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転生先が二次元みたいな三次元だったけどエンジョイしない人達(二次元愛)の話。 えくすとら  作者: 空月


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【小ネタ】名前を知らない=フラグ回避とは限らない現実。




 その人は、どうやら『実はご近所さんだった!』ということもなく、学校が同じというわけでもなく、完膚無きまでにインドアな自分と趣味が近いというわけでもなく、ぶっちゃけると外見くらいしか知らないというのに、何故かあらゆる場所で偶然に・・・顔を合わせることが多々ある人だった。


 例えば、近所のものより大きい本屋に行こうと思い立って乗った電車の中だったり。

 例えば、家族に強引に連れられて行ったショッピングモールでだったり。

 例えば、めんどくさい事情でめんどくさい人達から逃げ回っている最中だったり。


 数え上げると異常なほどに、偶然ばったり遭遇する人だった。相手もこれだけ偶然が続けば、「また会ったね」なんて苦笑じみた表情で挨拶してくれるようになった。勿論こちらも返すようになった。


 え? 自分から挨拶しないのか? ……そんなコミュ力溢れた行動ができてたらもっと違う人生生きてると思う。


 ともかく。

 そうして私は、この度重なる……もとい、度重なりすぎる偶然が孕む可能性――危険性、と言い換えてもいい――に思い至ったのだ。



「つまり、――フラグじゃないかってことか」


「まあその通りなんだけど」



 つらつらと前置きを並べ立てていた私に、『何故だか前世の記憶があって、前世と同じ容姿で、ついでに前世から引き続き筋金入りの二次元愛だというのに、現世が二次元っぽい世界故に乱立するフラグによって二次充がままならない』という、奇妙で不可思議な境遇が似通っている目の前の彼(同士兼共犯者)は、そのものズバリ口にした。身も蓋もないが実にその通りなので頷く。



「ほら、某大手乙女ゲーシリーズとかにいるじゃん、休日に一人で出かけるとフラグ立っていく人。あれを思い出しちゃって」


「あー……確かに似た感じするな。その完全一人の時に限る遭遇率。名前も知らないんだったっけ?」


「名前を名乗り合うなんて、そんなフラグが立ちそうな行為をすると思う?」


「思わない」



 「名前なんて聞いたらフラグ確定しそうだもんな、お助けキャラから情報もらえるようになりそうだもんな……」と若干遠い目で言う彼も、多分似たような存在がいるんだろう。どこまで二次元っぽさを追求するつもりなんだろうこの世界。


 しかし現実問題、あそこまで『偶然』が重なると逆に怖い。常識的に考えて件の人からストーカー扱いされてないだろうか私。だってほら、この世界の例に漏れず、そりゃあもう素敵な外見でいらっしゃるからさ、お相手方……。



 とりあえずは、名前も知らないどこかの誰かと、これ以上偶然の邂逅を重ねないことを祈るしかないのだけど。

 多分その祈りは、どこにも届かないんだろうなぁ、と私も遠い目になってしまったのだった。




即興小説トレーニングにて「お題:名前も知らない君 制限時間:15分」で挑戦したものを加筆修正。

即興小説した原文は『物語の切れ端。』にあります。

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