……これって、収集つくのかしら?
ーーいつの間にか、私が伯爵家の当主とか言われて、家や領地の運用、お母様とお姉様の面倒見てきたつもりだけど……。
ーーお母様やお姉様は、私の認識をひとつ……、もとい、はるか斜め上を行く。
「お伝えしておきますがーー」
トドメ、とばかりにお母様が交易の拡大を発表した。
ーーお母様の小難しい話を要約すると、いつの間にか広大な貿易圏が出来上がっており、その中心がロワール伯爵家とイリタ王国とドネツ王国。
そこを中心にして大陸中の国の経済が回るように形成されていた。しかも、微妙にフランシア王国だけ外されている。
(ーーフランシア王国の経済が、立ち枯れしちゃう……)
貿易圏は既に動き出しており、奔流には抗えない。
各国の首脳による協定が宣言される日程まで調整されつつある。フランシア王国だけ除け者だ。
もともと、お母様は伯爵家に嫁いで来て、伯爵家の財政を数倍の規模に引き上げた。その他、自分でも事業を立ち上げて国でも有数の資産家になった女傑……。
誰が呼んだか【マダム・デラックス】。
……本気になれば、各国を主導するほどの手腕を発揮できるのね。
これには居並ぶ貴族たちが魂を飛ばした。国益を損ねるどころか、国が成り立たなくなる。貴族たちの動きが怪しくなる。自分たちの付け入る隙を探し始めたのだ。
「…………この! このぉーッ!」
そしてついに、第二王子が臨界点に達した。
追い詰められて、更にそこから最悪の状況を突き付けられたのだ。あとは爆発するしかなくーー。
「衛兵ィッ! ロワール伯爵家の者共とイリタ王国の使者を語る偽物を捕えよ! 捕らえよ! 捕らえよぉぉーッ!!」
恥も外聞もなく喚く。
流石にそれは不味いという空気が流れ、誰しもが動けないでいる。王の間に近侍する衛兵も、戸惑う様子を見せるだけだ。
「どうしたのだ!? 捕らえよ! 捕らえよーッ!」
喚き続ける第二王子。
(ーーこれ、どう収拾をつけるのかしら?)
私は、他人事のようにそう思った。
呆然と事態の流れる方向を窺っていると、
「待てーッ!」
と待ったの声が。
王の間に、新たに現れたのはーー。




