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袋小路と白い魔女  作者: 葉月舟
魔女よ永遠なれ
55/57

 この前、その福沢と久しぶりにいっしょに飲んだ。

 乾杯のあと、どうだいと聞いたら、うむと曖昧に答える。


 男の二人同士というのは話もはずまない。仕方なく黙ってビールに口をつける。

 すると彼もビールを一口飲んで言った。


「おい、商社とは不思議な所だぜ」

「なぜ」


「なぜって、俺みたいな若造にでも何億、何十億という金を任せてくれるからさ」

 その日暮らしの人間には、にわかには信じがたい話である。


「へー。結構なことじゃないか」

 皮肉まじりに答える。


「うん、そうなんだ」

 全く意に介さず、話を続ける。


「まさに錬金術だよ。俺がこう、妙薬みたいなものをパパーッとかけるだろう。それがアッという間に、何十倍何百倍にもなって返ってくるんだからな」


「勝手にほざけ」

 少し忌々しくなって、ビールを一気に飲み干し、そっぽを向いた。


 妙薬か――。俺にもそんなものがあれば。

 すると突然、例の夢を思い出した。


「おい」

 急に嬉しくなった。


「俺たちはあの時、呪いなんかにかけられていたんじゃなかった。魔法にかかっていたんだよ。しかもいまだにその魔法から解けていないんだ。二人ともね」

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