シンデレラ道!
パタッ……。
誰かが倒れる音がしました。
「「……??」」
私たちは音の方を向きます。
そこには一人の娘ーーシンデレラが倒れています。
「あらぁ、シンデレラちゃん! どうしたの!?」
慌ててマツ……お母様がシンデレラを助け起こします。
「……はい、なんだか眩しくて立ち眩みが」
シンデレラは弱々しく口を開いて答えました。
「まあ、それはいけないわ! 休んでないと!」
お母様は慌てて使用人を呼びます。
「あら? シンデレラちゃん、今日もその服なの?」
使用人を呼んだお母様は少し余裕を取り戻し、シンデレラの格好に気が付きました。
シンデレラの格好はツギハギだらけの汚れた服で、近くにはバケツと雑巾が……。
どうやらシンデレラは屋敷の掃除をしてくれていて、私たちのお茶会の場を通りかかったようです。
「私のような薄幸の美少女には、薄汚れた布切れがお似合いです……」
「あらぁ、そんなことないわよぉ……」
「屋敷に置いていただけるだけでありがたいことです。せめてお掃除をするくらい当然なのです」
「そ、そう? 助かるわぁ……。あ、そうそう。今日のお茶は特に美味しいの! 一緒に……」
「私のような味の違いもわからぬ者は、井戸の水をいただけるだけで恵まれております!」
「井戸の水って……。普通に水道の水を使ってね。……それに、うちの家に王家からの招待が届いたの! シンデレラちゃんにも招待が来てるから後でドレスの準備とかを……」
「ああ!! 私のような世界一美しい少女がお城での舞踏会なんかに出たら、意地悪な王妃様に毒リンゴを食べさせられるんだわ! 行きたいけど留守番しなきゃ!」
ーーあんたね? たいがいにしときなさいよ?
私としたことが素に戻り、半分呆れ返っていると、
「……この話は、また今度にしましょうねぇ」
溜息をつきながらお母様が使用人にシンデレラを任せ、お茶の続きを始めました。お茶の続きと言うか、王家主催の舞踏会に向けた作戦会議でございます。
……もう、おわかりのことと思いますがシンデレラは少々思い込みが強く、なぜか悲劇のヒロインポジションをキープしたがるのです。自作したツギハギドレスを着て、大して役にも立っていないのに掃除をした気になって……。
シンデレラ、変な子ッ!!
お母様にも私達にもシンデレラに対する悪い感情はなく、普通の姉妹として接するはずが……。
なんか違うような?




