1
その日この話を聞いた別のクラスの者から、自分たちにも手伝わせてくれと申し出があった。例の喧嘩の相手だ。
彼らは、俺たちも協力するから、一年生とその父母全員から署名を集めようと言ってくれた。
そこで福沢と四人で手分けをして、各クラスに応援を頼もうということで相談がまとまった。
しかし翌朝、福沢がなかなか登校してこない。
何してるんだ、こんな大事な時に。
一人やきもきしていると、教頭が来て、何事もなかったように出席を取る。
「福沢は今日は下痢で休むそうだ」
教頭がそう告げると、あちこちからクスクス笑う声が聞こえた。
続けてぼそりと言う。
「人間の身体から出るもので、一番汚いもの……。やはりそれは、ウンコじゃないのかなあ」
今度は誰も笑わなかった。恐らく凍りついていたんだろう。
教頭は赤面して、ゴホンと咳払いをした。
「ああ、今日はみんなにいい知らせがある。署名を昨日早速、根津先生に届けた。そしたら、とても喜んでね。
みんなの気持ちはしっかり受け止めさせてもらう。この教壇に再び立てるかどうかは分からないが、教師はやはり続けたい。
そしていつかはみんなの成長した姿を再び見てみたい。そう言っていた」
教室からいっせいに歓声が上がった。