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「よせよ、布団がしわになるじゃないか」
福沢はちらりと振り返ると、迷惑そうな顔をした。
せっかく友達が訪ねてきたというのに、なんという態度だろう。
少しむっとして言い返した。
「意外と神経質なんだなあ。部屋も綺麗に片付けてるし。まるで女の子の部屋みたいだね」
「余計なお世話だ。散らかっていると、ますます気が滅入るんだよ」
今度は振り向かずに答えた。
テレビの画面では、お笑い番組が放映されている。
しばらく黙って一緒に見た。
福沢はテレビの中の観客と一緒に声を上げて笑っていたが、僕はちっとも笑えなかった。
「毎日こんなものを見ているのか」
「ああ、そうさ」
それ以上は何も言わなかった。やはりこちらの方を見ようともしない。それからまた、アハハとひときわ大きな声で笑った
僕はついに我慢しきれなくなって言った。
「おい、冗談じゃない。みんながお前のことをどれだけ心配しているか。それなのになんなんだよ、いったい」
「うるさいなあ。そっとしといてくれ」
彼はDVDを入れ替えようとでもしたのか、ふいに立ち上がった。
「おい」
肩を捕まえようとすると、乱暴に振りほどかれた。
「ちょっと待てよ」
「放っといてくれ」
そう言うのを、なおもその両肩を掴んで、強引にこちらを向かせた。
「何をするんだ」
福沢の両目が怒りに燃えている。