表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/39

お姉様ーー!?

 お母様は、マツコ=デ○ックスにしか見えない巨体を揺すりながら私に話しかけてきます。


「今日は風が気持ちいいわぁ。そうだ、午後のお茶はお庭でいたしましょう」


 なにやらご機嫌のお母様は、窓の外を見てお茶の提案します。


「ええ、そうしましょう」


 私もそれに賛同しつつ、


「なにか良いことでもあったのかしら? とてもご機嫌で……」


 とお母様の顔色を窺います。


「フフ、後で話すわ。それにしても、今日は風が気持ち良いわぁ」


 お母様は終始ご機嫌です。

 おそらく、高位貴族の家で開催されるお茶会にでも招かれたのでしょう。

 《侯爵家》などのお茶会は伯爵家では滅多に招待されず、ましてや《公爵家》ともなると余程のことがない限り情報すら入って来ません。



 ――それにしても、昼下がりの風が気持ちいい。

 五月のうららかな陽射しに、心地好いそよ風。

 お庭でのお茶は心を弾ませます。

 思わず頬を緩ませたところ、


「で、あるか」


 と低い声が異様に響きます。

 ――こ、この声は。


「あらぁ、ウーフちゃん」


 と、お母様が一際嬉しそうな声をあげます。

 現れたのは、ウーフお姉様。

 小柄な美女ですが、やや痩けた頬と神経質そうな表情で、やや近寄りがたい雰囲気です。

 そのお姉様、口ぐせは『で、あるか』なんです。

 額に青筋を立てている時は迂闊に近寄れません。

 なにか粗相があれば、手打ちにされそう。


「……」


 なんとなく、ソワソワしてしまいます。


「デリシア、なにを浮き足立っておる? 淑女たる者、まずは落ち着けい!」


 すると早速、お姉様の厳しい叱責が。

 青筋ピキピキ怖い。


「は、はい、ノブナガ様! じゃなかった、お姉様!」


 思わず、直立不動になる私。


「ノブナガ……? なにを言っておる!?」


 言い間違いに、怪訝な表情を見せるお姉様。


「ひ、ひぃっ」

「……身に付かぬのなら、身に付かせてみせよう淑女作法」


 ヤバい! 目がマジだ!


「まあまあ、お茶を始めましょう」


 お母様が、とりなしてくれます。

 ありがとう! マツコ様! ……じゃなかった、お母様!



 お母様が使用人にお茶の準備を頼み、手際よく支度が整います。

 用意されたお茶は、香りが薄いものです。

 いつもと違うもの?

 私はゆっくりとカップに口をつけます。


「……!?」


 このお茶は砂糖とミルクを入れていないのに、まろやかで甘味があります。

 しかも、口に含んでから良い香りが立ちます。

 お茶が美味しい……。


「ふむ。美味、である」


 お姉様も唸ります。


「そうでしょう」


 お母様がにっこり微笑みます。

 あら、お母様の機嫌が良かったのは、このせいだったのかしら。


「あなたたちに、良いお話があるの」


 ニコニコ顔のお母様が話を切り出します。

 なんの話でしょう。


「このお茶は王家から頂いたものなのよ」

「王家、であるか?」


 お姉様が聞き返します。

 私も思わずビックリ。

 王家からお茶をもらえるなんて?


「ええ、これは招待状に添えられていたもの……」


 お母様が言葉を区切ります。

 招待状?

 グッと両手を握り締めたお母様がピカッと目を光らせます。

 ま、眩しいッ!


「今年の収穫祭に合わせて、舞踏会が開かれるの! そこでは伯爵家以上の令嬢が集められ、第二王子様の結婚相手が探されることになっているのよ!」


 鼻息荒く、立ち上がるお母様。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ