ハムハムの
結果ーー。
私は、お城の舞踏会の参加を見送ることになった。
当日の不参加のため、会場でお母様が取次役の者に事情を説明する。
理由は突発的な発熱、とでもなるはずだ。
以前着用したことのあるドレスで参加も検討したが、周りには使い回しが必ずバレる。そうすると、家の不評が立ち、今後に響いてくる……。
今回、第二王子が駄目でも我が家には今後があるのだ。不評は避けたいーー。
私はお母様の意を汲み、舞踏会の参加を見送ることにした。
(しかし、それはそれで一息つけるかも)
私は大して落ち込んでいない。あまり派手派手しい場は好まない。それに、第二王子などと万が一親密になってしまうと窮屈そうだ。
伯爵令嬢くらいがちょうど良い。
お母様には内緒だが、それなりに今の生活を満喫しているのだ。
ただ、世界の狭さには辟易するものがある。
色々な国があり、色々な人がいる。
ーーどうして、お茶会だけの日々に満足できようか。
(ふう、近場に行くだけの旅行が関の山ね)
ポッカリと穴が空いたような、飛べない籠の鳥にでもなったような虚無感に襲われる。
(ーー悪役令嬢転生してしまった!)
などと騒いだが、それがなんなのか。
前の世界では、可能性が無限に広がっていた。未知なる世界は、飛び込むものに対して等しく平等だった。今になってわかる。
与えられた現状に甘んじることなく、もっと自分の力で立てば良かった……。
(虚しくなる……)
私はハムハムに話しかけながら、無力感に浸る。頭ではわかっていても、同じことを繰り返していないか?
無力? それって、なにもしていないだけの無気力ってことと同じではないか?
(違う! 私はただの一令嬢で、世間に抗うだけの力はない。この世界では、人生なんて生まれたときからきまってるんだから)
なんだか、腹立たしい。なんでこんなことを自分で考えるんだろう……? 親から与えられたものをただ甘受する……。それでいいはずだし、恵まれた環境で幸せだ。不平を言えばバチが当たる。
カラカラカラ……
その時、回し車で遊びだしたハムハムが、急に部屋の中を走り始めた。私があっと思うまもなくハムハムが部屋の外に出ていく。
(扉が開いてた!? 追いかけなくちゃ!)
使用人たちが、少ない時間の屋敷を私は走った。ハムハムは、シンデレラの部屋の前にいた。シンデレラの部屋の扉は少しだけ開いていてーー。




