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福沢は賢い子だなんて言われたけど、それじゃあこの僕が間抜けな人間だと言われているに等しい。
がっかりしていると、先生はまた言った。
「それに、シャイで優しい。でも、いざという時は毅然とした行動ができる。女の子たちもあなたのそういう所に気づいていて、一目置いてるのよ」
また幸せな気持ちになってボーっとしていると、福沢から脇腹を小突かれた。
「そんなあなたたちでさえ、今日は人とトラブルを起こしてしまった。
これでよく分かったわね。人を笑わせるということは、逆に怒らせたり傷つけたりしてしまうことと紙一重なんだということに――。
ただ優しいだけじゃ駄目。いろんな角度から物事を見ることのできる心の広さ、そしてなおかつ繊細さが必要なの」
僕たちは今日の昼休み、他のクラスの生徒と殴り合いの喧嘩をしてしまったのだった。先に手を出したわけではないけれど、次の日こちらの方から謝って仲直りをした。
危うく謹慎処分をくらいかけたが、真夜子先生が弁護してくれたお陰で免れることができた。
事件が起きたのは、その数日後だった。
夜、福沢から電話がかかってきて、すぐに会いたいと言う。何の用だと聞くと、電話で話せるようなことじゃないと答える。
ハイハイ分かった、それじゃあ明日学校で聞いてやるよと言うと、馬鹿、真夜子先生の一大事なんだぞと本気で怒っている。