表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/39

援護射撃

 凛とした張りのある声ーー。

 王の間に突如として現れたのは、華やかな装いの貴婦人だ。

『突然、誰だ』と貴婦人に視線が集まる。


(ーーん?? んんん?!)


 私は思わずガン見する。

 現れた貴婦人は、シュッとした顔立ちでスラリとした立ち姿、佇まいからは匂い立つようなツバキを連想させ……って、お、お母様?!


「この度は『立太子の儀』おめでとうございます。その儀に推参、まことに申し訳ございません。ロワール伯爵家の前当主として、お慶び申し上げます。また、我が娘、デリシアの不手際についてお詫び申し上げます」


 優雅に礼をする、お母様……?

 マツコ・デラックスのようだったお母様が、やつれて凛とした貴婦人になってしまった。確かに身体もスッキリしたが、華やかに装い、キリリとした表情をすれば周りを威圧してしまう。

 ーーしかし『わーい』とか言ってるお母様は、いずこへ!?

 第二王子も面食らっていたが、ハッと威儀を正す。


「……うむ。祝いの言葉、受け取っておこう。ロワール伯爵家に対する処分は言い渡した。あとはデリシア共々、静かに暮らすが良い」


 第二王子はお母様に言い、胸を反らした。

 威厳を出したかったのか、逆に滑稽だ。居並ぶ貴族たちは成り行きを見守っている。シンデレラは険しい表情だ。


「ありがとうございます。ーーしかし殿下、ひとつだけ申し上げます」

「ふむ? なんであろうか」

「はい。領地についてですが、我が伯爵家の領地は王家との取り決めにより、永代独立不羈を認められております。管理については、お断りいたします」

「な? なに?」

「このことについては国王ともお話がついており、いかに殿下の発案と言えども、お受けできません」


 きっぱりと言い放つお母様。


「……」


 成り行きについて行けない私。

 ーーそう言えばそうだった? 今の領地は、我が家の先祖が切り取り自由と言われ、本当に切り取った領地だったか……。それまでの領地については、王家に返上したのだとか。

 第二王子に近侍していた執事が『なんだと!? そんなことが認められるか』などと口走る第二王子に耳打ちしている。事実を説明しているようだ。


(もしかして、とりあえず領地は安泰?)


 私が成り行きを傍観していると、目を白黒させていた第二王子が眦を吊り上げた。


「駄目だ! 許さん! そのような取り決めは廃棄する」


 指を差して喚き出す第二王子。

 お母様は平然としているーーというか、笑みを浮かべている。


「そう仰るならば、我が伯爵家は独立いたします」

「ーーは?」

「今の領地は我が祖が切り取ったもの。王家の介入はお断りいたします。これ以上無理を通されるようならば、独立いたします」

「…………」


 お母様の発言に、第二王子は口をパクパクさせている。

 私もついていけない。そんなん大丈夫なの?

 王家にケンカ吹っかけてる!?


「何を言うか! 許されるわけがなかろう! 独立などしたら、伯爵家ともども討ち滅ぼしてくれる!」


 第二王子が地団駄を踏む。


(ーー領地に兵を向けられるのは不味い!)


 内戦なんて、犠牲がどれだけ出るか。私が間に割って入ろうとしたとき、王の間に更なる乱入者が。


「受けて立ちましょう。我が伯爵家は屈しません」


 王の間に現れた乱入者が透き通った声を放つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ