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デストロイヤー

 先に言っちまうぜ。

 これは、学校ぼくじょうとかでは絶対教えてくれない重大な事実にして真理なんだけど、こういう数的不利となる多対戦にはコツってものがあるんだ。

 まあコツとは言っても、そう難しい事じゃあない。コツを要約するならそいつは二点に絞られる。

 一つ目に先制攻撃すること、二つ目に絶対に手を抜いた攻撃をしないこと。

 端的に言うと、このたった二つのルールを守ればいいだけだ。

 どうしてそれが真理なのかと問うならば、それはこれから分かるってものだ。


 俺は手前、右手側から躍りかかってくるちょっとクレイジーな目つきをした男の頭に力一杯チェーンをぶつけてやった。そりゃあもう、頭蓋を割ってやるって勢いでな。

 そうしたらこのクレイジー野郎、前に倒れ込むようにして崩れて行くから、俺はすかさずこいつの顔面へと前蹴りを叩き込んでやる。そうだ。そりゃあもう、猛烈に駄目押しの一撃をお見舞いするのさ。


 手前、左手側からも醜男ぶおとこが襲い掛かっては来ていたが、流石に構う余裕はないから一発くらいは殴らせてやる。

 けれど、全く容赦のない俺の攻撃を見ちまった後ろにいる二人のクソは、やや腰が引ける格好になっていた。

 おまけに言えば、開幕から崩れ去るクレイジー野郎の芸術的なやられっぷりに、今しがた俺を殴った醜男の奴も、一瞬だがぎょっとしたような顔をしやがる。

 こういう展開に出来れば、後は簡単イージーだ。勢いに任せて一気呵成いっきかせいよろしく攻めて行きゃいい。

 もしもこの方法に補足する事があるならば、この後、優勢になったとしても絶対に容赦というものをしてはならないって事だけだな。


「このっ、渋滞野郎ッ――」


 続けて俺を殴ろうっていう醜男が腕を振り上げた瞬間、俺は右手で奴の鼻を掴んでやる。

 このまま鼻を面白い形にしてやっても良かったが、この醜男の奴、呻いて俺の右手を掴むもんだから、空いた左腕の方を振り回して顎を砕いてやった。

 俺はそのまま腕を取り、顔と同様に醜い体を後ろの腰抜けの一人めがけて、プレゼントとばかりに投げ飛ばしてやる。

 ここで、いよいよ後がなくなってきたという顔をしているもう一人の腰抜け野郎が懐から刃物なんか出すが、俺は奴が構えるよりも早く駆け出して体当たりを決めてやり、身を翻して今しがた、俺からプレゼントという名の暴力を受け取った腰抜けに対応する。


 こういう事態に腰が引け、恐れを感じ始めた奴の精神ハートは売れ残りの豆腐くらいに脆い。

 大規模な災害なんかの時と一緒だね。度胸のない奴、危ない橋を渡る事に慣れていない奴からパニックを起こし、危機的状況に上手く対応出来ない。

 俺はパニック野郎を激しく殴り付け、歯を二、三本飛ばしてやり、さあこれからが本番だ、なんて思っていると、暗がりからもう一つの大きな影が現れた。


「ちょっとまあ、待ってくれ。待ってくれって、お兄さん」


 出て来たのは牛みたいな大きい体に蛙のような目をした、いやに体臭のきつい男だった。

 そのすぐ後ろには流星シューティングスターの姿も確認出来る。

 弟の無事な姿を見た綺羅星ちゃんが安堵の顔を見せると、俺は手を止めた。

 すると、突然出て来た牛野郎は両手を上げたポーズをして続ける。


「いや、参ったぜ。降参するよ、お兄さん。これ以上、こいつらぶっ壊されたらこっちもたまらねえんだ。白旗を上げる。それにしても――」


 牛野郎はがたがたと震えている包帯巻きの売人をじろりと睨んで続けた。


和久井わくい君さ、俺は聞いてないぞ。こんなに強いお兄さんだったなんて、俺はとんと聞いてなかったぜ」


「いやいやっ、私も、私だって、こんなに危ない奴だなんて想像も出来なくって」


「和久井君。情報は正確に寄越さなくちゃならないもんだぞ。情報っていうのはな、お前の持ってくる腐りかけの商品以上に貴重で、懐を潤してくれるオアシスのような物なんだ。どうも和久井君は、俺たちとの取引相手となるには力不足というか、脳の容量が不足しているように見える」


「そ、そんな!俺だって、人の山をかき分けちゃあ、方々を走り回って……」


「ああ、いいんだ。物を集めるしか取り柄のないお前を責めてる訳じゃないんだ、和久井君。俺はお前の頭の出来の方を責めてるだけなんだよ。これは、普段のお前の仕事ぶりとはまた別の問題なんだ」


 牛野郎は勿体付けたような、のろのろとした動きで和久井と呼ばれた包帯売人の元へ近寄ると首根っこを掴み、俺の方をちらと見て言う。


「俺はこの辺の顔役をやってる牛鬼ギューキのまとめ役、牛浜ウシハマって者だ。さっきも言ったように白旗上げるぜ、頭のネジが飛んだお兄さん」


 蛙のような目で笑む牛浜が腕に力を込めると包帯売人は、ぐえっと妙ちくりんな呻き声を漏らす。

 それと同時に青い顔をしていた流星シューティングスターが目でも覚ましたようにして姉である綺羅星ちゃんの元へと駆け出した。


「流星っ、あんた、怪我はない?何もされなかった?」


 言いながら弟を抱え込もうとする綺羅星ちゃんであったがー。

 俺はこの時、流星シューティングスターの取った行動に仰天した。

 助けられた流星シューティングスターは差し出された姉の手を取る事はなく、敵方の方へ向き直るとファイティングポーズを取り始めたからだ。

 そんな弟の無謀な様子を見る事になった綺羅星ちゃんの方は啞然としたような顔をすると、ほとんど怒鳴るようにして弟へと言葉を放つ。


「何してるの、流星!馬鹿な真似してないで早く私の後ろに隠れなさいよ!あんな奴は弦次郎に任せておけばいいんだから。大体、あんたが強がって見せたって、どうせまた――」


 綺羅星ちゃんがそこまで言ってから、俺は続く言葉を切るようにして仕切り直す。


「で、その牧場野郎が白旗上げたから何だって?自分テメエの乳でも搾って牛乳ミルクでも振る舞おうって言うのか?お前は俺のために何をしてくれるんだい。なあ、体臭のきつい敗北者ルーザーよ」


 すると、牛浜とかいう野郎は、みるみる内に顔を赤くしていく包帯野郎の首元を掴んだまま言葉を返してくる。


「話が早くて助かるよ、頭のネジが飛んだお兄さん。

 いや、破壊者デストロイヤーとでも呼んだ方がいいのかな」


意味深な笑みを漏らす牛浜は、話をしようと続けると、誘うように奥へと歩き出した。

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