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信じるということ、信じさせるということ

 勝手に動いていた体は、僕の意思通りに動くように、戻った。


「…わかったよ…こうして、僕の体を使って、化け物を倒したということは信じるよ、炎鳴神さん」


「炎鳴神…だと…?」

 和田さんが呟く。


(……信じてくれたようで何よりだ。少年。

 こ奴、私の存在を知っているようだな…目の前にいる奴は人間ではない。人間を喰らうものだ。先ほどはいい顔をしているように見えたが…この能力を見せた今、殺されるぞ。お前の体が衰弱しすぎていて、あの時はお前の体を使って奴を殺せなかったが、今なら…)


「…和田さんは、僕を殺さない。だって、気を失っている僕を食べずにわざわざ助けるだなんて、ただ人を喰うだけの化け物がするはずないじゃないか。僕は、和田さんを信じるよ」


 なんのとりえもない僕を助けてくれた恩人を


(ただ空腹ではなかったからかもしれぬぞ。何かを企んでいるからかもしれぬぞ)

「僕が信じたいから信じるの!それでいいじゃないか」


「…君は、俺を信じてくれるんだね?」

 和田さんは真顔で僕に問いかけた。

「はい」

「たとえ、人間でなかったとしても」


「…関係ありませんよ、僕なんかを、救ってくれた存在には違いありませんから」

「そうか…ありがとう。」

 彼は深々と礼をすると、顔を上げた。

「君に憑依している存在、炎鳴神とも話をしたい。彼に、君の体を通して…話させてくれないか?君の中では会話できているのだろうけれど、俺にはちっとも会話がわからないからね」

「!わかりました…」

 恥ずかしながら、僕はここで初めて、『炎鳴神』の声が僕にしか聞こえてないことを知った。

「口を貸すときは、口の力を抜けばいい?」

「ああ、それで構わん」

 やっぱり、勝手に僕の体が動くというのは、不思議な感覚だった。


*****


「なにを企んでいる、奇獣」

 病室に響く、聴き慣れない低い僕の声。なんとなく、僕の表情は険しいような気がした。

「企むだなんてそんな失敬な。…俺は、人間の味方だ」

 和田さんの目は真剣だった。

「ふむ…話は聞こう」

「有り難き言葉、感謝する」

 和田さんは一礼をして、続けた。


「俺には奇獣バルバドスという名があったが…捨てた。仲間が漆黒神に殺されてから、僕は人間として、和田優人を名乗っている。どうにかして戸籍もとった。これでも漆黒神に反旗を翻そうとしている…奇獣の一派の長さ。」


「まさか、奇獣は全て漆黒神に絶対服従というわけではないというのか?」


「ああ。奴のやり方は乱暴で…残虐で、よく思わない輩も多い。…俺みたいにな。俺の目標は漆黒神を倒し、余計な諍いのない平和な世界を作り上げること。知っているか?俺達奇獣は人間を食べなくても生きていけるということを…俺は、仲間の奇獣に人間を食すという行為を禁止させている。余計な怨みを、新たな諍いの種をもう蒔きたくないんだ」


「人間と共存しようとしていると解釈してよいか?」


「ああ。それが奇獣の未来の為に有益であると判断した。人間は敵に回すよりも味方につけたほうがいいと」


「打算的だな」

「なんとでも言え、炎鳴神よ」

「だが面白い。貴様の話に乗ってみようではないか。裏切ったら容赦せんぞ?」


「…有り難き言葉、感謝する」


 和田さんは、先ほどよりも深々と礼をした。なんとなく彼らの真剣な話に入り込めなかったけど……


「あ、あの、話の腰を折ってしまって申し訳ないんですが…漆黒神ってなんですか?奇獣って、僕が会った化け物のことであってます?」


「ごめんね改直くん。すっかり話に置いてけぼりだったね」

 和田さんは申し訳なさそうに言った。

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