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「来た、ついにこの日が…」
今日は花咲学園高校の入学式。私が高校生になる日。そして、とある少女漫画の原作がスタートする日である。
その少女漫画は、私がこの世界に所謂転生する前に生きていた世界で読んでいた少女漫画。最終回を迎える前に私は多分病死をしてしまったのだと思う。
元々病弱な身体で外にも滅多に行けない私がハマったのが少女漫画。私もいつかは漫画のヒロインみたいに素敵な男の子と恋に落ちたりしてみたかったものだった。
そんな希望を持っていたからなのか、私は1番好きだった少女漫画に転生していたのだ。1番好き…と言うと語弊がありそうなので訂正しておくと、ストーリー的にはイライラすることが多かった…!
そもそもヒロインが好きになれない!好きな人の幼なじみなんて美味しいポジションを持っておきながら何も行動せず余裕ぶってた矢先に幼なじみが別の子と付き合ってしまう。
その幼なじみを取り戻すためならなんでもするあまり性格のいいとは言えないヒロインをどう好きになれと?
漫画だとラブコメということになってるから面白みはあるかもしれないけど、現実にこんな子がいたらと思うと…うん、あんまり関わりたくはない…。
ま、それも多分無理なんだけどね。なんでか…私はヒロインの幼なじみと最初に付き合う女の子ではないものの、漫画の中でヒロインの親友だった風間萌乃に転生してしまったのだ。
しかも最終的にその幼なじみは私とヒロインの間で揺れる…今のところ、前世を自覚した今優柔不断な幼なじみを好きになる予定は無いのでどういう風にこの世界は進んでいくんだろう…?
さて、私が原作を読んでた上でこの世界を生きている内に1つおかしい事実があることが発覚した。それは…
「また考え事?せっかくの入学式に遅刻してしまうよ」
「伊月!」
何を隠そう、彼が私が人生をかけて幸せにしたい人。漫画の中ではヒロインを一途に想い、最後にはヒロインの幸せのために身を引く当て馬男子、桧山伊月なのである。
そして、私が知る限り親友であった私と伊月が幼なじみであるという事実は無かったはず、なんだけど…。
「家まで迎えに行ったのに萌乃はもう出てるって言うし、置いていかれたと思ったら道ばたで考え後してるし」
「う…面目ない」
「まだまだ目が離せないなあ」
「もう、少し前に話したでしょ。私達は少しお互い離れした方がいいって」
「僕は了承した覚えは無いけど?」
「いや、でも…」
今は伊月と1番共にした時間が長い私。
でも伊月はこれからヒロイン…明城いずみのことを好きになる。私は伊月を幸せにしたくて、だから私が邪魔する訳には行かないし。
「…分かったよ」
「え?」
「先行くね。もうぼーっとしちゃだめだよ。じゃあ」
だからこの寂しい気持ちには蓋をして、私は伊月の幸せのために頑張るんだ。
伊月の背中を見送って、私も高校に向かい歩みを進めた。