黒い……
シンデレラの部屋の扉が開いているーー。
ハムハムは吸い寄せられるように室内へ入ってしまった。
(まずっ……)
さすがに、勝手に部屋には入れない。
ハムハム……。どうして急に……。
シンデレラはもう出発している。シンデレラにお願いして、入らせてもらうこともできない。
「ハムハム〜! 出ておいで」
呼びかけても出てくるはずもない。
ガシャン、
パサパサ……、
ガン、
(なんか、危険な音が聞こえる〜!)
私は思わず中に入った。ハムハムを探して、早急に出よう。
シンデレラの部屋の中は簡素だった。ベッドに机、棚には可愛らしい小物もない。よく見れば、本も参考書の類しかない。
(なにコレ!? なんか、ロボットみたい……)
私はうすら寒くなった。シンデレラ、感情があるの!? 趣味とか志向が読めない。
ガサガサ……
あ、ハムハムかな。ベッドの下みたいだけど。
私は屈んでベッドの下にハムハムがいないか確認する。
いた! ハムハム……ん?
ベッドの下にはハムハムがいた。しかし、そのハムハムは黒い表紙の本の上に乗っている。
ハムハムが乗っているため、ハムハムごと本を取る。
(これ……!? なんか嫌な予感がする本なんだけど……)
私はハムハムをポケットに入れると、床に座りこんだまま黒い本をめくる。
【黒魔術 巻の三】
はい、これアウト!
私は内表紙に書いてあった題名に思わずのけ反る。
なにコレ、ホント冗談みたい、とページをめくると、オドロオドロしい呪いの数々が。
しかも、手書きの注釈みたいなものが書かれている。
いや、注釈というより……、
『相手を豚に変える魔術ーーお母様にピッタリ! あ、もう魔術かける必要ナイカ〜(笑)』
『全員アヒルになる魔術ーー全員アヒルにしてやる。そして丸焼き!』
『○月○日、私を見下した目で見た。得意の釘刺し魔術で呪う』
『リスの呪い』
『使用人たちもバカにしやがって』
『記憶改竄の呪いーー記憶を操ってやる』
なんて書いてある! サイコ!
『相手を自分に惚れさせ、操る魔術ーーバカな王子に魔術をかけ、操ってやる! バカな母娘を平民に落としてやる!』
って、これ私たちよね? 平民に落としてやるって……。




