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「ふん、大方こんなことだろうと思った」
そうつぶやきながら、たくさんの食料や飲み物を次から次に収納している。
「実は、一週間ぐらい前にこっちには帰ってきてたんだ。でも、あいさつ回りなどいろいろあってさ。すっかり遅くなってしまって悪かった。
それにしてもお前の居所が分からないので、探すのに苦労したよ。なぜ知らせてくれなかったんだ」
そう言って、こちらを振り返った。
住所が転々と変わったことなのか、それともいまの僕が置かれている窮状のことについて言っているのか、咄嗟には判断がつかなかった。
もし後者のことを言っているのなら絶対答えたくないと思った。
幸い、それ以上追究して来ない。
「あっ、そうだ」
福沢はそう言うと、まるで佐々木小次郎のように背中のT型定規を抜いた。
「ほらよ、今度はお前が持つ番だ」
なんとなくはずみでそれを受け取ってしまった僕は、自分の気持ちをごまかすようにつぶやいた。
「こんなものを背負ったまま、よく電車なんかに乗れたものだ」
すると相手は気分を害した様子もなく答えた。
「なんの。俺にとってはお守りみたいなものだったからな」
そう言うなり、今度はリュックサックを下ろして、また中身をどんどん冷蔵庫に詰め始める。