エピローグ
俺達の世界に神様が居たならそいつは本当に酷いやつだったんだろうな。何の罪も無い少年少女を突如として異世界に引き込む魔法が発動したのをただ眺めていたんだから。
俺達はこの世界に必要とされて呼ばれた。世界を救ってくれと。世界を救うには【邪神】を倒す必要があって、それは異なる世界の人間にしか出来ない事で、そこで俺達が選ばれた。救世を願われ、それを成すだけの力があり、帰還と言う名の遂行する目的もあった。
でも俺達の自由意志とは関係無く攫われたのには変わりは無いんだ。
俺達は聖人じゃない。くだらない事で怒るし仲たがいもする唯の人だ。当然召喚してきた人達を内心恨んでいる奴もいるし、戦いに恐怖を覚える奴だっている。いっそ狂えたら気が楽なのかも知れないが弄られた死生観がそれを受け入れてしまう。
それでも俺達は生きて行かなきゃならない。帰ると決めたんだから。
「なに難しい顔してんだお前」
「ん? ちょっとこの世の真理について考えてた」
「万物の大元らしい源素とか言う超物質操れるお前が言うとシャレにならねえな」
「何だったら一回身体の半分源素にしたしな」
「あれ二度とやるなよ」
「善処します」
「おーい! 出発の準備終わったよ~」
「わかった。今行く。んじゃ行くかクロ」
「そうだな」
馬車の前には俺とクロ以外の四人が揃っていた。
「遅い。さっさと行くわよ」
「なにちんたらしてんだよ」
「次はエルフの国だって」
「楽しみだね~」
山本、ミヤ、松屋、谷内と順に声を上げる。みんなあの戦いで色々変わったらしいが詳しくは聞いていない。どうせここからまた始まる長い旅の中で幾らでも聞く時間はあるんだ、のんびり行こう。
「そんじゃみんな準備は揃ってんな。行くぞ!」
「「「「「おー!」」」」」
俺達の旅は続く。フラグかも知れないけど、誰一人欠ける事無くこの旅を終えて帰りたい。圧倒的な死を前にして妙に達観した気になってるだけかもしれないけどそう思ってしまったんだ。
「目指すはエルフの国ユグドラ! そこに潜む【邪神】の代行分体をぶっ殺して【魔王】の戦力を削る事」
なんやかんや俺達はこの世界を楽しんでいる。最後には笑顔で終われる大団円を目指して進むんだ。
──少年少女の旅は続く。果てしなく強大な悪を討ち、目標を遂げる為。運命に翻弄され、唐突に得た力で抗う彼らは滑稽かも知れない。だがそれが何だと言うのだ。どんなに滑稽で嘲笑われようと彼らこの道を往く。きっと光があると信じて。
──願わくば、彼らの旅路に祝福あれ。
戦う生産職・おわり
ここまで本作を読んでいただいた全ての読者様に感謝を。これにて戦う生産職は完結します。
こんな終わり方でいいのか。そう思う方も居るでしょう。ですが、話を完結させたことのない私にとってこれ以上はどうしても用意出来ませんでした。結局最後まで取っ散らかってしまった。チープで面白みの欠ける出来になってしまった。回収ぜずに放置した伏線がゴマンと残った。これも偏に私の技量不足が致すところであります。書き始めてからはや三年以上、多くの見聞を経てブレにブレた私の作風でありますが、少しでも楽しんで頂けたならば幸いです。
改めて、ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。
【P.S.】心機一転新作を書き始めたので良ければご覧になって下さい。ページ下にURLを用意しております。