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絶好を言い渡されたわけでもないのに、一抹のさみしさを感じた。しかしその反面、何だか自分たちが少しだけ大人になったような誇らしい気がした。
それに下手をしたら、彼と一緒に咸臨丸というコンビ名で漫才をやらされる羽目になっていたかもしれない。これで良かったのだと心から安堵した。
「じゃあ、もう帰るから。君……元気で」
「うん。お前もな」
彼と握手をして別れた。
部屋を出ると、階段の下で彼のお母さんが心配そうにこちらを見上げている。いつの間に帰宅したのか、お父さんもその横に立っている。
再びさっきの座敷に通された。
「彼は大丈夫です」
様子を聞かれた僕は、きっぱりとそう答えた。
二人は不安そうに顔を見合わせた。
まただ。僕はいつも言葉が足りない。こんな大切な時にこれではいけないと思った。
急いで言い添えた。
「彼は今とても苦しんでいます。でもそれは、立ち直ろうとして一生懸命になっているからだと思います」
「今度のことは私に一番の原因があると思っているんだ」
とお父さんが言った。
帰宅したばかりなのか、まだ背広姿のままだった。ネクタイを緩め、いかにも憔悴しているように見えた。




