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ある日僕たちはつい悪ふざけが過ぎて、別のクラスの生徒と揉め事を起こしてしまう。
その日の放課後、二人とも教室に残るよう言いつけられた。
先生はいつもの白衣姿で腕組みをしたまま、長いこと口を利かない。
ただ厳しい顔でじっと窓の外を見つめている。その横顔を夕映えが照らし、肩まで伸ばした髪を黄金色に輝かせていた。
「本当に困った子たち」
ぽつりとそう言うと、二人の方に向き直る。
「こんなに困ったのは、教師になって初めてよ」
僕たちは何も言い訳することもできず、しょんぼりとうなだれていた。
「ユキチ君――。いや勇吉君」
不意に呼びかけられて、彼は体をぴくりとさせた。
「いつも言ってるじゃない。ユーモアもいいけど、ふざけてばかりじゃだめ。たとえ火の玉になってでも、這いつくばってでも、自分の人生に真正面からぶつかっていきなさいって」
「でも……」
彼は珍しく口ごもり、身体をもじもじさせた。
「でも先生、駄目なんです。先生はこの前あんなに言ってくれたけど、僕はネズミよりも馬鹿なんだから」
「ううん、そんなことはない。あなたは本当は賢い子。自分でも分かっているはずよ。今の自分が何をすればいいかを」
肩に手を置かれ、じっと両目を覗き込まれた福沢は、首の所まで真っ赤になった。