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この前、その福沢と久しぶりにいっしょに飲んだ。
乾杯のあと、どうだいと聞いたら、うむと曖昧に答える。
男の二人同士というのは話もはずまない。仕方なく黙ってビールに口をつける。
すると彼もビールを一口飲んで言った。
「おい、商社とは不思議な所だぜ」
「なぜ」
「なぜって、俺みたいな若造にでも何億、何十億という金を任せてくれるからさ」
その日暮らしの人間には、にわかには信じがたい話である。
「へー。結構なことじゃないか」
皮肉まじりに答える。
「うん、そうなんだ」
全く意に介さず、話を続ける。
「まさに錬金術だよ。俺がこう、妙薬みたいなものをパパーッとかけるだろう。それがアッという間に、何十倍何百倍にもなって返ってくるんだからな」
「勝手にほざけ」
少し忌々しくなって、ビールを一気に飲み干し、そっぽを向いた。
妙薬か――。俺にもそんなものがあれば。
すると突然、例の夢を思い出した。
「おい」
急に嬉しくなった。
「俺たちはあの時、呪いなんかにかけられていたんじゃなかった。魔法にかかっていたんだよ。しかもいまだにその魔法から解けていないんだ。二人ともね」




