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彼は僕と同じ落ちこぼれで、運動も大の苦手ときている。それなのにいかにもスポーツマンのような風をして、しかも爽やかな汗など流していたからだ。
もっとも、彼の全身白ずくめの姿はいささか奇妙ではあったが。
「なぜって…」
彼は左手にはめたグローブにボールをポンポンと放り込みながら、思慮深げな顔をした。
おかしい、いつもの彼らしくないと思った。
彼の名前は福沢勇吉。
たぶん親が過大な期待を抱きながらも、ちょっとだけ遠慮して名づけたに違いない。残念ながらその期待にはそえなかった。
彼にとっては、自分といつも成績でびり争いをしているこの僕が好ましかったのだろう。
授業中だろうが休み時間だろうが、高校生とは思えないようなつまらない悪ふざけばかり仕掛けてきて、こちらとしては大いに不名誉なことだったし、迷惑もしたものだ。
「なぜって、あいつは魔女だからさ」
彼はしばらくすると、意を決したようにそう答えた。
そう言われると、確かに彼女は魔女のような気がした。僕は少し怖くなったので、黙って彼女のそばをそっと離れた。
しかし、なぜなんだろう。彼女はそのまま一人で立ち尽くしているのだった。