第六話 お屋敷探検(自力)
あれから約四ヶ月後。
ハイハイが出来るようになったので情報収集します。
……いや、自分でも早過ぎるなとは思うよ?おそらくこの世界の乳児は成長が早いんだよ、きっと。
約二ヶ月半頃に首が座った時に周囲の反応確認、結果異常のようだった。
……もう出来るようになったものは仕方がないと割り切って移動開始。
まずベッドを慎重に足から降りて、足の届かない分は下に毛布を落として落下の衝撃を和らげる。
次に扉まで這って行って、閉じ切っていない隙間に手を差し込んで(赤子の)全力でこじ開ける。そして廊下へと出る。
向かう先は一階の廊下突き当たり、我が家の書庫である。そのためにはまず、湾曲した階段から玄関ホールまで降りる必要があり、それから廊下をまっすぐ進むのだ。母親がよく連れ歩いてくれたため屋敷の構造は大体把握している。
しかし、それで問題が何も無い訳ではない。
まず当然ながら無断で部屋から出歩いているため、使用人にでも見つかれば即座に連れ戻されるだろう。それゆえに今回の探索は慎重かつ俊敏に隠密行動を取りつつ行なわなければならないのだ。よって可能な限り素早く、物陰などを使いながら移動する。
次に、件の階段だ。現状の僕はまだ立って歩く事が不可能なため、手を床に付いたまま降りねばならない。これも足から降りて行くことで対処したが、速度を出しづらい体制のため、廊下を人が通ってヒヤリとする事もあった。
なんとか一階に降り、書庫の目前までたどり着いても、最後の問題が残っている。扉が閉まっているのだ。部屋の扉は都合良く開いている事を利用して外に出たものの、こちらは完全に閉まっているため自力ではどうしようもない。何しろドアノブまで手が届かないのだ。
仕方なくそばの植木に身を隠し、待つこと数分。使用人の一人がパタパタと小走りでやって来て扉を開けた。
開いたからといってすぐに入り込む訳にはいかないのでしばらく様子を見るが、どうやら若い少女らしい。年の頃はおよそ7か8ほど、見習いといったところか。あれくらいの年頃の子がいるのは知っていたが、働いているところを見るのは初めてだ。
などと考えていると、少女は数冊の本を重ねて持って出てきた。おそらく誰かに持ってくるよう頼まれでもしたのだろう。いずれにせよそうして手と視界が塞がり、扉を閉めることもままならなくなっている内に書庫へと入ることにする。幸い少女は僕に気付くことなく扉を閉めて行ったが、帰りはどうしようか。
先の事はひとまず置いておき、目的を果たすとしよう。
しかし僕はまだこの世界の文字を学んでいないため、ここにある本を読むことはできない。なのでそこから始めることにする。まずは手近な本を取り、開いてみる――――――――――。
一時間後、大体読めるようになってきたので早速目当ての本を探すことにする。
『世界地図』『魔術指導書』『創世神と恐ろしき邪神』『世界の六種族』『人類を脅かす魔獣の生態』……
大体見つかったが手の届かない物もあるので、まずは確保できた『世界地図』から手に取って開く。
……
………
…………?
これはどういうことだ……?
地図で見た世界は、地球とほとんど同一だった。