001 プロローグ
周りには青々とした森が広がる、都会の喧騒からは遠く離れた小さな村の端っこに、その牧場はありました。
広々とした畑、小さい池もあり、決して大きくはないけれども一人で生活するなら十分な大きさの家だってあります。
しかしながら、かつての牧場主がここを去ってからはや数年が経っていました。
作物を育てていただろう畑は雑草が生い茂り、牧場の片隅にある家には蜘蛛の巣が張っています。
かつては美しく立派な牧場だったであろうここは、今では廃墟さながらの様子でした。
「ここが今日から君の住む家だ。この牧場の中なら君の好きにしていい。」
麦わら帽子をかぶった翁がそう言いました。
「ありがとうございます。案内していただき助かりました。」
スーツを着た青年がそれに答えます。
青年の手にはスーツケースがあり、背中には大きなリュックも背負っていました。旅行と言うにはあまりにも荷物が多く、彼がここに越してきたことがうかがえます。
翁は青年の返答に対して軽く笑い、彼の背中をトントンと軽く叩きました。
「そう固くならなくていい、これからは同じ村の住民じゃないか。全員合わせたって50人もいない小さな村だ。嫌でもお互い助け合って生きていく必要がある。とは言っても、無理に合わせなくたってもいい。まずは落ち着くまで、君のペースで、君の好きなように生活したらいい。」
青年はその言葉に少し考えた様子でしたが、躊躇いがちにこう答えました。
「……できるだけ早く、皆さんのお力になれるよう頑張ります。それまでは色々とご迷惑をおかけすることになるかもしれませんが……。」
「ハハハ。都会からこんな田舎まできたんだ。緊張するなというのは無茶な話だったな。さっきも言ったが、大事なのは君が好きなように生きることさ。別になにか失敗したからと言って死ぬなんてことはない。牧場主の仕事は決して楽ではないだろうが、君ならできるさ。さて、私はそろそろ家に帰るが、なにか知りたいことがあればいつでもきなさい。」
「フォークさん、ありがとうございました。」
翁、フォークは青年の背を再度叩きながら、ゆっくりと去っていきました。
青年はしばらく去ってゆくその背中を見ていましたが、やがて家へと振り返りました。
「……ここが新しい家か。」
ぽつりと、青年がつぶやきます。
「最初は家を掃除して荷物の整理、次にすべきは畑の整備か?」
キイキイと軋むドアを開けながら青年は考えます。
(……いや、自分の名前を知ることから始めよう。)
そう考えながら、青年は家へと入りました。
牧場物語やStardew valleyをプレイして、スローライフ系の小説を書いてみようと思いました。
小説を書くよりも読むことが好きで、同じくらいゲームが好きです。
なので続くかどうかは不明ですが……気長に頑張っていきます。