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転生先が二次元みたいな三次元だったけどエンジョイしない人達(二次元愛)の話。 えくすとら  作者: 空月


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【番外】続・誕生日の話。

 人間は学習する生き物である。先例に学ぶ生き物である。

 故に、彼という尊い犠牲の上に、彼女が自ら率先して行動を起こしたのは何ら不思議なことではなかった。

 そう、つまり――不可避イベントの一種、『誕生日』というものを迎えるにあたっての彼女の選択は、至極妥当なものだった。



「おはよ。あと誕生日おめでとう」


「ありがとう。というわけで出かけよう」


「マジで準備万端だな? 前々からの要望通り早朝に迎えに来たけど、家族はいいわけ?」


「謎現象もといご都合主義で何故か各自用事が入って昨日からいないから……」


「目が遠くに行ってるぞ。戻ってこーい」


「某『明らかに付き合ってるだろお前ら』状態なのに卒業まで告白しないゲーで、攻略対象が家に直接プレゼント持ってくるの、主人公じゃなくて家族が応対したらどうするのかと思ってたんだけど、謎が解けた」


「そ、そうか……。でもそれなら居留守使えばいいんじゃね? 部屋で籠城した方がいい気がするんだけど」


「身内カウントの人間にフラグが立ってなかったらそうしたけどね? ガチやばいフラグになったら洒落にならないから」


「ああ、ヤンデレ従兄か……」


「まだヤンデレじゃない。まだ」


「そうだな、まだヤンデレじゃないな」


「そのかわいそうなものを見る目やめて」


「悪かった。……で、一応勝手にある程度はプラン立てたけど、どっか行きたいところあるか?」


「SAN値が減らないところ。できれば回復するところ」


「真顔で言うな」


「誕生日くらい精神の安寧を求めてもいいと思う」


「それは同意する。んじゃとりあえず行くか」


「どこに?」


「まずはゲーム屋だな。店長に道楽仲間がやってるとこ教えてもらった。プレミア系揃ってるらしいから欲しいやつあったらプレゼントしてやろうと思って」


「え、マジ?」


「マジで。っつーかあんたも同じような事しただろ」


「いやまあそうだけど。期待はしてなかったっていうか」


「期待してるよって言ったくせにそれか」


「いやフツー期待しないでしょ。偽装恋人だし」


「偽装恋人だからこそプレゼントとかイベント事はきちんとするもんじゃねぇ?」


「それも一理あるけど、私たちに当てはまるかと言われると」


「あー……。まあそれは置いとこうぜ。店長のとこで出会いイベ起こったことないから、その店でもないんじゃないかとは思うけど。人が少ない時間を狙うに越したことはない」


「早くからやってるんだ、そこ」


「むしろ今日は早くしかやってないらしい。気まぐれで開店時間が変わるとかなんとか。ほら、道楽だから」


「それにしたってどうなのそれ」


「本人がいいならいいんだろ。店長経由で開店時間教えてもらえてよかったよな」


「ご都合主義ありがとうございます」


「やめろなんかフラグに思えるから」


「フラグに思えないものの方が少ないから今更だよ。大丈夫大丈夫」


「大丈夫要素が微塵もないな」



 その後、無事にプレミア系特典付きゲームを買うことには成功したものの、明らかな新規出会いイベントの気配を感じては逃げ、個別イベントのフラグを察しては開始前に潰し、帰宅後に待ち受けているであろう誕生日イベントの回避方法に頭を悩ませることになるのだが、――分かっていても目を逸らしたいことってあるよね、というのが彼らの本音だった。



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