3
それから僕は、一人で世界のあちこちを旅した。
ある時はオーロラを見た。緑色の投網のようなものが天空から垂れ下がり、今にも地球ごと呑み込まれてしまいそうな気がした。
ある時は危うくライオンに食われそうになった。その巨体にのしかかられた時、アカシアの木の枝を通して真っ青な空が見えた。
気が付いた時はライオンの姿はすでになく、太陽がぎらぎらと照り付けて、サバンナの中に倒れている僕を焼き焦がそうとしていた。
またある時は、月の美しく輝く藍色の空の下で、黄金色に輝く砂丘を彷徨い歩いていた。
いつでも一人だったが、彼女のことを忘れたことはなかった。そして、自分はなぜ彼女のもとを去ってしまったのだろうと後悔した。
誰が何と言っても構うことはなかったのに。たとえ彼女が魔女だったとしても――。
ある時、向こうの山の峰から、うろこ雲がこちらに向かって扇状に広がっているのが見えた。空は暗かったが、雲だけが明るく輝いている。
すると流れ星が一筋、天空を斜めに切り裂くように飛んでいった。雲はたちまち消えてしまい、代わりに星々が満天を覆い尽くした。
やがてそれはそのままきらきらと輝きながら、地上に降り注いできた。
僕は両手を広げ、全身で星々の光を浴びながら、その美しい世界に恍惚としていた。
そして彼女のことを思い出した。――そうだ、彼女をここに連れてこよう。
そう思ったとたん、地軸を中心に天空がゆっくりと回転し始めた。