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お茶会

 そして、お茶会の日は一ヶ月後となった。

 場所は王宮の庭である。

 ーー王宮の庭には色とりどりの花が咲き誇り、絶妙な配置で樹々が植えられている。風雅かつ居心地の良い造作物を拵えた一画である。

 豊かな芝は晴天の元で青く輝き、通る風は爽やかに頬をくすぐっていた。



 ……はい、私ことロワール=ソーヌ=デリシアはかの有名な【王宮の社交庭園】に来ております!


(ヒイィィッ……! なんで私まで!?)


 舞踏会に勢いで参加した一ヶ月後、私は王家のお茶会に来ていた。参加しているのは妙齢の令嬢方ばかり。

 我が家で招待されたのはウーフお姉様ともう一人、シンデレラ……ではなくて私でしたー!

 なんで?? 第二王子とろくに挨拶もしてなかったのに……。

 軽くメダパニ(?)状態ッ!

 家を出るときのお母様の満面の笑みと、シンデレラの余裕の表情が忘れられない……。

 お母様はともかくーー、シンデレラ、なにか企んでる……?



 それは一旦置いておく。

 ……場違いな私は、目立たないことを第一に、ひっそりと時間が過ぎ去るのを待っているのだ。

 アウェイ感半端ない。なにしろ、ここにいる参加者で伯爵家からは我が家だけ! 他は公爵家、侯爵家ばかり!

 ーーそうだった! ここは、総勢五十名の令嬢方が集いし……戦場なのだ! 

 しかも、私の交友関係にある『ザ・壁の花ーズ』が誰一人としていないのだ! 

 ……というか、壁自体がないーッ! ヒイィィッ!


「……うぅ」


 私は痛む胃を押さえて、お姉様を目で追うと、公爵令嬢方と話に花を咲かせていた。

 少し見ていても淑女作法は完璧で、しっとりとした令嬢に見える。第二王子とはご学友の間柄でもあるし、舞踏会では見事なダンスまで披露しているため、一目置かれているようだ。

 おまけに、背景に百合の花が見える。ヒイィィッ、猫かぶりモード発動中!

 本当に、誰だよ……。



 ーーひとしきり騒ぐ(心の中で)と喉が渇く。

 芝の上に設置されたテーブルで紅茶を注いでもらう。上質な香りを楽しみつつ、談笑の合間に一息ついている風を装う。

 ……人見知りして、誰とも話してませんが、なにか?

 私の視界の端には、男装の令騎士『姫騎士』ミコト様が令嬢方に囲まれ、『爆音ピアノ連弾』シフォン様が熱い情熱的なピアノ演奏をしている姿があった。


(あ、次はピアノを聴くフリして時間を潰そう……)


 などと姑息なことを考えていると、


「やあ、楽しんでいるかな、デリシア嬢」


 と、声をかけられる。

 どこの令息か、と思いきや第二王子だ!? 内心慌てつつも挨拶をしておく。第二王子の脇には、付き添いの令息方もいた。

 私に突き刺さる令息方の視線が痛い。

 当たり障りのない会話をしつつ、無難に対応しておく。


「……今日は、レイラは一緒じゃないのかな?」


 あ、『レイラ』ね。シンデレラのことだけど、一瞬誰かわからなくなる……。


「はい、本日は家で過ごしております。舞踏会では過分な饗応にあずかり、感謝しておりました」

「そうか。ではデリシア嬢も楽しんでいってくれ」


 と第二王子は微笑みを残し、令息たちを引き連れて別なテーブルへと挨拶に行く。

 私はコソッと溜め息をつき、紅茶を飲み干した。

 ピアノの場所へ移ろうとした時、モゾモゾ動く気配がドレスの中からする。

 なんぞ? ……て、ハムハムがまた忍び込んでる!? 

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