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第二十三話 赤と白


「ここが――」


 ドックに不時着した俺たちは、竜牙騎兵から降りる。

 巨大な竜の骸骨にしか見えなかったが、さすがは月サイズ。

 その中はまさしく宇宙要塞だった。


「隠れて!」


 師匠が言う。

 そこには竜牙兵たちがいた。


 白い。

 彼らは俺たちの乗ってきた竜牙騎兵を見上げる。


「なんだこれは」

「戻って来たぞ」

「でも中に何も乗ってねーぞ」

「壊すか?」

「壊そう」


 物騒な事を言っている。

 そして彼らは、俺たちに気づいたようだ。


「おい、貴様ら」


 竜牙兵が一体近付いてくる。


「動くな」


 師匠が、光刃を向ける。


「なんだお前らは?」

「……ボク達は勇者だよ」

「勇者だと? どこだ」

「ここだ」


 俺は手を上げる。


「勇者? どこに――ぐあっ!?」「どうした?」


 俺に気を取られた瞬間に、師匠が光刃を振るう。その一撃で竜牙兵の首は落ちた。


「勇者だ勇者だ」

「やべーぞ逃げろ」

「馬鹿、俺たちは白血球だぞ、迎撃しねーと」

「じゃあ俺白血球やめるめるわ」「やめんじゃねえ殺すぞ!!」


 竜牙兵が騒ぎ出す。

 騒いでいるうちに俺たち二人でとっとと全滅させたわけだが……


「さわぎすぎだよね、これ」

「ああ」


 騒ぎを聞きつけて、白血球竜牙兵たちがわらわらとやってきた。


「とにかく逃げないと、いくよショウゴくん」

「あ、ああそうだな師匠」


 俺たちは、騒ぎ立てる白い竜牙兵を後目に、走り出した。


***


「はぁ……はぁ……」


 俺は走る。

 どこまでも続く螺旋階段を駆け上がる。

 背後からは、無数の足音が聞こえてくる。


「はぁ……くそっ……」


 俺は立ち止まり振り返る。そして、追ってくる白い竜牙兵たちを睨みつける。

 だが、


「あちゃー。しまったなこれ」


 師匠が言う。

 螺旋階段は行き止まりだった。


「よーし、もう観念しろ異物ドモ」


 白い竜牙兵たちが銃を構える。

 俺は息を整え、竜牙兵たちに問いかけた。


「お前たちの目的は何だ……? どうしてこんなことをしている……?」

「……」


 返答はない。

 こいつらは喋っていた。だったら話が通じるのかもしれない。


 竜牙兵はお互いをみやる。


「俺たちは異物の迎撃してるだけだぞ」

「攻めてきてるのお前らじゃん」

「ただの白血球だしな俺ら」

「そうだよな俺ら」

「うん、白血球だよ俺ら」

「白血球!!」「白血球!!」「白血球!!」


 そして白血球竜牙兵たちは銃を構えてくる。

 だめだ、話が通じるようで通じない。

 白血球――なるほど、体内に侵入した異物排除をプログラムされているっていうわけか。


「どうしよっか」

「逃げ場はないし……」

「よし、跳ぼうショウゴ君」

「へ?」


 そう言うと。

 師匠は俺の首ねっこを掴み、螺旋階段から飛び降りた!


「うわあああああああ!?」

「待て!!」「逃がすな!!」

「殺せ!!」「殺せ!!」「殺せ!!」「殺せ!!」


 竜牙兵たちが進軍してくる。

 さすがに連中は飛び降りたりしてこないが、螺旋か階段を銃を撃ちながら降りてくる。

 その攻撃を俺と師匠はアエティルケインの光刃で弾きながら、とにかく走る。

 どうすれば――


「あっ、戻ってきちゃった」


 師匠が言う。

 走ってきた先には、さっき乗ってきた竜牙騎兵があった。

 このまま数にあかせて追い出す気か。

 いや――


「これに乗ろう」

「だね」


 俺と師匠は再び、竜牙騎兵に乗り込む。


「もう少し付き合ってくれよ……!」


 俺は竜牙騎兵に乗り、宇宙要塞を歩く。


 細かく入り組んだ通路を進むと、前方から声が響いてきた。


「おっ、なんか見つけたぞ」


 竜牙兵が俺の前に来る。今までのと違い、赤い。


「お前は何者だ? ここに来るの情報にないけど」


「……」


 こいつは、会話が通じるのだろうか。


「まあ、だめだったら強行突破ってことで」


 師匠が言う。そうだな。


「俺は――」


 俺は答える。


「ショウゴ・アラタ。宇宙勇者だ」


 竜牙兵は首を傾げる。


「なんだその名前」

「……ここにきて竜牙兵に名前突っ込まれるとは思わなかったよ。

 いやたしかに、名前の響きが普通とは違うだろうけどさ。日本人だし」

「確かに響きがちょっと違うよね。似た響き名前持つ星もあるけどさ。東の辺境の星、ヒーヅールとか」


 師匠が言う。だが、赤い竜牙兵は俺の言葉に反応した。


「日本人……だと? それは失われた言葉のはず。なぜ知っている」

「……」


 どうしたものかなこれ……。まあ正直に話してみるしかないよな。


「信じられないだろうが聞いてくれ。俺は普通に生まれて生きてきた人間じゃない。

 一度死んで、転生したんだ。スノウっていう宇宙エルフに、遺跡から召喚された」


 そして――こう答えた。俺たちの言葉で。


「俺は令和の日本で生まれた、新田祥吾っていうんだ」


 その言葉に。


「おお……」


 赤い竜牙兵は、震えた。


「戻ってきた。戻ってきた。我らの創造主、古代アーシアン、地球人だ」


「創造主……?」

「アーシアン……?」


 俺と師匠は顔を見合わせる。


 そして彼は、語り始めた。

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