表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
袋小路と白い魔女  作者: 葉月舟
星よ天空よ
18/57

「先生――」

 僕は煮えたぎるような感情を押し殺しながら、静かに言った。


「先生はご存知ですか? 人間の身体から出るもので一番汚いものを」

「何?」


 相手は不意をつかれたように、目を丸くしている。



「それは言葉です。人間は美しい歌を歌う一方で、その同じ口から汚い言葉を吐く。でもそれじゃあいけない。


いつも誠実で綺麗な言葉を使うように心がけなさい。口数は少なくてもいいから――。


 根津先生がそう教えてくれました。でも、今日はその教えに背くことにします」


 教頭は、なおもぽかんとした顔をしている。


 僕はここぞとばかりに、吐き捨てるように言った。

「この臭い手をどけてもらえませんか」


 相手は思わず僕の両肩から手を離すと、その手をまじまじと見つめている。そしてはっと我に返ったように、こちらに向き直った。


 殴られると思った。殴られてもいい。その代わり教頭も辞職に追い込んでやる。


 次の瞬間、福沢から背中をばしっとぶたれた。

「馬鹿、何を言ってるんだ。謝れ」


 そう言うと、僕の頭をぐいぐい押し下げる。

「先生、僕からも謝ります。こいつ、今日はどうかしてしまってるんです」


 教頭はしばらく呆然としていたが、ふと教壇の方に顔を向けた。そこに置かれてあった署名用紙を手に取ると、真剣な眼差しで見つめている。


 やがてみんなの方を向いて言った。


「これは一応預からせてもらうよ。あくまでも根津先生自身の問題だがね」

 そのまま黙って教室を立ち去る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ