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WORLD ONE ~遥かなる流星~  作者: 二毛猫
第一章 金色の転生者
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第二十三話 集う魔

CCCイベント、バグのせいで半分以上の日数を無為に過ごした…………しかも延長ないから死に物狂いで進めてます。

【 ? ? ? 】


 何処か。

 人類の手の届かぬ何処か。


 先を見通すことを拒む、星のない夜空の如き漆黒の中、唯一つ淡い光を放つ球体が宙に漂っていた。

 その様は神秘的、とも、幻想的、とも表現できるが、それらは適切とはいえない。

 見る者が見れば圧倒的、あるいは蠱惑的と表現するだろう。


 何故か?

 それは、その球体の内包する魔力量が桁違いだからに他ならない。ただそこにあるだけで周囲の物を変質させかねないほどに。

 この放射性物質のような危険物の傍になど、余程の強者か余程の狂者でもなければ到底居続ける事は不可能だろう。


「さて諸君、揃っているようだな。欠席者も何名かいるようだが……まあ問題はないだろう」


 その絶対危険領域に、集う者達がいた。

 球体を覆う闇の下、それを意に介した様子もなく長テーブルを囲んでいる。


 その中の一人が上座に立ち、口火を切ったのだ。

 決して高くはない、むしろ渋みのある低音のその声は不思議とその場によく響いた。


「では、定例報告会を始める。まずは私からといこう」


 事務的な口調で淡々と言葉を紡ぎ続ける一人の男。

 歳の頃は四十代半ば、しかし眉間に刻まれた皺がその本数を加えた外見年齢にしている。


「ソヴェートに動きなし。例年通り軍事に力を入れているようだが特筆すべきものは生まれていない、現段階では捨て置いて構わないだろう。アフレアは迫害亜人の受け入れ数が増加している。厄介ではあるがこちらの手の者を紛れ込ませやすく、人類同士の軋轢の証でもある。突けば崩すのは容易いだろう。アステラは次代の聖女候補を見繕ったらしい。上層部の極小数にしか存在は知らされていないようで、接触は叶っていない。バラシルでは内乱の兆しあり。血統主義の第二王子派がレジスタンスを煽って能力主義の第一王子派の力を削ごうという魂胆だろう。規模を拡大させるよう手を回しておく。ロドーニアに関しては相変わらずの閉鎖国家ぶりで付け入る隙がない。次に────」


 手元の資料に目を落とし、淀みなくあくまでも平坦な口調で報告していく狷介そうな男。その顔におよそ表情というものは伺い知れず、さながらそれは岩壁に人の顔が彫り込まれているかのようだ。


「そしてバリタインだが…………」


 しかし、その立板に流した清水のような舌の動きが、ほんの一瞬停止する。同時に作られた渋面が鋼鉄の眉間に新たな皺を刻み、また一段と老けて見えた。

 そして何事もなかったかのように再動し──ただし皺は戻らぬまま──続きを読み上げた。


「バリタインにて、密偵の一人が殺された。王子暗殺未遂、との事だ」


 その報告の直後、今まで物音一つ立てずにいた列席者達が騒めいた。


 そしてその中で、真っ先に明確な問いを投げかける者がいた。


「……なぁ、バリタインの王子って確かガキだったよな?そんなん相手に暗殺仕掛けて、しくじった上に殺られたってのか?場所があのバケモンの国つってもよ、そいつぁいくらなんでも未熟過ぎやしねぇか?」


 そう訝しげに訊ねたのは、狷介な男とそう変わらない年齢のくすんだ白髪の男だ。しかし彼とは反対に、飢えた獣を思わせる爛々と輝く双眸が男を若々しく見せている。


 眼光の男の問いに幾人かが首肯し、同意する気配を見せる。

 彼等にとって、自分達は他の下等な者共とは一線を画した上位存在なのだ。他種族とはいえ同胞が劣等種風情の手に掛かるなど到底信じられることではなかった。


「そもそも、その暗殺という報告自体確かなのか?よもやその密偵は公の場で白昼堂々と襲いかかったのではあるまいな。でなくば仕損じるなど考えられん」


 その場合暗殺とは呼ばんな、と眼光の男に同意した者の一人、狷介そうな男の傍に座していた銀髪の男が疑問の声を挙げる。

 優雅、という言葉が相応しい気品の漂う物腰の彼は二人に比べると若く見えるが、どこか内面から老成した雰囲気が滲み出ているように感じられる。


「もっともな疑問だ。確かに殺された密偵は若く、それ故に功名心の強いきらいがあった。今回の件も功を焦った独断の末だろう。だが、それでも奴は己の能力を過信するほど愚かではなかった」


「……ほう?それはつまり、人目に付かぬ場所で決行したにも関わらず、幼子相手に手を時間を稼がれた、と?」


 狷介な男の言葉に、嘲るように笑う銀髪の男。吊り上がった口角から、異様に伸びた犬歯を覗かせる。この態度だけでも彼らが一枚岩ではない事か伺い知れる。


 しかし狷介な男は、やはり表情を動かすことなく──むしろ伝えていないのだからそう思われて当然といった顔で──開示していなかった情報を補足する。


「密偵を殺ったのはシューティングスター。それも、王子と共に行動していた同年の神童によるものだ」


「……………………あ?」


 眼光の男が、ポカンと口を開けて間の抜けた声を漏らす。他の者達を同じような有様だ。銀髪の男でさえそれ程の無様は晒さぬまでも目を見開いて驚愕を露わにしている。


「おそらく本来の狙いはその神童の方だったのだろうな。その後王子は自室にて厳重な警護、神童は外部に情報を漏らすことなく密やかに所在を移し隠蔽。現在地は目下の所──」


「おい、待て待て待てっ!シューティングスターの神童だぁ?あれも確かまだガキだって話じゃなかったのかよ!?んな奴に…………いや、あのバケモンの家系なら有り得んのか……?」


 周囲の反応を一顧だにせず続ける狷介な男に、眼光の男が思わずと言った様子で口を挟む。しかし、その語調も次第に弱化し遂には半ば納得するという形で沈静化する。


 先述した通り、彼等は数多の生命体の中でも隔絶した能力を有する上位存在であると自負している。しかし、その彼等を持ってしてさえ下等と、取るに足らぬと切り捨て軽視することができぬものがある。

 その一つが、大陸より離れた島国に巣食う人間の形をした化け物ども。身体能力・魔力量共に平均を逸脱し、更には特有の魔眼・多重属性といった特権を()()()()とする、小国バリタインの生ける厳塞要徼。

 神の使徒と名高きシューティングスター一族である。


 その最高傑作と噂される神童ともなれば、潜在能力はもはや未知数と言う他ない。不確定要素相手に己の物差しで可不可を規定するなどそれこそ不可能というものだろう。


 だがその神童(イレギュラー)に関して、一つだけはっきりしている事がある。

 それは、彼等にとって非常に──異世界の勇者や宿敵たるアステラの神聖騎士と同等かそれ以上に──厄介な相手が現れた、という事だ。狷介な男の見せた渋面もこの事実に対してだったのだと理解できる。


「──現在地は目下の所捜索中。私からの報告は以上だ」


 そう結ぶが、次を促すことはない。皆、思い思いの思索に耽り沈黙していたからだ。


 否、皆ではなかった。


「キャハハ、キャハハハハハハハハハハハハッ!!」


 場に漂っていた暗い静けさを粉砕する、童女のような甲高い笑い声が周囲に木霊した。


 一同、ハッと面を上げ哄笑の主を見やる。


「キャハハハハ!ねぇねぇ、それってさぁ、その子ってさぁ、もしかしてさぁ?キラキラした金髪で、キレイな紫眼で、人形みたいな顔した子じゃなかった?絶対そうだよね、その子しかありえないよね!!」


 声音だけでなく、その口調すらもどこか幼く感じられるその者は、その姿形は童女と呼べるものですらなかった。

 テーブルに置かれたミニチュアのような椅子に腰を下ろす、全長三十cmも超えない文字通りの少女だ。そして、その背には硝子のような透明感と光沢を放つ二対の翅が生えている。

 それは日本人が見れば、妖精と形容するものだった。


「…………どういうことだ、妖精女王」


 狷介な男が表情を険しくし、低く唸るように問うのは当然だ。彼はシューティングスターの神童について、詳細な情報は話していない。にも関わらずそれをはっきりと言い当てられるのは、事前にその人物を知っていたという事になる。外部の情報収集及びその統括を一手に担う自分に悟られることなく。

 自然、周囲の目も一点に集中する。

 それに対し、妖精女王と呼ばれた少女は、


「キャハ、やっぱりそうなんだぁ!土地のせいなのかな?あの島は霊脈が集中してるからなー、ちっちゃい分魔力濃度も高いんだよねー。いやー、それにしてもシューティングスターの子かぁ、神眼持ってる精霊の愛し子とか反則じゃないかなー?」


 自分に突き刺さる視線など気にもとめず、自分一人が理解し楽しんでいるといった独りよがりな笑みと呟きを零している。


「うーん、今度直接会いに行ってみようかな。素養次第じゃうちの王様クラスに…………あ、ごめんね?続けていいよー」


 情報を公開する気はない。そういった意志を受け取り、狷介な男は深く溜め息を吐く。心なしか眼光の男から同情的な視線を向けられているようだ。


「…………承知した、以降は戯言と見なし聞き流そう。では、次に吸血種代表、報告をお願いする」


 協調性のない者は捨て置き、停滞している報告会を進行させようと銀髪の男に水を向ける。


「私の方は特に何事もない、この場で話すような事は…………いや、娘の事を報告しておこうか。末の子なのだがこれがまた──」


「ああ、そういえば貴方の所にも件の神童と同じ歳の子がいるんでしたね。聞きましたよ?なんでも大変優秀でいらっしゃるとか」


 銀髪の男が勿体ぶって話そうとすると、横に座っていた多腕の男が穏やかな口調でそれを遮った。銀髪の男の口端がピクリと動くが、慇懃な上に内容が内容だけに怒ることも出来ず、その苛立ちを呑み込む事にする。多腕の男もその機微に気付いた様子はない。


「……ああ、耳が早いのだね。その通りだよ。実に才気に溢れた子でね、親の贔屓目を抜きにしても彼女こそ次代の王の器なのではないかと大いに期待を寄せている」


「なんと、それは喜ばしい事ですね。僕としても強い人が王座に着いてくれるのが望ましい。先代から数十年ばかり相応しい人が現れていませんからね、今度は長生きしてほしいものです…………」


 三対の手を祈るように組み、ふと上を見上げる。狷介な男も、眼光の男も、銀髪の男も、更には今まで一切言葉を発していない複眼の女、巨軀の男なども同様に顔を上げる。身長の低い妖精女王は巨軀の男の頭に乗って見た。


 そこには、例の禍々しい球体がある。彼らはそれを畏敬、羨望、希望、野心、闘志、陶酔、好喜、それぞれの感情を込めて見つめる。


 あれこそは、彼等の至宝。彼等の戴く王の象徴。神を穢し、国を滅ぼし、人を弄ぶ災厄の根源。


 一早く目線を切ったのは狷介な男だ。


「……再開しよう。多肢種代表、次を頼む」


「分かりました、では僕からは新しく作製に着手した回復薬の────」


 それ以降、会議はつつがなく進行する。誰一人として場を乱すものはいない。

 この場に集う者達は、その思いはどうあれ皆同じ目的の為に手を組んでいるのだから。




 何処か。

 人類の手の届かぬ何処か。


 それは誤りではない。故に訂正は必要ない。

 此処は、真実()()の拓いた地ではないのだら。


 彼等は、人ならざる者。

 世界から、人類から()()()()()との烙印を押された者達。


 地上に神が在りし時、彼方より現れた邪神が創造した人類の不倶戴天の神敵。


 その名は────

一切喋らない人がががが

そこを無理に台詞と描写入れようとすると文字数が過去最高になるのです。

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