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援護射撃、その2! ただし、私にもダメージが……

 王の間に、透き通った声を響かせて現れたのは、白銀の鎧姿の美丈夫。

 ーーというか、白銀の令嬢である。


(……え? ええ、ええ??)


 儚げで可憐な令嬢が鎧姿という『萌え〜』な登場をしたのは、ウーフお姉様……だよね? 姫騎士として名高いミコト様顔負けの鎧姿で、かなりのインパクト。いつもと声まで違うから、私は『へ? 誰だよ』としか感想が出ない。

 いや、しかし『受けて立つ』は不味いのでは!? 王家とまともにケンカなんて出来ないでしょ!?


「ウーフ? ウーフか!? なにを申すか。伯爵家だけで王家と争える訳がなかろう!」


 第二王子も口角泡を飛ばす。

 ……話の腰をおるようだけど、ウーフお姉様だと良くわかったわね? 


「恐れながら、我が家はイリタ王国と誼を結んでいます。独立の際は、イリタ王国からの全面的な支援を受けることになるでしょう」

「なななな? なんだと!?」


 ウーフお姉様の言葉に、第二王子が目を白黒させる。

 隣国イリタ王国からの支援!? そんな、いつの間に?

 ……にしても『うつけ姿』からの変身がヒドすぎて、若干展開についていけないんだけど。

 ーーあ、王の間の外がチラリと見えたけど、直立不動の姿勢で鎧姿の騎士たちが控えている。あれって、領地でお姉様が子分みたいに付き従えてた荒くれ者たち!? これみよがしに姿が見えるけど、普通の騎士に見える!


「また、私の方でもドネツ王国からの支援を取り付けておりまして。イリタ王国の王太子妃となるウーフに比べれば控えめになりますが、交易の条約も進めております」


 横からサラッとお母様が発言。


「は?」

「へ?」


 第二王子の間抜けな声に、私も変な声を被せてしまった。

 なん…だと? イリタ王国の『王太子妃』ってなんだ?


「なにを申すか! 勝手に条約だと!?」


 更に声を上げる第二王子。

 いや、それもだけど。まず『王太子妃』に反応しようよ。国をすっ飛ばして伯爵家だけで他国の王太子に嫁ぐなんて出来ないのでは? どうなってんの?!

 条約は交易に限って言えば、やれないことはなかったような?

 あ、そう言えば、お母様とお姉様が事業としてやっていたのは交易で、お母様はドネツ王国に対して医薬品を。お姉様はイリタ王国に食料支援を行っていたんだった。

 これは、それぞれ災害の発生したドネツ王国と飢饉で苦しんでいたイリタ王国に対するもの。それぞれ迅速な対応を求められ、自分とこのフランシア王国への報告は遅くなった……。そこを突かれてお母様とお姉様は事業を潰された。

 医薬品と食料は、うちの領地の特産品で豊富に用立てることができる。苦しい人たちに融通するのは、人道的に寄り添うことだと思う。それなのに、事業ごと潰されるのは憤懣やるかたない。

 ドネツ王国とイリタ王国からは感謝されているのは確かである。

 ……しかし『王太子妃』ってなに?! 私、なーんも知らないんだけどぉーッ!?


「ホホホ。王国が永代の約定を違えるのならば、我が伯爵家は心苦しくはありますが、独立いたします」


 お母様が第二王子を見据えて言い放つ。

『な、ななな、なに?!』とか言いながら顔を青くしたり赤くする第二王子。

 ちょっと面白いんだけど……。


(本来ならば、私も振り回されたようなもんだから、怒ってもいいような……。でも、駆けつけてくれて頼もしい)


 私はお母様とお姉様に感謝の眼差しを向ける。


(んん!?)


 改めて二人を見て、私はあることに気付く。お母様の周囲に陽炎が……。額にも青筋が……。怒りで体温が上昇してる……? 

 お姉様に至っては紫色のオーラが漂っているような……。第六天魔王の覇気? 

 これは、二人とも激オコなのね。

 ……つまり、今まで溜めてた恨みを晴らしにきたのね。私を助けに来たと言うより、やられた仕返しに来たと。まあ、いいけど……。


「ええい! なにを言うか! 王家に対する反逆罪を問うぞ!? それにイリタ王国の王太子妃だと!? 片腹痛い! イリタ王国の使者でも連れて来て証明してみよ!」


 第二王子が喚き散らす。もう顔が変わって、誰かわからないくらいどす黒い顔をしている。人間、追い詰められると本性が出る。どうやら、第二王子の本性は小悪党のようだ。


「承りました。イリタ王国の者を、今、この場に呼びましょう」


 良く通る声とともに、お姉様が第二王子の方へ数歩進み出る。鈴のなるような声質は耳に心地良く、しなやかな肢体は輝く鎧を纏っていても隠しきれない。いや、無骨な鎧が逆にお姉様の容姿を引き立て、秀麗な絵画のようだ。

 心地良い声を聞きたいーー、麗しい姿を眺めていたいーー。そんな気持ちになるだろう。


(というより、お姉様ーー。声まで変わってーー)


 私の心のツッコミは誰にも届くことなく、お姉様は王の間の入口へ向き直る。


「失礼。イリタ王国王太子のトネリアルツォーノ=ピーター=セルジと申します。この度は、フランシア王国の皆様に挨拶ができて嬉しく思います。ただ、非公式な訪問のため、手短に先程の証明だけ済ませたいと思います」


 入口から現れたのはお姉様と同じ白銀の鎧に身を包んだ一人の騎士。

 爽やかな容貌からハスキーボイスが魅力的ではあるが、この人って確か領地でお姉様と一緒に汚い格好で果物囓ったり、馬に乗ったりしてた人ぉぉーッ!


(一国の王太子なんかいッ!)


 盛大にツッコむ私。ただし心の中で、だが。

 ーーきっと、イリタ王国にもお姉様みたいな人がいたのね。それが王太子なのね。そして、ひょんなことから(食料支援のお礼かも?)伯爵領に来て、お姉様と意気投合したのね。


(……イリタ王国って、大丈夫かしら?)


 白目になって他国のことを心配する私をよそに、イリタ王国の王太子ーートネリ様は自身の身分を持ち物で証明し、正式にウーフお姉様と婚約をしていることを宣言した。非公式の訪問ではあるが、一国の王太子の発言は正式なものとなる。ウーフお姉様はイリタ王国の王太子妃となることが確約された。


 ーーもう一度言う。

 ーー私、知らなかったんですけどぉぉーッ!

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