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転生先が二次元みたいな三次元だったけどエンジョイしない人達(二次元愛)の話。 えくすとら  作者: 空月


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【小ネタ】クリスマス(イブ)の話。

 クリスマスというのはもはや宗教関係なく一大イベントである。家族、恋人、友人……誰と過ごすとしても、特に意識していなくてもいつもとは違う心地になることもある。それはもちろん、二次元に心を捧げていても同じことだったりする。




「推しのソロ曲が出たんだけど、とりあえず聞いてほしいので黙って250円払わせてほしい」


「いきなり強火オタ全開で来たな」


「もう本当尊くて……『これが……祝福……』って感じで」


「うんうん、気持ちはわかった。わかったというかわかっていたのでちゃんと買ったし聞いた」


「なんてデキたカレシ様。最高。愛してる」


「誤解を生むための関係だが本当に誤解が生まれるから言動には気を付けような。でも確かにいい曲だった」


「でしょ!? 推しのこれまでが凝縮された、大切な人への、世界への感謝が詰まった素晴らしい曲だよね!?」


「中の人の歌唱力もあいまって『聴かせる』曲だったな。ところで推しのクリスマスステージ衣装ベストショット集を見てくれ」


「揺るぎなく引いてた。知ってた。うっわ、かわいい……あっ、今の、今の角度超かわいい」


「お目が高い。是非MVも見てくれ」


「じゃあ代わりに推しグループがメインのノベライズ読んで」


「受けて立とう。……一応クリスマスイブなのにあんまりそういう感じじゃないな俺ら。一応コイビト同士として何かするか?」


「ケーキでも買う? でも家族と食べるからなぁ。……ま、いいんじゃない? とりあえず一緒に過ごしてるわけだし」


「イブはコイビトと、クリスマス当日は家族と。見本のようなクリスマスの過ごし方ではあるか」


「そうそう。予定入れてないと事前フラグも折れないし、かと言って二日とも偽装コイビトと過ごすのもアレだし、この辺りが妥当でしょ」


「じゃあクリスマスっぽいことは家族と過ごす時間に任せて、画面の向こうのクリスマスを満喫するか」


「あっちでもクリスマスイベント、こっちでもクリスマスイベント、そっちでは年越しイベント、って感じの過密スケジュールだからね……」


「うかうかしてるとすぐバレンタインが来るからな」


「そしてホワイトデー……。いやぁイベント目白押しで嬉しいなぁ」


「棒読みになってるぞ。ここぞとばかりに金を落とさせようとしてくるからな……気持ちは分かる」


「お年玉ガチャも待ってるし……いや本当に嬉しいんだけど、嬉しいんだけど、うん」


「とりあえず今は未来については置いといて、推しの生誕と画面の向こうのクリスマスパーティを楽しんでおけばいいんじゃね」


「そうする。……やっぱり推しの生誕を祝うケーキが無いの不敬な気がしてきたから買ってくる」


「じゃあ着いてく」


「え、いいよ。推しとクリスマス満喫しててよ」


「いやさすがにクリスマスにコイビトを一人で外出させるのはどうなんだっていうか、そこまで甲斐性無しになりたくはないというか」


「別に気にしなくていいのに……まぁ何が起こるかわからないから着いてきてくれるのは有難いけど」


「道端で突然にクリスマスイベントが始まる可能性も無いとは言えないしな」


「そこがこわいんだよね……事前フラグをいくら折っても当日に起こったらどうしようもない」


「でも出かけないって選択肢はないんだろ?」


「三次元のフラグがこわくて推しが愛でられるか」


「心意気やよし。んじゃ行くか」






 そうして出かけた二人は思い知ることになる。世の中には言霊というものがあり――一瞬離れた隙に各々にイベントが起こるなんて当人達にはまったく嬉しくない奇跡が起こることもあるのだと。

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