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すると、急に玄関のドアが開いた。父だった。
いきなり大声で叱られた。
「バカ。いったいそんな所で何をしてるんだ。風邪をひいてしまうぞ。それにいま何時だと思ってるんだ」
これだから親父っていうのは――。いつもこちらの事情も何も聞かずに、いきなり怒鳴りつけてくる。福沢の気持ちもよく分かると思った。
次の日、校長と教頭に報告した。
「大丈夫かい、本当に。このまま学校に戻れなくなったりしないだろうね。まさか後追い自殺なんてことは?」
教頭が気弱そうに尋ねてきた。
「大丈夫です」と僕は請合った。
「友達として断言できます。あいつはきっと戻ってきます。
それからお母さんが、教頭先生にお詫びを言いたいとおっしゃってました。ぜひ息子に会ってやってくださいとも」
「お母さんが……。本当に?」
「はい」
「よかった。教え子を続けて二人も亡くすなんて、そんなことを想像するだけでも私には耐えられないことだったからね」
教頭は下を向いて奥歯を噛み締め、じっと何かをこらえているようだった。
「教え子?」
不審に思っていると、校長が教頭の肩をポンポンと叩きながら代わりに答えた。
「君は知らなかったのかい? 根津先生は、教頭の教え子だったんだよ。
だからこそ彼は、根津先生が辞めなくて済むように一生懸命奔走していたんだ。それに彼女はとても素晴らしい教師だったしね」




