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ふと窓の外を見ると、暗い中を何か白いものがよぎった。
「雪だ――」
思わず小さな声を発すると、彼も顔を上げた。
しばらく間隔があいて、また一片舞う。
「本当だ」
彼も小さな声でつぶやく。
雪はそれからも、まるでこちらを焦らすかのように、一つ、二つと間隔をあけながらチラついた。
二人とも黙ってそれを見ていた。
もうそろそろ腰を上げなければ。
そう思った矢先だった。
「おい、カツ」
と福沢が言った。T型定規の柄を、手の平でそっとたどっている。
「俺はまた学校に戻るよ。きっとだ、約束する。長くかかるかもしれないけどな」
「分かった」とだけ僕は答えた。
雪はだんだん数を増しているようだった。あるものはふわふわと舞いながらどこかにいなくなり、あるものはガラス窓に当たりすぐにとけていった。
「あれ?」福沢はふいに素っ頓狂な声を上げた。
「君、いつから僕のことをお前と呼ぶようになった?」
「本当だね」と僕は笑った。「そういう君こそ」と言い返す。
「ふん、まあいいさ」と彼も笑った。
「僕と君は、俺とお前の関係になったわけだ。真夜子先生が言ったように、咸臨丸コンビは本当にこれでお仕舞いだね」




