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蒸し暑い夏の夜だった。
寝苦しさに、何度も同じ夢を見ては目が覚めた。
決まって魔女の夢だった。また三枚のカードを持っていたので、僕は皮肉を込めて言った。
「本当はもう一枚カードがあるんでしょう」
すると彼女はにっこりと微笑んだ。
「当ったりー」
カードは一枚増えていた。
「僕にはもうそのカードしか選択肢がなくなった。先生、そうでしょう」
すると彼女は悲しそうな顔をした。
「相変わらずおバカさんね、カツ君は」
気がつくと彼女の姿は消えていた。声だけがいつまでも耳の中で反響していた。
僕はまた世界の隅々まで彼女を探し回った。
しかしオーロラの下にも、金色の砂漠にも彼女はいない。まるでこちらを監視するかのように、太陽が横に移動しながら僕についてくるだけである。
いつか僕は断崖絶壁の上に立っていた。
太陽は消え失せ、頭上は真っ黒な雲に覆い尽くされていた。
岸には波が激しく打ち寄せ、砕け散っていく。
黒雲はそれでも飽き足らないかのようにあとからあとから煙のように湧いてきて、まるでこの世の果てのような荒涼とした風景が広がっていた。
いやだいやだ、こんな所で――。




