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「だからどうしたっていうんだよ」
声がとがっているのが自分で分かる。
「真夜子先生が学校を辞めさせられそうなんだ。さっきお袋から聞いた」
彼の話によると、こともあろうに真夜子先生が妻子ある男と不倫をしていたというのである。しかもそれが父兄の誰かに露見してしまったというのだ。
今日校長室で、教育者にあるまじきことと教頭からきつく難詰されたうえ、PTAの役員たちの前で謝罪させられたらしい。
挙句の果てに、教師の職を辞すということになったというのだ。
僕にとってはまさに青天の霹靂だし、二重のショックでもあった。
しばらく何の言葉も発することができなかった。福沢も一部始終を語り終えると、それっきり黙りこんだ。
不意に猛烈な寒さに襲われ、自分の両肩を抱くようにして冬の夜空を見上げた。四角いオリオン座と、ペテルギウスを頂点とする三角形以外は、ぼんやりとした星空だった。
いつか夢で見た、澄み切った美しい満天の星空を思い出した。
この灰色にくすんだような天蓋がぐるりと回転し、またいつかのように、夜空の全面にびっしりと輝く星々が現れないだろうか。
やがてそれはそのままきらきらと輝きながら、僕の身体に降り注いでくる。そしてその時こそは……。
しかし、いつまでたってもそういうことは起きなかった。
次の日、真夜子先生は出勤してこなかった。代わりに教壇に立ったのは、教頭だった。