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福沢はそこまで一人で喋り続けると、がばりと身を起こした。そしてまた元のように、ベッドの端に腰掛けた。
両目から強い挑戦的な光を放っている。
「俺の唯一の夢……。希望……。それが滅茶苦茶に壊れてしまったんだ。分かるかい、この気持ちが? いや分かるはずがない。そんなこと簡単に言わないでくれよ」
僕は黙っていた。心の中ではいろんな言葉が駆け巡っていた。
バカヤロー。悲しいのはお前だけじゃないんだ。
真夜子先生の叔母さんも、クラスの仲間たちも。そして、この俺だって――。
そう叫びたかった。
しかしそうはせずに、ひたすら口を噤んだまま、真夜子先生のT型定規をじっと見つめていた。
あえて自分の思いを打ち消した。
こいつは今、実際に学校に出てこれないほど真剣に思い悩んでいるんだ。とにかく今は、こいつの気持ちに寄り添ってやらなければ。
いつかの堤防でのことを思い出した。
真夜子先生は白衣のまま斜面に寝転び、何もかも忘れて、一日ここでこうやって過ごせたらなあとつぶやいた。
あの時先生はどんな気持ちでそう言ったんだろう。そう考えるとまた胸が痛んだ。
「袋小路に陥ったんだな」
先生の定規を握り締めながら、福沢に向かって言った。
彼は僕から目をそらすと、何とも答えなかった。
「もがけばもがくほど、そこから出られないんだ」
やはり無言だった




