第五話 初めての流星眼
「……レシア、それが……の……か」
親族と思われる数人が集まる中、円卓の奥に座る老人がこちらを、いや、僕をその特徴的な三白眼で鋭く見据えて問う。
まだ転生して3日目であり、この世界の言語を習得し切っていないため途切れ途切れに聞こえる。ちなみにレシアは母親の名だ。
「はい、この子が私達の子、そして……の……す……と…………れる、クロム・シューティングスターです。」
老人の問いに母親が答える。一部の言葉の意味は理解できなかったけど、文脈と場の雰囲気から何かありそうだ。小説なら一騒動ありそうな感じの重要なワードが。コワイネ。
「報告では生まれ……た時より流星眼を……していたとあるが、それは……か?」
おや?例の鑑定スキル、│深淵を覗き見る異能、正式名称流星眼をご所望かな?御要望とあらばやり方は知らないけど二度でも三度でもお見せしますけど……。
「ええ……お願い、クロム。もう一度見せてくれる?」
御要望のようだ。折角母親が物心も付いていない(と思っているだろう)新生児に頼んでいるんだ、早速方法を模索してみよう。
最初に発現した時は、目を覚ますと既にこの目は流星眼となっていたのだからやり方なんて知るはずもない。そして同様に通常の、つまり今の眼に戻す方法も知らない。ならば何故今現在の僕の眼は流星眼ではない?
あの後僕は睡魔に襲われ、眠りについた。起きた時には既に流星眼は消え去っていた。それであの眼は常時発動している訳ではないのだと知った。
では何故消え去った?時間経過か?集中が途切れたからか?それとも代償があったのか?
そういえば意識を失う直前、急に脱力しその直後に睡魔がやって来た。流星眼の反動という可能性もあるが、それは一先ず置いておき、それぞれの可能性から潰して行こう。
あの時僕は特別集中していたということもなかったから、集中力は関係していないだろう。制限時間に関しては検証してみない事には分からないが、代償ならば予想が立てられる。
流星眼、地球のファンタジー作品などに当て嵌めて考えればいわゆる魔眼と呼ばれる類のものだ、説明にもそう書いてあった。
魔、といえばステータスには魔力の欄があった。流星眼は魔力を代償として発動するものなのではないか。その場合制限時間は魔力の続く限り、という事になる。そうするとあの脱力感は魔力切れの症状なのかも知れない。
仮説の次はいよいよ検証だ。もっとも、重要なファクターである魔力が具体的にどのようなものか、その扱い方など全くと言っていいほど何も知らないため、検証のしようがない。ならば、魔力への働きかけ方を探っていこう。
僕の魔力のイメージは液体だ。│何処かより生じて血管を通って体内を循環し、眼球へと集まって全体に広がり、僕の視界を塗り替えていく──────出来た。
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名前:クロウ・シューティングスター
種族:人間
年齢:61
属性:【風】【雷】
魔力:B+
魔術:精霊術・召喚術
特性:流星眼
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老人は僕の祖父だろうか。そしてこの人も魔力はB+、もしかするとこのくらいは平均なのかもしれないが、過度な期待はしないでおこう。
それはさておき、無事流星眼を自発的に発動することができた。反動など詳細は追々調べていくとして、今は母と祖父(仮)の話に耳を傾けよう。
「なるほどな、……のようだ。しかし、……で……を理解しているかのようだな。」
そう言うと、祖父はその眼に五芒星を浮かび上がらせ、改めて僕の顔を覗き込む。僕のステータスを見ているのだろう、次第にその顔は苦々しく歪んでいく。
「聞いてはいたが……こうして……に…の……りにすると、認め……を…んな……。」
お祖父さん、それは厄介者ということですか?不本意ながら僕とても才能溢れる子供なのでその辺汲んでもらえるとありがたいです。お願いですバブー。
「……に……い存在ではあるが、それでもシューティングスター家の……だ、……通りに育てよ。……、呪いの事は周囲に悟られんようにな」
おや、祈りが通じたのかは分からないがちゃんと育ててくれるようだ。よかった、これで一先ず安心だ。
安心したらなんだか眠くなってきた。流星眼の反動なのか幼児特有のものかは知らないが、とにかく(エア)枕を高くして眠れる。
おやすみなさーい。グゥ。