私は食堂へ向かう途中、
「エヘヘへへ……」
という怪しげな含み笑いを耳にしてしまった。
この声、シンデレラだよね……。
肩に乗せたハムハムもなんだか震えてる。
応接間の扉が少しだけ開き、中からシンデレラの声が聞こえているようだ。
私は立ち聞きが悪いと思いつつ……、
「……エヘヘへ、お母様もウーフ姉さまもデリシアちゃんも私にこんなボロを着せて!」
という怨み言をしっかり聞いてしまう。
え? なに?
私は耳を疑う。シンデレラの言ってることはおかしい。自分で、ツギハギのドレスを仕立ててそれを着ているのに。
グサッ。
ん? なんか刺した?
よく見ると、シンデレラは人形を持っており、それに杭を打ち込んだ。
へ? 怖っ……。
「私に掃除を押し付けて、自分たちはお茶会ばかり……」
グサッ。
いや、ちゃんとあんたにも声かけてるよ?
「食事も碌なもの与えないで……」
グサッ、グサッ。
いやいや、一緒のでしょ!?
「いつも嫌ごとばかり言って」
いやいやいや、何も言ってないよね!?
「いつも見下しやがって」
へ?
「金柑頭なんてアダ名つけやがって〜ッ!」
グサグサグサッ!
……。
それ、少なくとも私は関係ない。
「私が第二王子の妃になって、あいつら全員、追放してやる!」
ヒィィィーッ!
シンデレラ、病んでれらッ!!




