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それにしてもさっきからの彼の態度が気にかかる。しきりに頭上を気にしながら、何度も見上げているのだ。
空には明るい三つの星を中心に、たくさんの星々が輝いていた。
「あれはペテルギウス……」
福沢は暗い顔をしてつぶやいた。
「えっ?」
「えって……。君、あれが怖くないのかい」
僕はもう一度夜空を見上げた。
相変わらず綺麗な満天の星である。三角形の真ん中を貫くように、シルクのように滑らかな天の川が流れている。むしろ荘厳でさえある。
「どうしてあれが怖いんだ」
「だって、あんなにたくさんの目に見張られているというのに」
彼はそう言うと、ぶるっと身震いした。
不思議に思っていると、決まりの悪そうな顔をして、まあいいとつぶやく。そしてまた言った。
「さあ、君はこれからここで僕の千本ノックを受けるんだ」
「何だって――。こんな夜にか? 寝ぼけたようなことを言うんじゃないよ」
それにバットをボールに当てることさえできないくせに……。いよいよこいつは頭がどうかなってしまったに違いない。